「愛の学校」という副題でも知られている、1886年に書かれた児童文学の古典です。
私は、子どものころに講談社版少年少女世界文学全集に入っていた抄訳を読んだだけで、全訳は今回初めて読みました。
この作品は、イタリアの小学四年生の一年間の日記の形態をとっていて、そこに両親や姉のコメントを付け加えたり、担任の先生がしてくれる毎月のお話としてイタリア各地の英雄的な行為をした少年たちを紹介する短編(全部で9編あって一番有名なものはあのマルコの「母を訪ねて三千里」です)が挿入されていて、単調になるのを防いでいます。
あとがきで訳者も述べているのですが、かなり軍国主義的だったり、過度に愛国的だったり、教訓的すぎる部分もあって、そういった個所を削除した抄訳の方が60年前の私にとっても読みやすかったと思います。
なにしろ130年以上前に書かれた作品で、この訳者による初訳も100年以上前(改訂版も私が生まれた翌年の1955年です)なので、今の基準に照らすと、差別的だったり、子どもへの虐待(少年労働や少年兵士など)があったりして、現代には適していない描写や表現もありますし、今の子どもたちに理解してもらうのは難しいかもしれませんが、ここで描かれた死や別れなどは、今でも普遍的な価値を持っていると思われます。
現代の日本の子どもたちに手渡すのには、抄訳や翻案ということも考えられますが、適切なまえがきとあとがきと詳しい注釈をつけて、原作のまま紹介する方が望ましいでしょう。
作中の少年たちが、まだ近代的不幸(戦争、貧困、飢餓、病気など)が克服されていない社会でどのように生きてきたかを知ることは、現代の子どもたちにとっても意味のあることだと思います。