1960年製作のロマンチックコメディの古典(アカデミー賞で、作品賞、監督賞など五部門で受賞しています)です。
さえない独身サラリーマンが、昇進を期待して、上司たちに自分のアパートを逢い引き用に提供したことによって引き起こされるドタバタを、監督のビリー・ワイルダーが笑えてしかも思わずホロリとさせられる人情喜劇に仕立ててみせます。
現在では考えられないようなセクハラ、パワハラ・シーン満載ですが、この作品の背景には、1950年代から1960年代のアメリカの空前の好景気があります。
ニューヨークには、そのころの日本では考えられないような高層ビル(当時は摩天楼と呼んでいました)が立ち並び、その中にオフィスを構える大会社(この映画では保険会社です)は、各階ごとに勤める人間も階層化されていて、それを繋ぐ何台ものエレベーターにはそれぞれにエレベーター・ガール(この映画のヒロインもその一人です)がいて、上層階にいる管理職(取締役だけではなく部長でもです)には秘書付きの広い個室が与えられています。
象徴的なシーンをいくつか書きます。
ジャック・レモンが演じる独身サラリーマンは、テレビを見ながらTVディナーと呼ばれる調理済みのトレイをレンジ(さすがに電子レンジはまだないのでガスレンジ)で温めて、一人で寂しい夕食を食べています(数十年後(今でも?)の日本でも同じ状況でした)。
クリスマスには、会社で大騒ぎのパーティが開かれています(1988年の「ダイ・ハード」で同様のクリスマス・パーティが開かれていたのは、バブル最盛期の日系企業でした。今なら中国系企業かな?)。
この映画の主役のお調子者のサラリーマンを演じたジャック・レモンは、こうしたコメディの主人公にぴったりの軽薄さとそれでいてどこか憎めない独特の持ち味を持っていて、この作品ではノミネートだけで受賞は逃しましたが、アカデミー賞の主演男優賞と助演男優賞の両方を受賞した最初の俳優です。
相手役のシャーリー・マックレーンは、ショートカットが似合う小柄で可愛い、いかにも日本人が好きになりそうな美人で、同様にこの作品ではノミネートだけでしたが、後にアカデミー賞の主演女優賞を受賞しています。
敵役(シャーリー・マックレーンと不倫している人事担当重役)のフレッド・マクマレイは、子供の頃に見たアメリカのテレビドラマ「パパは何でも知っている」で、理想的な父親を演じていたので、大学生の時に初めてこの映画を見たときにはショックでした。
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