2003年のドイツ映画です。
1933年に書かれたエーリッヒ・ケストナーの児童文学の古典の映画化です。
現代に合わせるための変更はなされていますが、驚くほど原作に忠実に作られています。
子どものころからのケストナー・ファンである私にとっては、驚きとともに深い満足感を味合わせてくれました。
重要な場面はほとんど原作通りに描かれていて、感動で涙があふれてくるのをとめられませんでした。
原作との主な変更点は以下の通りです。
主役をマルチン・ターラーではなく、ヨーニー(ヨナタン)・トロッツにしています。
ヨーニーは詩人ではなく、作曲家にしています(代わりにマルチンを詩人にしています)。
禁煙先生との交流の理由として、ヨーニーが拾った子犬を登場させています。
ゼバスチアンを、クロイツカム先生の息子のルディと合体させています。
クロイツカム先生を、校長にしています。
敵対しているチームを、実業学校から同じ学校の帰宅生に変更しています。
敵対チームに焼かれてしまったのを、成績表から楽譜に変更しています。
主人公たち寄宿生を、合唱団のメンバーにしています。
敵対チームのリーダーのエーガーラントを女の子にして、ヨーニーの相手役にしています。
マルチンの家庭の問題を、父親の失業から両親の離婚に変更しています。
かつて禁煙先生が姿を消した理由を、西ドイツ側への逃亡にしています(この作品の舞台は旧東ドイツになっています)。
彼らが演じる「飛ぶ教室」の舞台を、劇でなくラップにしています。
逆に、現代を舞台にしたのでは難しいと思われるシーンが映画化されていて驚いたのは以下の通りです。
マッツ(マチアス)・ゼルプマンとヴァヴェルカとの決闘シーン。
両軍の雪合戦。
クロイツカムが、敵対チームの捕虜になるシーン。
ウリーが校舎から飛び降りるシーン(ただし、持っていたのはこうもり傘ではなく、大きな風船に変更されています)。
教室で、ウリーがかごに入れられて吊されるシーン。
禁煙先生が暮らす禁煙車。
最上級生のテオたちの社交ダンスシーン。
全体として、ケストナーの精神である「つねに子どもたちの立場に立つ」ことが、この映画でも非常に良く受け継がれています。
おそらく、ドイツでは、今でもケストナーや彼の作品が広く愛されているのでしょう。
それを考えると、異国に住むケストナー・ファンとしては、とてもうれしくなります。