chuo1976

心のたねを言の葉として

「フレデリック」 レオ・レオニ

2020-04-11 05:29:12 | 文学

「フレデリック」 レオ・レオニ

         谷川俊太郎 訳



まきばのふるいいしがきのなか、のねずみのいえがあった。
おひゃくしょうさんがひっこしてしまったので、
なやはかたむき、サイロはからっぽ。
そのうえ、ふゆはちかい。
ちいさなのねずみたちは、とうもろこしと きのみと こむぎと わらを あつめはじめた。
みんな、ひるも よるも はたらいた。
ただーフレデリックだけはべつ。
「フレデリック、どうして きみは はたらかないの?」
「こうみえたって、はたらいてるよ。さむくて くらい ふゆのひのために、ぼくは おひさまの ひかりを あつめてるんだ」
「こんどは なにしてるんだい、フレデリック?」
「いろを あつめてるのさ。ふゆは はいいろだからね」
「ゆめでもみてるのかい、フレデリック」
みんなは、すこしはらをたててたずねた。
「ちがうよ、ぼくは ことばを あつめてるんだ。ふゆは ながいから、はなしのたねも つきてしまうもの」
ふゆがきて、ゆきが ふりはじめた。
五匹のちいさなのねずみたちは、
いしのあいだの かくれがに こもった。
はじめのうちは、たべものもたくさんあった。
のねずみたちは、ばかな きつねや、
まぬけな ねこの はなしを しあった。
みんな ぬくぬくと たのしかった。
けれど すこしずつ、きのみやくさのみは へっていった。
わらも なくなった。
いしがきのなかは こごえそう。
おしゃべりを するきにも なれない。
そのとき、みんなはおもいだした。
おひさまのひかりや いろや ことばについて
フレデリックがいったこと。
「きみが あつめたものは、いったい どうなったんだい、フレデリック」
「めを つむってごらん」
フレデリックは いった。
「きみたちに おひさまを あげよう」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

札幌国際芸術祭

 札幌市では、文化芸術が市民に親しまれ、心豊かな暮らしを支えるとともに、札幌の歴史・文化、自然環境、IT、デザインなど様々な資源をフルに活かした次代の新たな産業やライフスタイルを創出し、その魅力を世界へ強く発信していくために、「創造都市さっぽろ」の象徴的な事業として、2014年7月~9月に札幌国際芸術祭を開催いたします。 http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/about-siaf