What A Wonderful World

毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

冲方 丁 『はなとゆめ』 / F・シーラッハ 『罪悪』

2014年02月21日 15時26分58秒 | 図書館で借りた本
○ 冲方 丁 『はなとゆめ』(角川書店)

 図書館で予約していた本が入りました~と、職員さんからこの本を手渡されて、思わず「薄!」と心の内で思ってしまいました(笑)歴史三部作というからには、『天地明察』や『光圀伝』と同じくらいの厚さなんだろうなァと勝手に思っていたのでした。うん、なんというか他の二作品よりは凄くあっさり書いた、「枕草子」の副読本みたいでした。

以前ここで、このお話が発刊されると知った時に、『はなとゆめ』というタイトルは、もしかして少女マンガ雑誌「花とゆめ」にかけてるのかな~と思ったと書いたんです。女性にとっての永遠の夢とか理想とか綺麗な物好きとか、そういうものすべてをひっくるめているんじゃないか予想してたら、やっぱりそうでした。

『七姫幻想』という大好きなお話があるんですが、その中の一作に登場する清少納言のその後っぽい老婆もそうですし、作家さんもタイトルも失念してしまったんですが、大昔に読んだ清少納言を主人公にした小説も、清少納言の中宮定子が象徴する女性の持つ美徳への強い憧憬というか愛情が、清少納言の創作の源なんだろうと。そういう想いを中心に描いたお話でした。

う~ん、なんだか冲方さんにしてはちから半分?な印象が残っちゃいました。


○ フェルディナント・フォン・シーラッハ 『罪悪』(東京創元社)

 震災以来、登場人物が辛い目に遭う描写に耐えられなくて、ミスタリーになかなか手がだせませんでした。でも、ふと図書館の本棚にこの本があって、前作の『犯罪』も素晴らしかったし、短編集だから読めるかもと思い借りてみたら、読めました。

ノン・フィクションみたいだというと、語弊があるかもしれませんが、人に軽々しく話す事じゃない、地方紙に小さく掲載されるような事件って、案外身の回りに無いですか?同じ地域に住む初老の男性が、スーパーの駐車場に止めてあった車のフロントガラスを何台も割ってまわったとか。近所の家の二階のボヤは、その家の次男が自分で火をつけたとか。そういう話を茶のみ話に聞かされた気分になりました。

作者さんの筆致が「静謐」なんですわ。しんしんと寒くなるような静けさ。余分なモノを削りとった、そんな言葉が伝える人間の心の深い暗い底の部分が、余韻となって何度も読み返させる、そういうお話ばかりでした。

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