現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

パリのどこかで、あなたと

2023-06-22 11:14:28 | 映画

 2019年公開のフランス映画です。

 主人公の男女が、お互いに知り合うのがラストシーンという、風変わりな恋愛映画です。

 ただし、二人は、隣り合わせに立つマンションの同じ階のはじの部屋なので、壁二つはさんで隣同士に住んでいます。

 そのため、二人はしょっちゅうすれ違います。

 通勤の時もそうですし、近くにあるエスニック食料品店で時々居合わせたりもします。

 そうした若い男女が、それぞれに孤独を抱いて暮らしている様子が克明に描かれます。

 男性は、勤め先の発送センターが自動化されて、従業員が解雇されたり、遠くへ配転されたりした中で、一人だけ上司の配慮で同じ場所にあるコールセンターに配属されますが、それに対して罪の意識を感じて、うつ病気味になり、不眠症やパニック障害を起こします。

 女性は、職場でスポンサーに対する発表会を任されたことにプレッシャーに感じて、やはりうつ病気味になり、過眠症や情緒不安定になります。

 男性は、女性たちとはうまく付き合えません。

 女性は、マッチングアプリで知り合った男性たちと次々に付き合いますが、まったく満たされません。

 二人は、それぞれ心理療法士などのカウンセリングを受けて、真の原因を突き止めようとします。

 結局、男性は10才のころに7才の妹を癌で亡くし、それが家族の中でタブーになっていることが原因のようで、両親とともに妹の墓参りをし、それとともに職場をやめたことで寛解します。

 女性は、小さい頃に両親が離婚したのですが、アメリカへ去った父親は許せるのに、その後彼女が成人してから再婚した母親が許せなかったことが原因のようで、自分から母親に連絡したことと、職場の発表がうまくいったことにより、寛解します。

 ラストで、エスニック食料品店の店主に紹介された、コンパという中米のハイチのダンスの教室で、二人は出会います。

 この作品のミソは、観客がそれぞれ心配していた男女がともに寛解してから出会うので、明るい未来が想像でき、見終わった時の後味がすごく良いことでしょう。

 ただ、カウンセリングで二人の病状がこんなにうまく寛解したことは、こうしたことにあまりなじみのない日本人には違和感があります。

 

 

 

 

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ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから 

2023-06-22 11:12:15 | 映画

 2021年公開のフランス映画です。

 偶然の出会いから男女が恋に落ちて結婚しますが、夫が作家として成功するあたりからすれ違いが始まります。

 完全に行き詰った10年後のある朝、目を覚ました夫は違う世界に入り込んでいました。

 そこでは、夫は作家ではなく小学校の国語の教師になっていて、妻とも出会っていません。

 妻のほうはピアニストとして成功していて、恋人もいます。

 夫は何とか元の世界に戻るとともに、その世界でも妻を獲得しようとします。

 けっきょく、元の世界に戻るのはあきらめたようなのですが、なんとか妻は獲得できたようです。

 全編に、フランス映画らしいおしゃれな展開が続きます。

 うまくいきすぎな感もしますが、主演のフランソワ・シヴィルの素朴な魅力(「パリのどこかで、あなたと」(その記事を参照してください)でも同様でした)もあって、最後まで見続けられます。

 

 

 

 

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ベガスの恋に勝つルール

2023-06-22 11:10:33 | 映画

 2008年公開のアメリカ映画です。

 ラスベガスで偶然に出会って、泥酔した勢いで結婚した男女が真実の愛に目覚めるロマンチック・コメディです。

 結婚した翌朝にはもう別れようとしていた二人ですが、偶然賭けたスロットマシーンが300万ドルの大当りで、欲が絡んで六ヶ月間限定の結婚生活をするはめになります。

 その期間もすったもんだがあるのですが、最後はもう一度結婚し直すことでハッピーエンドの結末を迎えます。

 かなり下品で御都合主義なストーリーなのですが、テンポが良くてけっこう笑えます。

 そのころはまだ人気があったキャメロン・ディアスを主演にしたB級娯楽映画です。

 

 

 

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ベイビー・ブローカー

2023-06-22 10:09:20 | 映画

 2022年公開の韓国映画です。

 是枝裕和監督が単身韓国に渡って、現地の俳優やスタッフとともに作った映画で話題を集めました。

 教会のベイビー・ボックスに預けられた赤ん坊を横流ししてお金を得ているブローカー二人と、赤ん坊、その赤ん坊を捨てた若い母親、途中立ち寄った養護施設から車に潜り込んだ少年の、五人による赤ん坊の売れ先を探す旅(新生児売買の現行犯で逮捕しようとしている二人の女性警察官が追跡しています)を描いて、ロードムービーの趣があります。

 主犯格の男は、離婚して元妻や娘とは離れて暮らして、ギャンブルで多額の借金があります。

 従犯格の若い男は、自身も捨て子で養護施設育ちで、未だに母親は迎えに来るはずだったと信じています。

 母親は、赤ん坊の父親であるやくざを殺して逃げています(そのために、赤ん坊をベイビー・ボックスに預けたのです)。

 旅をしている間に、彼らの間に疑似家族のような不思議な連帯感(同じ監督の「万引き家族」(その記事を参照してください)に似ています)が生まれます。

 全体的には、話がだらだらと続き緊張感に欠け、ラストで説明的に物語を締めくくってしまうこの監督の欠点がこの映画にも出ています。

 ただし、この映画でカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を得たソン・ガンホの演技は、相変わらず味があります。

 

 

 

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万引き家族

2023-06-22 09:38:18 | 映画

 2018年公開の是枝裕和監督の映画で、カンヌ映画祭で最優秀作品賞にあたるパルム・ドールを受賞して、一躍日本でも注目を集めました。
 祖母、父親、母親、母の妹、兄、妹(途中から加わる)の六人家族が、実は、まったく血のつながらない疑似家族であることと、子どもも含めて万引きなどの犯罪もしながら暮らしていたというショッキングな設定で、家族とは、親子とは、兄弟とは何か、という根源的な問いかけをしています。
 安藤サクラ、リリー・フランキー、樹木希林などといった当代きっての芸達者が揃っているので、このありえないような設定の家族にリアリティをもたせることに成功しています。
 また、それぞれが、本来の家族において、以下のような問題を抱えていたことによって、制度上の家族と、この疑似家族のどちらが、本来の家族としての機能を果たしているかという問題提起にも成功しています。
 祖母は、今は亡き夫と離婚していて(夫は、これもまたすでに亡くなっている後妻とは幸せな家庭を築いたようです)、僅かな年金とパチンコ屋での置き引きや義理の息子夫婦からゆすりまがいの行為で得るお金で、孤独に暮らしていたようです。
 父親は、母親の元の夫を痴情のもつれから殺害した前科(正当防衛が認められて執行猶予がついたようです)があります。
 母親は、前述のように父親と不倫して逃げてきたようです。
 母の妹は、実は祖母の義理の孫(夫と後妻の間に生まれた息子(どうやら彼の妊娠が離婚の理由のようで、祖母に対して負い目を感じているようです)の娘)で、実父母とはうまくいかずに風俗で働いています。
 兄は、父親と母親がパチンコの駐車場で車上荒らしをしていた時に、車内に放置されていたのを拾われました。
 妹は、実の両親からDVとネグレクトにあっていたのを、父親に拾われて、母親がそのまま一緒に暮らすことを決めました。
 以上のように、非常にたくさんの問題を詰め込み過ぎたために、最後に警察などによって実情が明らかにされるという、ある意味禁じ手を使って説明してしまっているので、ネグレクトにフォーカスして社会を糾弾した同じ監督の「だれも知らない」(その記事を参照してください)に較べると、作品の完成度や社会への告発の力はだいぶ劣っているように思われます。
 児童文学的視点で見ても、前作は「子どもたちだけで助け合って生きていく」という、絶望の中にもある方向性というか光のようなものがラストに見えたのに、この作品では、兄の方は父親や母親と決別して施設で生きていくという方向性は見えたものの、妹の方はネグレクトの中に置き去りにされたままで、暗澹たる気持ちで映画を見終わりました。


 

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