1986年公開のイタリア映画です。
往年のアメリカのダンス映画の大スター、ジンジャー・ロジャースとフレッド・アステアのものまね芸人として、イタリアのショー・ビジネスでかつて活躍したジンジャー(本名はアメリア)とフレッド(本名はピッポ)が、30年ぶりに再会する話です。
テレビのクリスマス特番の見世物的番組に、「あの人は今」的な感じで出演を依頼されたのです。
盛りをとうに過ぎた男女の悲哀を、こちらも往年の大スターであるジュリエッタ・マシーナ(「道」のジェルミソーナです)とマルチェロ・マストロヤンニが、鮮やかに演じています。
こうしたかつての大スターたちが、平然と老醜をさらけだして演じる姿勢は、日本ではあまりないかもしれません。
特に、マストロヤンニは、さらに老けメイクを駆使して老醜を強調して、かつての二枚目スターのイメージをかなぐり捨てて見せているのには、感心させられます。
この映画は、ある意味、監督のフェデリコ・フェリーニと、彼の作品の秘蔵っ子たち(ジュリエッタ・マシーナ(フェリーニの妻)は「道」「カビリアの夜」「魂のジュリエッタ」など、マストロヤンニは「81/2」「甘い生活」「女の都」など」)とによる、同窓会的な趣もあります。
ただ、それだけでなく、醜悪な巨大テレビ局の実態を、痛烈に批判してみせているのは、さすがフェリーニです。
この作品が作られた時には、フェリーニが66才、マシーナが65才、マストロヤンニが62才でした。
今回、彼らと同年輩になって見直したので、公開時にはそれほど感じなかった人生の哀歓を、自分自身の実感を持ってまざまざと味わうことになりました。