震災以来初めて、なんの躊躇も無く、図書館で本を借りて読めました。ブラボォーー
○ フェルディナント・フォン・シーラッハ 『犯罪』 (東京創元社)
★「翻訳ミステリー大賞シンジケート」( http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20110628/1309212780 )
2011.06.28「すごいよ!シーラッハさん 『犯罪』をめぐる冒険」より引用
2010年の5月なかば。ドイツ文学翻訳家の酒寄進一先生からこんなメールが送られてきました。
メールを読むと、なにやら気になることが書いてあります。「実際に起こった事件や体験を脚色した11の短篇からなる」「人間の不条理さがドライに淡々と書かれていて」「カニバリズムなど猟奇的な題材もある」などなど。なんだかすごそうな本だなぁ、というのが第一印象だったと思います。
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この紹介記を読んでから、この本を読んでみたいなぁとむずむずしていたんですが、ふふふ、図書館の新刊コーナーに置いてあるじゃないですか!やっほうと思ってすぐに借りて読みました。
面白かったー!なるほど、酒寄さんの仰るとうりでした。これはね、S・キングの作品のように、繰り返し読む小説です。一節の意味や言葉の示すものを味わい、噛み締めながら読む類のお話です。なので、
>だってこの作品、中身のすごさはもとより、ドイツでは45万部を超す大ベストセラーで、32か国で翻訳されることになっていて、映画化も決まっているんですよ!! さらにノーベル賞作家のヘルタ・ミュラーも受賞している権威ある文学賞のクライスト賞をはじめ、三賞を受賞しています。
というのにも、深く納得。(映画化?納められている短編十一話のどれを映画化するんだろう??まさかアレじゃないよね・・)
上記リンク先に、冒頭に登場したこの本を翻訳された酒寄さんが、作者のシーラッハさんにインタビューした際のお話が、リンクされています。実に趣のある文章なので、ぜひご覧になってみてください。
○ 鯨 統一郎 『努力しないで作家になる方法』 (光文社)
タイトルからして、本当はまったくそうじゃないんだというところが、鯨さんらしくて好いです。巻末に、
>この作品は事実を元にして構想しましたが、あくまでもフィクションです。作中に登場する作品、作家に対する評言などはすべて主人公の考えであり、事実と一致するものではありません。
とあるんですが、うん、まあ、そういう事にして読みましたが、こんなに実在作家さんの名前がばんばん出てきたら、ノン・フィクションとしか読めませんよ~(苦笑)
今作は、主人公が作家としてデビューするまでの、苦しくて切なくてたまらないお話です。(もしも小説家になろうとしている人が読むと、辛いかな?それとも励まされるのかな?)石田 衣良さんの『チッチとパパ』も、苦しんで苦しんで作品を書いて成功を望む作家が主人公のお話でしたけれども、創作部分が多かったから「物語」として読みましたし、有川 浩さんの壮絶な創作の物語『ストーリーテラー』とも違って、このお話は、”鯨 統一郎さんらしい、心地よいフィクション”を味わえる一冊です。
我が家の長男も次男も『邪馬台国はどこですか』シリーズが好きで、特に作品の舞台となるバーのカクテルを、ぜったいにいつか飲んでみたい!と常々宣言しているんです(笑)そんな作家さんのノン・フィクションな裏話、好い作品でした。