あ、今「おお!」って思いました?
御主、そうとう出来ますね?
呑み助ともあろうもの、これ見てどこだか判らないのはモグリです。
不忍池には、見事な蓮が覆いつくしていました。
池を観ながら、おでんで一杯といきたいところをグッと堪え、長~い後ろ髪をグイグイ引っぱられながらも、男は一度決めたら、初志を貫かなければなりません。
ということで、湯島の“シンスケ”にやってまいりました。
え、島田?
いえいえ、ぼくは太田と申す者です。
節目がちに、静かに着席。(こういう店でははしゃいではいけません)
まずは、ビール。
不忍池で蓮を見てきたばかりなので、この突出しは嬉しい。
静かにビールを注ぐ。
この時にコップを持ってはいけませんよ。置いたまま。トクトクトク…
7対3の泡を作ったら、ここで暫くビールが上がってくるのを待ちます。(この間に肝臓ケア用のウコンを用意して口に入れる)
ビールが上がってきたら、瓶をグラスの縁にそっと附け、泡が盛り上がるまで注ぎます。そこで、イッキに今夜の最上の時を楽しむのです。クククク…(全部、兄和彦先生の受け売り)
でも、ここでプハー!とかブハー!控え目に。
あくまでも上品に。
気分は小津安二郎映画の笠智衆で。
さて、ここでフツーは品書きに目をやるところなのでしょうが、今日のぼくはひと味ちがう。っていうか、そんな目移りしそうなものは見ない。
っていうか、店に入った瞬間にスズキの洗いだとか銀鱈の西京焼きとか、ヨダレのでそうな品書きが目に飛び込んできて、ソワソワしそうになってしまったほど。
でもここでじっくり吟味するようでは男ではない。
もう、気分は森鴎外である。(夏目漱石は酒乱だったので、あえてここでは出しません)
「タコブツとネギヌタを下さい」(もう来る前から決めてました。これも兄の受け売り)
もちろん、お酒もたのみました。
酒は、もちろんコレ。
燗をつけてもらったので、今夜は本醸造にしてみました。
ここで、酒の注ぎ方に注意しましょう。
今度は、兄和彦先生の飲み友だち、弘美ちゃんのパクリで『センセイの鞄』から。
センセイはゆっくりと杯を干し、手酌で杯を満たした。一合徳利を傾けるのではなく、卓上に置いた杯よりもずいぶん高いところに徳利を持ち、傾ける。酒は細かい流れをつくって杯に吸い込まれるように落ちてゆく。一滴もこぼれない。うまいものである。
兄、和彦先生の著作を読んでいると、必ず出てくるタコブツ。
しかも、シンスケでは久里浜のカニを食べているタコを使うので、ヘタな刺身よりも美味いそうです。しかも、理由が判らないのだけど、ストレス発散になるんだそうです。(センセイ、今度理由教えてください)
しか~し!今回はなんと明石のタコ。これって、ラッキーなんですか?
もう、これがあれば、酒が何杯でも飲めるって感じです。
コノワタで、スイッとやれる至福のとき。
幸せを噛み締めてしまいました。
そして、本日の目玉。驚きの逸品。
加賀仁。
ご主人が「東京ではウチでしか出してません」と自信のある一言。
本数が少なく、秋田でも手に入りづらいそうです。
冷をコップに注いでもらうと。
うわ!
古酒のような、輝きのある黄金色。
ぼくはグラスの中に、雀色時の柔らかな光を観て、うっとりと眺めてしまいました。
その黄昏色の酒を、ツツツ…と口に含むと、ウンンンンン美味い!
これを旨口と呼ばずになんと呼ぶ!?
タコブツとネギヌタで一杯。そう決めていたのが……
予定は未定で確定にあらず。という酔っ払い三原則を忠実に守ってしまい。
ニシンの山椒漬をたのんでしまいました。
そしたら、止まらなくなり。
夏野菜の煮物までたのんでしまいました。
こんな美味い、カボチャはかつて食べたことがありません。
創業昭和元年、シンスケ。
やられました。
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あ、あとこんなサイトもあったのね?
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