現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

児童文学におけるA Boy Meets A Girl

2016-08-15 09:45:20 | 考察
 児童文学において、男の子と女の子の恋愛感情(初恋の場合が多い)は、重要なモチーフです。
 特に、女性向け(大人も含めて)のエンターテインメントが主流になっている現在の児童文学では、非常に多くの作品が書かれています。
 ところが、ほとんどの作品が男の子と女の子が出会うまで、あるいは出会う部分はていねいに書かれているのですが、その後の展開が十分でなく、尻すぼみに終わることが多いようです。
 物語(特に短編)構造の基本である起承転結のうち起の部分のみ、せいぜい起承までしか十分に書かれていないのです。
 ここでは、基本に立ち返って、起承転結のはっきりした物語作りをするべきでしょう。

フランス恋愛小説論 (岩波新書)
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岩波書店
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児童文学における兄弟姉妹

2016-08-14 16:10:41 | 考察
 児童文学において、赤ちゃんが産まれる前後の上の子の反応を描くのは、アンドレ・リシュタンベルジェの「トロットの妹」以来の定番です。
 赤ちゃんに嫉妬したり、逆に急にいいおにいちゃん(おねえちゃん)になったり、妊娠したり出産したりした母親やたよりない父親に対して急に小さなママになったりと、もうすでにさまざまなパターンが描かれてしまっています。
 これからこのことをモチーフに作品を描く場合は、主人公あるいはその周辺の人々についてどのようなドラマを作り上げるかが肝心です。

世界児童文学ノート (てらいんくの評論)
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てらいんく
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吉田修一「路(ルウ)」

2016-08-13 09:38:20 | 参考文献
 台湾での高速鉄道への新幹線輸出をめぐる人々を、2000年の受注から2007年の営業運転までの7年間にわたって描いた一種の大河小説です。
 しかし、台湾での新幹線をめぐるビジネス小説を期待して読むと、完全な肩透かしをくいます。
 ビジネスや仕事の様子は、非常に通り一遍な書き方で、まったく面白くありません。
 仕事の大変さやそのストレスの描き方は非常に浅く、作者はおそらく会社生活を体験していないだろうなと思われますし、取材も不十分です。
 描かれているのは、高速鉄道を受注した商社で働く日本人女性と運命的なすれ違いをした台湾人男性建築家、同じ商社で働く仕事にも家庭にも疲れた日本人男性と癒し系の台湾人ホステス、台湾人の幼馴染のカップル、戦前の台湾生まれの老日本人技術者たちの七年の月日です。
 まあ、品のいい恋愛小説の部分が大半を占めていると言っていいでしょう。
 しかし、一つ一つのエピソードに新鮮さがなく、新幹線ビジネスとの絡みも十分でなく、いたずらに長いだけで取り留めのない作品でした。
 児童文学の作品では、親が会社で働く様子を描いた作品が驚くほど少なく(おそらく作者たちに経験がないからだと思います)、何かの参考になればと期待して読んだのですが裏切られました。
 ただ、作中で描かれている台湾は非常に魅力的で、また行きたくなりました。

路(ルウ)
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文藝春秋
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蜂飼耳「青いマフラー」のろのろひつじとせかせかひつじ所収

2016-08-11 09:27:36 | 作品論
 のろのろひつじは、自分の毛で編んだ青いマフラーをなくしてしまいました。 
 のろのろひつじは編むのが遅いので、寒いころまでに編むことができません。
 編むのが速いせかせかひつじは、自分の毛でマフラーを編んでのろのろひつじにプレゼントしてあげます。
 ようやく二匹の性格の違いを活かし、友情も描けた短編になりました。
 なんでまだ必要のない時期にマフラーをなくしたのかなど、この作品にも突っ込みどころは満載ですが、まあ目をつぶりましょう。

のろのろひつじとせかせかひつじ (おはなしルネッサンス)
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理論社

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早見和真「二子玉ニューワールド」東京ドーン所収

2016-08-04 18:14:55 | 参考文献
 七年間同棲した男と別れる27歳の女性の話です。
 エピソードを重ねるのではなく完全な説明調で、描写や文章のレベルもひどく低いです。
 会社生活というと接待や飲み会しか出てこないのは、作者が仕事についてまるで知識や経験がないからでしょう。
 新しい風俗の裏に、作者のジェンダーや仕事、家族などの古い意識が見え隠れします。
 スト―リー展開もまったくのご都合主義で、無理やりほかの作品とつなげて連作短編であるかのように装っているのも見え透いています。
 はっきり言って、児童文学の同人誌においてもかなり低いレベルのできで、これが商業誌に載るのですから今の出版界はレベルはおそろしく低いのでしょう。

東京ドーン
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講談社
  
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三田完「パタパタ小父さん」黄金街所収

2016-08-01 08:52:37 | 参考文献
 テレビ局や歌謡界のいわゆる内幕物って感じの作品です。
 当時の風俗や時代考証がいい加減で、いかにも書き飛ばしたって感じです。
 こんなのが良く本になるなあと、ある意味感心してしまいました。
 暇つぶしに肩のこらないものを読みたいという読者層(おそらく高齢者)が、今でもいるのでしょう。
 読書に何を求めるのかが、現在はたんなる娯楽に偏ってきているようです。
 
黄金街
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講談社
 
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