2003年公開のドイツ映画です。
1989年のベルリンの壁崩壊の前後の東ドイツの混乱を、ある家族の姿を通してコメディ・タッチで描いています。
主人公の母親は、心臓発作によって八か月の間意識を失い、ベルリンの壁崩壊や社会主義国家としての東ドイツの終焉を知らずに過ごしてしまいます。
生粋の社会主義者の母親がそのことを知って、ショックを受けてまた発作を起こすことを恐れた主人公は、退院して部屋で過ごす母親に社会主義体制はそのままだと伝えます。
そのために、周囲の家族や友人たちに嘘の演技を頼んだり、手に入りにくくなった東ドイツ食品や製品(安価で性能の良い西側の食品や製品にあっさり駆逐されてしまっています)を手に入れたり、映像マニアの友人に嘘のニュースのビデオを作らせてテレビで流したりします。
最後は、東西ドイツが平和に合併したことを嘘のニュースで伝えて、東西ドイツ統一前後に母が亡くなるまで、嘘の芝居をやり通します。
その間に、西ドイツマルクと東ドイツマルクの交換騒ぎや、ドイツ(実際には西ドイツ)のワールドカップサッカー優勝や、かつて西ドイツに亡命して生き別れになった父親と母親との再会や、ソ連から来た看護師見習の女性と主人公とのロマンスなどを散りばめて、一級のエンターテインメントに仕立てています。
母国ドイツでは、大ヒット(それまでの興行記録を塗り替えました)したり、ドイツ内外の映画賞を受賞したりしました。
日本人の目で眺めると、かなり設定に無理があって、こんなにうまくいくとは思えないのですが、ドイツ国民(特に旧東ドイツの人々)にとっては共感できるところがたくさんあるのでしょう。