1990年に発表され、翌年の直木賞を受賞した、題名どおりに王道を行く青春小説です。
今ならば、ヤングアダルトの範疇にはいりますが、視野の狭い児童文学界ではほとんど無視されています。
しかし、1992年には、大林宣彦監督によって、ほぼ原作どおり忠実に実写映画化(その記事を参照してください)されたので、そういった意味では実写化において安易な改変を許している既存の児童文学作品と比べて幸せな作品とも言えます。
1965年に香川県立観音寺第一高等学校に入学した四人の高校生が、とことんロックにのめり込んだ三年間を、その周辺の人々も含めて、ディテイルにこだわって描いています。
ロックファンを除くと、こんな細かな部分はいらないのじゃないかと思われるかと思われるシーンもたくさんあるのですが、実はこれでも「文藝賞」に応募するために、泣く泣く四百字詰め原稿用紙四百枚以内に削った後なので、1995年に出版された「私家版青春デンデケデケ」はその二倍の783枚あります。
さすがに、そちらはマニアックすぎるので、クラシック・ロックや「青春デンデケデケ」のファンにしか薦められません。
演奏や練習以外に、バイト(楽器を買うため)や女の子のことも書かれていますが、なにしろ1960年代の地方都市が舞台なので、純朴そのものです。
しかし、表面上は大きく変化したものの、その本質は今の高校生たちと変わりません。
ファッションやコミュニケーション方法などが大きく変化しても、学校、友人関係、部活、バイト、進学問題、異性関係などが、生活のほとんどを占めています。
ただひとつ大きく違うのは、洋楽(特にロック)がもっと生活の大きな部分を占めていたことでしょう。
作者は私より五学年上なので、メインのバンド(私が一番好きだったのは、レッドツエッペリン、クリーム、ドアーズ、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、エマーソン・レイク・アンド・パーマー、レーナード・スキナードなどでした)は違いますが、それでもビートルズやローリングストーンズは共通しています。
青春デンデケデケデケ (河出文庫―BUNGEI Collection) | |
芦原 すなお | |
河出書房新社 |