「フレデリック」 レオ・レオニ
谷川俊太郎 訳
まきばのふるいいしがきのなか、のねずみのいえがあった。
おひゃくしょうさんがひっこしてしまったので、
なやはかたむき、サイロはからっぽ。
そのうえ、ふゆはちかい。
ちいさなのねずみたちは、とうもろこしと きのみと こむぎと わらを あつめはじめた。
みんな、ひるも よるも はたらいた。
ただーフレデリックだけはべつ。
「フレデリック、どうして きみは はたらかないの?」
「こうみえたって、はたらいてるよ。さむくて くらい ふゆのひのために、ぼくは おひさまの ひかりを あつめてるんだ」
「こんどは なにしてるんだい、フレデリック?」
「いろを あつめてるのさ。ふゆは はいいろだからね」
「ゆめでもみてるのかい、フレデリック」
みんなは、すこしはらをたててたずねた。
「ちがうよ、ぼくは ことばを あつめてるんだ。ふゆは ながいから、はなしのたねも つきてしまうもの」
ふゆがきて、ゆきが ふりはじめた。
五匹のちいさなのねずみたちは、
いしのあいだの かくれがに こもった。
はじめのうちは、たべものもたくさんあった。
のねずみたちは、ばかな きつねや、
まぬけな ねこの はなしを しあった。
みんな ぬくぬくと たのしかった。
けれど すこしずつ、きのみやくさのみは へっていった。
わらも なくなった。
いしがきのなかは こごえそう。
おしゃべりを するきにも なれない。
そのとき、みんなはおもいだした。
おひさまのひかりや いろや ことばについて
フレデリックがいったこと。
「きみが あつめたものは、いったい どうなったんだい、フレデリック」
「めを つむってごらん」
フレデリックは いった。
「きみたちに おひさまを あげよう」