What A Wonderful World

毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

ジョナサン・サフラン・フォア 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

2012年02月18日 09時48分36秒 | 図書館で借りた本
 TVCMを観て、ちょっと気になっていた映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』。

たまたま豊崎 由美さんのツイッターを見ていて、

>@sunamajiri いえいえ、うざくないです。良い小説です。9・11で父親を亡くした少年の一人称語りを中心に、第二次世界大戦のドレスデン大空襲で失われた愛の物語も絡めた重層的な物語になっています

>@sunamajiri 子供語り(子供の一人称語り)の小説はけっこう多いですよ。今話題の『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』もそうですし

>子供語りの小説は、『エドウィン・マルハウス』くらいの大仕掛けがないと、どうしても読みながら「ずるい」と思ってしまうわたくしがいるのでございました

というやりとりを読んで、そうか原作があったんだと知り、さっそく図書館で借りてきました。

○ ジョナサン・サフラン・フォア 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』 (NHK出版)

P50より引用

 一年たっても、ぼくにはまだものすごく苦労することがあって、どういうわけか、シャワーを浴びることとか、当然だけど、エレベーターに乗ったりすることがなかなかできなかった。ぼくをパニくらせるものもたくさんあった。

夜は最悪だった。いろんなものを発明しはじめて、うわさに聞くビーバーみたいにやめられなくなる。(中略)木をかじりまくってしょっちゅう歯をけずっていないと、のびた歯が顔に食いこんで自分が死ぬことになるからだ。ぼくの脳みそもそんなふうだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

残された者が、苦しみや哀しみにどうやっておりあいをつけていくのか。人それぞれ方法もかかる時間も、違うでしょうけれども、この主人公の男の子が全力で父親の死に向かい合っているのを読んでいると、彼がすぐ隣に居るような気持ちになります。

子ども視点で描かれているぶん、どうにもしようがない気持ちを母親にぶつけたり、関わりあっていく人たちとの会話が、大人の混乱をこどもなりに消化しようとしていたり、ショックな体験をした時は物事が整理整頓に進んでいかないという事実を、よく表現できているように思いました。

400ページを費やして、とうとう彼が隠していた本当の苦しみの元凶を吐き出せた、他人に語れるようにまでなった時は、泣きました。どうか、彼のこの哀しみや苦しみを、時間が癒してくれますように。これはお話しだけど、現実に居るであろう彼と同じ思いを抱えている大勢の子どもや大人の為に、祈らずにはいられません。


 私はもう「9.11」の映像を、「3.11」以前のような気持ちで観る事はないでしょう。同じように、阪神淡路大震災の映像も、平らな気持ちで観る事は出来ません。

震災当日はすぐに停電になったので、TVで地震速報も津波の映像も、私はリアルタイムでは観ていません。あれを遠い場所でリアルタイムでご覧になっていた方たちは、どんなに辛かっただろうと、今思います。家族や友人が災禍に飲まれていく様を、何も出来ずに見ているしかないって、酷いです。ツインタワーが崩れていく様を、私はTVでリアルタイムで観ていたのですが、あの出来事が世界に与えた衝撃は、戦争で人間の歴史を変えてしまうほどのものでした。今回の大震災の映像が、世界に与えた衝撃が、どうか少しでも良い方向へ歴史が変わるものになるよう、願わずにはいられません。


 この小説の構成は、フォントが変わったり、画像が何ページもあったり、一文だけのページがあったりと、いろいろ工夫があります。作者さんが意図する構成なんだろうなぁとは思うんですが、ちょっと読むのにうっとうしかったです(苦笑)翻訳されたものなんで、原文で読むのとはやっぱりだいぶ印象が違うんだろうなぁという想像ができました。

たぶん、映画はこの原作小説の工夫(効果?)が生きて、もっと判りやすくて(伝わりやすくて)好いのかもしれないです。パパ役がなんたって鉄板なトム・ハンクスだから、ずるいよね。


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