また産経新聞で恐縮ですけれども、「国益」とやらを見せてもらいたかったのに、それを明らかにすることは決してない、ということですか。まあ、取り立てていえるべき「国益」なんてものがあれば、疾っくの昔に出しているでしょうがね(笑)。
【主張】新テロ法成立 国際社会と共同歩調を 国益の実現に必要な再可決 - MSN産経ニュース
(一部引用)
≪傷ついた日本の信用≫
政府は近く、海自派遣の実施計画を閣議決定、月内に海自補給艦などを出航させ、2月中旬にもインド洋での給油支援を再開させる方針だ。昨年11月2日にテロ対策特別措置法が失効し、海自艦が撤収してから、再開までに約3カ月要する。この間、日本の国際的信用が大きく傷つき、国益が失われたことを忘れてはなるまい。
石破茂防衛相が「(給油活動中断で)パキスタン艦船は活動時間が4割減った。監視活動が密から疎になっている」と語ったように、海自の撤収は多国籍海軍の海上パトロールなどにダメージを与えた。喜んだのは、麻薬を積んで武器を買って戻るテロリストたちなのである。
ペルシャ湾からインド洋にいたる多国籍海軍が守る海域は、中東に原油の9割を依存する日本にとって海上交通路(シーレーン)と重なる。
ところが反テロ国際行動から脱落したことで、海自は海上テロなどの情報を共有できなくなってしまった。日本のタンカーは危うさの中に放置されていたといえる。多国籍海軍への給油支援は日本の死活問題でもある。
国際社会は給油再開を歓迎しているが、それにとどまってはならない。日本は反テロ国際共同行動を担う能力と責務を担っている。日本が信頼できる国かどうかが試されてもいよう。
=====
まあ言いたいことは判らないでもない。が、理由をこじつけただけであって、「国益」とやらが不明瞭なことに変わりはない。唯一しくじったと見えたのは、「日本の信用」に傷がついたことくらいで、これは安倍総理の口約束が遠因であったと言えなくもない。けれど、3ヶ月のお休み期間とか部隊の交代とか、各国の部隊運用にはそれぞれ事情があるのであって、それを日本の補給艦1隻が参加できなくなったことくらいで部隊運用や作戦行動に重大な支障が出るのであれば、相当間抜けな指揮官とか部隊である、ということだ。
裏を返せば、日本の行っている活動に支えられていた作戦行動は、全体にとっての死活問題でもなければ、重要作戦でも何でもない、ということ。普通に考えてごらんなさいな。あなたが指揮官だったら、どうなのか?
本当に、海上阻止活動が作戦全体に与える影響が甚大であり、その成否が全部隊とか陸上部隊にとって極めて重要なものであるとするなら、どういった対策を講じると思うか?参加している主要な海上部隊の戦力を投入して、徹底的にやるだろう。万が一、艦艇の作戦行動に支障が出そうなら、参加国の中で補給艦を出せそうな国を遮二無二探し出してきて、日本の抜けた穴を埋める必要があるだろう。戦争時のことを考えてごらんよ。重要な輸送艦とか補給艦が敵潜水艦に沈められて欠損を生じたらどうするか?どこからか絶対に手当てして、その補給路を確保するだろう。大切な補給なのであれば、そこに穴を開けたままにできるはずがなかろう。重要度が高ければ高いほど、欠損は許されないからね。かならずそこに何らかの対策を手当てしなければならない。つまり、日本の補給艦が担っていた役割を、必ず代償しなければならないはずだ。
しかし、実態はどうなのか?日本の補給艦がいなくなって、パキスタンの艦艇のパトロール効率が落ちたのだそうだ。ということは、何らかの手当てがなされた形跡はなく、つまりは全体から見た作戦の重要度が極めて低い部類と考えられる、ということだ。対テロ作戦の効率から見ると、海上阻止活動は最重要課題ではなく、現実の成果としてもかなり低いものとなっている、と推測される。抜けた穴が甚大な影響を持つほど大きいというのに、それをむざむざと放置しておく軍事行動など、ありゃせんよ。あるとすれば、余程頭の悪い指揮官たちだけで作戦を考えている場合くらいではないか(笑)。絶対に守らねばならない防衛ラインで、味方部隊がやられて敵に突破されそうだ、という時に、そこに何らかの手当て(補充)をせず、穴を開けたまま「はい、どうぞ」と敵を突破させるような作戦なんてあると思いますかね?そんなことは現実にはないんだって。あるのは、本物のバカの時だけだって(爆)。なので、日本が給油を止めると大変なことになってしまう、とか言うのは、ウソだろうな。
「日本がアブラをタダでくれると思って当てにしてたのに、いなくなっちゃうと不便になるね」くらいには、皆思っていると思うよ。そりゃ、有り難いに決まってますよ。船で動き回っても、日本が補給してくれるから、遠くまで行ってこれるもんね。そりゃ当然だわ。けど、どこの国からも新たな補給艦が投入されていないということは、「自分が出すのはイヤ」「出したくても出せない」「出す余裕がない」「出せるような補給艦じゃない(笑、技術的なこととか)」みたいな理由があるのかもしれないが、とりあえず「無くても仕方ないよね」と我慢する程度のものでしかないのだから。結論的には、「いなくてもできる」ということであり、「いたら便利」というだけの話だろう。「飛べなくなったF-15」じゃないけど、「1機も飛んでなくても防衛できてる」、「200機あったらいいよね(より安心)」、みたいなものである。「ない」より、「あった方がいい」というのは大体何でもそうだよ(笑)。
それから、シーレーンの話を持ち出しているが、随分と萎びたネタを持ち出してきたな。書いてる人はきっと年配の人だろうと思うのだけれども、こんな話は冷戦時代に随分と持ち上がってきた話ではありませんか。それを知らないわけはありますまい。80年代前半頃に、よく「シーレーン防衛」をネタにした本とか漫画とかあったじゃないですか。答弁なんかでも出てきた話じゃないですか。
こんなのとか>100-衆-内閣委員会-2号 昭和58年10月06日
この一部をご紹介してみましょう。
○矢崎政府委員 いまの御質問の点については、二つ問題があるように思います。
一つは、日本有事の場合にわが国が個別的自衛権を発動し得る限界は一体どこまでかということが、まず基本にあるかと思います。この点につきましては、しばしば御答弁申し上げておりますように、これは領土、領海内に限るものではなくて、公海及びその上空にも及び得るものであるということでございますから、そういった意味での自衛権の行使の限界というものは、公海及びその上空に及び得るというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。
ただし、第二点といたしまして、さはさりながら、日本の自衛隊の現在の防衛力整備の目標といたしましては、周辺海域にありましては数百海里、航路帯を設ける場合には千海里程度の海域というものを防衛する能力を持とうということをめどにしてやっているということがございますので、そういった意味での能力上の限界はあろうかと思いますので、そういう限界を踏まえながら対処をしていくことになろうかと思います。
また、具体的に一体どういうケースがあり得るかということにつきましては、これはその事態に応じまして千差万別であろうと思いますので、一概には言えないかと思います。
○市川委員 質問にちゃんとお答えいただかないと議論がかみ合わないのですけれどもね。私はそういう質問をしていないと思うのです。やはり議論というのは、聞いたことにきちっと答えることによって対話が成り立つわけですから、私が伺っているのは防衛白書、いまあなたが統一見解とおっしゃられた中にある、日本の自衛隊が米艦を防衛できる条件として、いろいろな条件を挙げていますね。個別的自衛権の範囲内というのが一つ。それから日米安全保障条約に基づき米軍と共同対処行動をとっている場合、これがまたもう一つ。それからわが国の防衛のために行動している米艦、こういう概念がもう一つ。それが攻撃を受けた場合、自衛隊がわが国を防衛するため共同対処行動の一環として守ることは集団自衛権の行使ではない、こういう論理構造でこの文章はでき上がっているわけです。大別して四つの柱でこの文章はできているわけです。
この四つの柱の中の一つに、日米安全保障条約に基づき米軍と共同対処行動をとっている場合というのがあるわけでしょう。それは、総理の言う救出に駆けつけている途上にある米艦も含まれるのかというのが私の質問なのです。したがって、含まれます、含まれませんというのがお答えなのです。簡単に答えてください。
○矢崎政府委員 ただいまの御質問の点は、そういった米艦艇が日本に救出に来ているというその行動が、これまさに先ほど申し上げましたように日米間の協議によりまして日米共同作戦を実施していくわけでございますから、そういった調整の過程を通じましてそういう共同対処行動をとるということで向かってきている艦艇でありますれば、これは当然この中に入るということでございます。
○市川委員 それはハワイを出発したときから、要するに安保条約が発動されて共同対処行動に入るということが日米で合意されて、周辺の艦艇では足らないからハワイから米軍の艦艇が急遽日本に駆けつける、いまの解釈によりますと、そういう共同対処行動ということが日米で合意さえされれば、距離に関係なく、その任務につくという目的がはっきりしている艦艇はもう全部共同対処行動中の米艦艇だというふうに判断するのだというふうにいま理解したのですが、そのとおりですか。
○矢崎政府委員 ただいまの問題は、仮にハワイから発してくるとすれば、そのときからそういうことをやるのかという御質問がと思いますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、わが国の自衛権の行使という観点から言えば、わが国の領域内には限られない。したがって、公海及びその上空にも及び得るということでございます。しかし、それが具体的にどこまで及んでいくかということは、わが国に対する武力攻撃の態様等によりまして一概には言えないと思います。要は、わが国を防衛するため必要な限度内という限界内で考えなければいけないというのが第一点。
第二点は、先ほども申し上げましたように、わが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の範囲でわが国の海上交通を保護し得る能力を持つことを目標に防衛力整備をしておりますから、そういったような意味で、有事におきまして海上自衛隊がそういった海上交通保護のための行動をする地理的な範囲というものには能力的に見ておのずから限界がありますので、御質問のような事態になることは現時点ではなかなか考えられないのではないかというふうに考えております。
○市川委員 言わんとする意味はわかるのですけれども、シーレーンのことをいま聞いているわけじゃないので、いわゆる航路帯を設ける場合は千海里、周辺数百海里の能力しかないから、ハワイまでは出かけていかれませんということをおっしゃりたかったのだろうと思うのです。しかし、それはまだ半分の答えにしかなっていないと思うのですね、そういう意味では。そうすると、日本が自衛の限度内だという判断さえ主観的に下しさえすれば、それはまた延びちゃうじゃないですか。
じゃあ、もう一度最初の質問に戻しますよ。防衛庁の言う日米共同対処行動というのは、日本の領海もしくは周辺ですでにもう対処行動に入っているという艦艇だけではなくて、その対処行動をしている日本の領海もしくは周辺地域へ救援に向かっている船も入る、まずこれははっきりしていますね。入るということですね。遠いか近いかは別として、まず入る、そうですね。
他の例でも、答弁書第一三号 内閣参質九八第一三号 (昭和五十八年五月十七日)とか。
一、二及び八について
シーレーンという言葉は、いわゆるシーレーン防衛との関連で用いているものであり、シーレーン防衛は、有事の際国民の生存を維持し、あるいは継戦能力を保持する観点から、港湾・海峡の防備、哨戒、護衛等各種作戦の組合せによる累積効果によつて、海上交通の安全を確保することを目的とするものである。
三から七までについて
我が国は、有事において、我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域において、自衛の範囲内で海上交通の安全を確保し得ることを目標に、防衛力の整備を進めてきている。また、我が国が憲法上認められていない集団的自衛権の行使を前提として行動することが許されないことはいうまでもない。
我が国に対する武力攻撃がいかなる状況下で発生するかについては、一概にいえないが、日米安保体制の下で我が国を防衛する立場にある米国は、かかる我が国の基本的な考え方を十分理解した上で、我が国が我が国防衛のためになお一層努力することを期待している。
なお、シーレーン防衛のための作戦は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に、自衛隊と米軍が共同して実施することとなつており、このことは、「日米防衛協力のための指針」にも示されているとおりである。
九について
周囲を海に囲まれ、また、専守防衛に徹する我が国としては、シーレーン防衛のみならず、国土の防衛を有効に実施し得る縦深性のある質の高い防衛力の保持が当然重要であると考えている。
十及び十一について
我が国の海上交通の安全が脅かされるような事態に有効に対処するためには、シーレーン防衛能力を整備することは、もとより重要である。他方、総合的な観点から我が国の安全を確保するためには、経済、外交等を含めた広い立場からの努力が必要であり、これら各般の施策については、政府として、整合性を保ちつつ推進すべきものであることほいうまでもない。
=====
こんなのとか。
>参議院議員翫正敏君提出シーレーン防衛に関する質問に対する答弁書
一について
我が国は、海上防衛力の整備を、我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域において、自衛の範囲内で海上交通の安全を確保し得ることを目標に進めている。有事における航路帯の設定は、事態の様相等に応じて行われるべき性格のものであり、その海域、幅、起点等について、あらかじめ固定的に申し上げられる性格のものではない。なお、千海里以遠の海上交通保護については、一般に米軍に期待することとしている。
(以下略)
=====
昔からの話じゃないですか、シーレーンなんて。
それを今更、社説なんかで『日本のタンカーは危うさの中に放置されていたといえる。多国籍海軍への給油支援は日本の死活問題でもある。』なんて指摘をされたくはないでしょうな。要するに、あれですか、何段論法みたいなこじ付けですか。
①多国籍軍が「日本のシーレーンを防衛して」くれてたのに
②給油ができないと多国籍軍が「シーレーンの防衛」ができなくなる
③その結果、タンカーはテロに攻撃され
④日本には石油が入ってこなくなり
⑤日本の死活問題となる
あんたら、どんだけ人を脅かせば気が済むんですか?これも、「日本にF-15が100機以上なければ、○○軍に対抗できず制空権を奪われてしまう」みたいな論法と一緒だな。ファントムしかなければ、敵の○○には勝てず、結果、制空権を奪われ、敵は大挙して上陸してくる、みたいなのと同じですかね(笑)。社説を書くような人間が、上記①~⑤のような論法を用いねばならない程に、特措法を肯定する論拠に乏しい、ということですかい?随分とレベルが低いね。
01年以前には、給油活動もなく多国籍軍もいなかったので、「タンカーは危うさの中に放置されていた」んですが、日本は未だに石油がこなくなって死んだりしてませんけど(笑)。具体的に、アフガンを本拠とするテログループ(アルカイーダ?タリバン?よく知らん)が海上で活動し、日本のタンカーが攻撃されて撃沈されたりした事実があるなら、それを示してもらいたいですね。産経新聞くらいの取材力があれば、きっとこれくらいは朝飯前に明らかにしてくれることでしょう。
そもそも、日本の海上防衛力というのは千海里を目処としており、それを超える活動は「一般に、米軍に期待することとしている」と、政府が答弁しているでしょうが(笑)。シーレーン防衛の為に、ペルシャ湾くんだりまで出かけていったりする予定はない、ということだわな。大体、日本のタンカーが狙われるのは、テロの攻撃ではなくて、「海賊」でしょ?そりゃ、海賊なのかテロなのか、はっきりしないグループもいるかもしれんが、少なくとも、ホルムズ海峡とかインド洋で海上テロに攻撃される心配よりも、マラッカ海峡で海賊に襲われて金品強奪とか身代金要求とかに遭う方が多いでしょうね、多分。いや、調べてないから判らんけど。でも、マラッカ海峡の方がはるかに危険だろう、ってことは、判るよ。昔から、マラッカ海峡を軍事的に封鎖されたら大変だ、ってなストーリーはよくあるし。
結局、社説子の書いている①~⑤の危険性というのは皆無ではないけれども、これまでのところ「取り立てて言うほどの被害」なんかには遭ってなくて、死活問題とまで力んで言うほどのものではないだろう。むしろマラッカ海峡で海賊に襲われてる日本船はいくつかあったと思うけど。世の中には脅かし商法みたいな連中がよくいるので、それと同じようなもんだな。「あなたの年金は本当に貰えますか?この有利な投資で運用して老後資金を用意しておきなさい」とか、「あなたの医療費は本当に払えますか、ガンになればこんなにかかります、退院後の生活費もこんなにかかります」みたいなのも、似てるな。不安に陥れようと思えば、いくらでも材料を出せるからね。
給油活動を止めて帰還した後で、多国籍軍の警備ができなくなり日本のタンカーが攻撃された事例を是非教えて欲しいね。テロはやり放題になったんでしょ?(笑)
続きは後で。
【主張】新テロ法成立 国際社会と共同歩調を 国益の実現に必要な再可決 - MSN産経ニュース
(一部引用)
≪傷ついた日本の信用≫
政府は近く、海自派遣の実施計画を閣議決定、月内に海自補給艦などを出航させ、2月中旬にもインド洋での給油支援を再開させる方針だ。昨年11月2日にテロ対策特別措置法が失効し、海自艦が撤収してから、再開までに約3カ月要する。この間、日本の国際的信用が大きく傷つき、国益が失われたことを忘れてはなるまい。
石破茂防衛相が「(給油活動中断で)パキスタン艦船は活動時間が4割減った。監視活動が密から疎になっている」と語ったように、海自の撤収は多国籍海軍の海上パトロールなどにダメージを与えた。喜んだのは、麻薬を積んで武器を買って戻るテロリストたちなのである。
ペルシャ湾からインド洋にいたる多国籍海軍が守る海域は、中東に原油の9割を依存する日本にとって海上交通路(シーレーン)と重なる。
ところが反テロ国際行動から脱落したことで、海自は海上テロなどの情報を共有できなくなってしまった。日本のタンカーは危うさの中に放置されていたといえる。多国籍海軍への給油支援は日本の死活問題でもある。
国際社会は給油再開を歓迎しているが、それにとどまってはならない。日本は反テロ国際共同行動を担う能力と責務を担っている。日本が信頼できる国かどうかが試されてもいよう。
=====
まあ言いたいことは判らないでもない。が、理由をこじつけただけであって、「国益」とやらが不明瞭なことに変わりはない。唯一しくじったと見えたのは、「日本の信用」に傷がついたことくらいで、これは安倍総理の口約束が遠因であったと言えなくもない。けれど、3ヶ月のお休み期間とか部隊の交代とか、各国の部隊運用にはそれぞれ事情があるのであって、それを日本の補給艦1隻が参加できなくなったことくらいで部隊運用や作戦行動に重大な支障が出るのであれば、相当間抜けな指揮官とか部隊である、ということだ。
裏を返せば、日本の行っている活動に支えられていた作戦行動は、全体にとっての死活問題でもなければ、重要作戦でも何でもない、ということ。普通に考えてごらんなさいな。あなたが指揮官だったら、どうなのか?
本当に、海上阻止活動が作戦全体に与える影響が甚大であり、その成否が全部隊とか陸上部隊にとって極めて重要なものであるとするなら、どういった対策を講じると思うか?参加している主要な海上部隊の戦力を投入して、徹底的にやるだろう。万が一、艦艇の作戦行動に支障が出そうなら、参加国の中で補給艦を出せそうな国を遮二無二探し出してきて、日本の抜けた穴を埋める必要があるだろう。戦争時のことを考えてごらんよ。重要な輸送艦とか補給艦が敵潜水艦に沈められて欠損を生じたらどうするか?どこからか絶対に手当てして、その補給路を確保するだろう。大切な補給なのであれば、そこに穴を開けたままにできるはずがなかろう。重要度が高ければ高いほど、欠損は許されないからね。かならずそこに何らかの対策を手当てしなければならない。つまり、日本の補給艦が担っていた役割を、必ず代償しなければならないはずだ。
しかし、実態はどうなのか?日本の補給艦がいなくなって、パキスタンの艦艇のパトロール効率が落ちたのだそうだ。ということは、何らかの手当てがなされた形跡はなく、つまりは全体から見た作戦の重要度が極めて低い部類と考えられる、ということだ。対テロ作戦の効率から見ると、海上阻止活動は最重要課題ではなく、現実の成果としてもかなり低いものとなっている、と推測される。抜けた穴が甚大な影響を持つほど大きいというのに、それをむざむざと放置しておく軍事行動など、ありゃせんよ。あるとすれば、余程頭の悪い指揮官たちだけで作戦を考えている場合くらいではないか(笑)。絶対に守らねばならない防衛ラインで、味方部隊がやられて敵に突破されそうだ、という時に、そこに何らかの手当て(補充)をせず、穴を開けたまま「はい、どうぞ」と敵を突破させるような作戦なんてあると思いますかね?そんなことは現実にはないんだって。あるのは、本物のバカの時だけだって(爆)。なので、日本が給油を止めると大変なことになってしまう、とか言うのは、ウソだろうな。
「日本がアブラをタダでくれると思って当てにしてたのに、いなくなっちゃうと不便になるね」くらいには、皆思っていると思うよ。そりゃ、有り難いに決まってますよ。船で動き回っても、日本が補給してくれるから、遠くまで行ってこれるもんね。そりゃ当然だわ。けど、どこの国からも新たな補給艦が投入されていないということは、「自分が出すのはイヤ」「出したくても出せない」「出す余裕がない」「出せるような補給艦じゃない(笑、技術的なこととか)」みたいな理由があるのかもしれないが、とりあえず「無くても仕方ないよね」と我慢する程度のものでしかないのだから。結論的には、「いなくてもできる」ということであり、「いたら便利」というだけの話だろう。「飛べなくなったF-15」じゃないけど、「1機も飛んでなくても防衛できてる」、「200機あったらいいよね(より安心)」、みたいなものである。「ない」より、「あった方がいい」というのは大体何でもそうだよ(笑)。
それから、シーレーンの話を持ち出しているが、随分と萎びたネタを持ち出してきたな。書いてる人はきっと年配の人だろうと思うのだけれども、こんな話は冷戦時代に随分と持ち上がってきた話ではありませんか。それを知らないわけはありますまい。80年代前半頃に、よく「シーレーン防衛」をネタにした本とか漫画とかあったじゃないですか。答弁なんかでも出てきた話じゃないですか。
こんなのとか>100-衆-内閣委員会-2号 昭和58年10月06日
この一部をご紹介してみましょう。
○矢崎政府委員 いまの御質問の点については、二つ問題があるように思います。
一つは、日本有事の場合にわが国が個別的自衛権を発動し得る限界は一体どこまでかということが、まず基本にあるかと思います。この点につきましては、しばしば御答弁申し上げておりますように、これは領土、領海内に限るものではなくて、公海及びその上空にも及び得るものであるということでございますから、そういった意味での自衛権の行使の限界というものは、公海及びその上空に及び得るというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。
ただし、第二点といたしまして、さはさりながら、日本の自衛隊の現在の防衛力整備の目標といたしましては、周辺海域にありましては数百海里、航路帯を設ける場合には千海里程度の海域というものを防衛する能力を持とうということをめどにしてやっているということがございますので、そういった意味での能力上の限界はあろうかと思いますので、そういう限界を踏まえながら対処をしていくことになろうかと思います。
また、具体的に一体どういうケースがあり得るかということにつきましては、これはその事態に応じまして千差万別であろうと思いますので、一概には言えないかと思います。
○市川委員 質問にちゃんとお答えいただかないと議論がかみ合わないのですけれどもね。私はそういう質問をしていないと思うのです。やはり議論というのは、聞いたことにきちっと答えることによって対話が成り立つわけですから、私が伺っているのは防衛白書、いまあなたが統一見解とおっしゃられた中にある、日本の自衛隊が米艦を防衛できる条件として、いろいろな条件を挙げていますね。個別的自衛権の範囲内というのが一つ。それから日米安全保障条約に基づき米軍と共同対処行動をとっている場合、これがまたもう一つ。それからわが国の防衛のために行動している米艦、こういう概念がもう一つ。それが攻撃を受けた場合、自衛隊がわが国を防衛するため共同対処行動の一環として守ることは集団自衛権の行使ではない、こういう論理構造でこの文章はでき上がっているわけです。大別して四つの柱でこの文章はできているわけです。
この四つの柱の中の一つに、日米安全保障条約に基づき米軍と共同対処行動をとっている場合というのがあるわけでしょう。それは、総理の言う救出に駆けつけている途上にある米艦も含まれるのかというのが私の質問なのです。したがって、含まれます、含まれませんというのがお答えなのです。簡単に答えてください。
○矢崎政府委員 ただいまの御質問の点は、そういった米艦艇が日本に救出に来ているというその行動が、これまさに先ほど申し上げましたように日米間の協議によりまして日米共同作戦を実施していくわけでございますから、そういった調整の過程を通じましてそういう共同対処行動をとるということで向かってきている艦艇でありますれば、これは当然この中に入るということでございます。
○市川委員 それはハワイを出発したときから、要するに安保条約が発動されて共同対処行動に入るということが日米で合意されて、周辺の艦艇では足らないからハワイから米軍の艦艇が急遽日本に駆けつける、いまの解釈によりますと、そういう共同対処行動ということが日米で合意さえされれば、距離に関係なく、その任務につくという目的がはっきりしている艦艇はもう全部共同対処行動中の米艦艇だというふうに判断するのだというふうにいま理解したのですが、そのとおりですか。
○矢崎政府委員 ただいまの問題は、仮にハワイから発してくるとすれば、そのときからそういうことをやるのかという御質問がと思いますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、わが国の自衛権の行使という観点から言えば、わが国の領域内には限られない。したがって、公海及びその上空にも及び得るということでございます。しかし、それが具体的にどこまで及んでいくかということは、わが国に対する武力攻撃の態様等によりまして一概には言えないと思います。要は、わが国を防衛するため必要な限度内という限界内で考えなければいけないというのが第一点。
第二点は、先ほども申し上げましたように、わが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の範囲でわが国の海上交通を保護し得る能力を持つことを目標に防衛力整備をしておりますから、そういったような意味で、有事におきまして海上自衛隊がそういった海上交通保護のための行動をする地理的な範囲というものには能力的に見ておのずから限界がありますので、御質問のような事態になることは現時点ではなかなか考えられないのではないかというふうに考えております。
○市川委員 言わんとする意味はわかるのですけれども、シーレーンのことをいま聞いているわけじゃないので、いわゆる航路帯を設ける場合は千海里、周辺数百海里の能力しかないから、ハワイまでは出かけていかれませんということをおっしゃりたかったのだろうと思うのです。しかし、それはまだ半分の答えにしかなっていないと思うのですね、そういう意味では。そうすると、日本が自衛の限度内だという判断さえ主観的に下しさえすれば、それはまた延びちゃうじゃないですか。
じゃあ、もう一度最初の質問に戻しますよ。防衛庁の言う日米共同対処行動というのは、日本の領海もしくは周辺ですでにもう対処行動に入っているという艦艇だけではなくて、その対処行動をしている日本の領海もしくは周辺地域へ救援に向かっている船も入る、まずこれははっきりしていますね。入るということですね。遠いか近いかは別として、まず入る、そうですね。
他の例でも、答弁書第一三号 内閣参質九八第一三号 (昭和五十八年五月十七日)とか。
一、二及び八について
シーレーンという言葉は、いわゆるシーレーン防衛との関連で用いているものであり、シーレーン防衛は、有事の際国民の生存を維持し、あるいは継戦能力を保持する観点から、港湾・海峡の防備、哨戒、護衛等各種作戦の組合せによる累積効果によつて、海上交通の安全を確保することを目的とするものである。
三から七までについて
我が国は、有事において、我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域において、自衛の範囲内で海上交通の安全を確保し得ることを目標に、防衛力の整備を進めてきている。また、我が国が憲法上認められていない集団的自衛権の行使を前提として行動することが許されないことはいうまでもない。
我が国に対する武力攻撃がいかなる状況下で発生するかについては、一概にいえないが、日米安保体制の下で我が国を防衛する立場にある米国は、かかる我が国の基本的な考え方を十分理解した上で、我が国が我が国防衛のためになお一層努力することを期待している。
なお、シーレーン防衛のための作戦は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に、自衛隊と米軍が共同して実施することとなつており、このことは、「日米防衛協力のための指針」にも示されているとおりである。
九について
周囲を海に囲まれ、また、専守防衛に徹する我が国としては、シーレーン防衛のみならず、国土の防衛を有効に実施し得る縦深性のある質の高い防衛力の保持が当然重要であると考えている。
十及び十一について
我が国の海上交通の安全が脅かされるような事態に有効に対処するためには、シーレーン防衛能力を整備することは、もとより重要である。他方、総合的な観点から我が国の安全を確保するためには、経済、外交等を含めた広い立場からの努力が必要であり、これら各般の施策については、政府として、整合性を保ちつつ推進すべきものであることほいうまでもない。
=====
こんなのとか。
>参議院議員翫正敏君提出シーレーン防衛に関する質問に対する答弁書
一について
我が国は、海上防衛力の整備を、我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域において、自衛の範囲内で海上交通の安全を確保し得ることを目標に進めている。有事における航路帯の設定は、事態の様相等に応じて行われるべき性格のものであり、その海域、幅、起点等について、あらかじめ固定的に申し上げられる性格のものではない。なお、千海里以遠の海上交通保護については、一般に米軍に期待することとしている。
(以下略)
=====
昔からの話じゃないですか、シーレーンなんて。
それを今更、社説なんかで『日本のタンカーは危うさの中に放置されていたといえる。多国籍海軍への給油支援は日本の死活問題でもある。』なんて指摘をされたくはないでしょうな。要するに、あれですか、何段論法みたいなこじ付けですか。
①多国籍軍が「日本のシーレーンを防衛して」くれてたのに
②給油ができないと多国籍軍が「シーレーンの防衛」ができなくなる
③その結果、タンカーはテロに攻撃され
④日本には石油が入ってこなくなり
⑤日本の死活問題となる
あんたら、どんだけ人を脅かせば気が済むんですか?これも、「日本にF-15が100機以上なければ、○○軍に対抗できず制空権を奪われてしまう」みたいな論法と一緒だな。ファントムしかなければ、敵の○○には勝てず、結果、制空権を奪われ、敵は大挙して上陸してくる、みたいなのと同じですかね(笑)。社説を書くような人間が、上記①~⑤のような論法を用いねばならない程に、特措法を肯定する論拠に乏しい、ということですかい?随分とレベルが低いね。
01年以前には、給油活動もなく多国籍軍もいなかったので、「タンカーは危うさの中に放置されていた」んですが、日本は未だに石油がこなくなって死んだりしてませんけど(笑)。具体的に、アフガンを本拠とするテログループ(アルカイーダ?タリバン?よく知らん)が海上で活動し、日本のタンカーが攻撃されて撃沈されたりした事実があるなら、それを示してもらいたいですね。産経新聞くらいの取材力があれば、きっとこれくらいは朝飯前に明らかにしてくれることでしょう。
そもそも、日本の海上防衛力というのは千海里を目処としており、それを超える活動は「一般に、米軍に期待することとしている」と、政府が答弁しているでしょうが(笑)。シーレーン防衛の為に、ペルシャ湾くんだりまで出かけていったりする予定はない、ということだわな。大体、日本のタンカーが狙われるのは、テロの攻撃ではなくて、「海賊」でしょ?そりゃ、海賊なのかテロなのか、はっきりしないグループもいるかもしれんが、少なくとも、ホルムズ海峡とかインド洋で海上テロに攻撃される心配よりも、マラッカ海峡で海賊に襲われて金品強奪とか身代金要求とかに遭う方が多いでしょうね、多分。いや、調べてないから判らんけど。でも、マラッカ海峡の方がはるかに危険だろう、ってことは、判るよ。昔から、マラッカ海峡を軍事的に封鎖されたら大変だ、ってなストーリーはよくあるし。
結局、社説子の書いている①~⑤の危険性というのは皆無ではないけれども、これまでのところ「取り立てて言うほどの被害」なんかには遭ってなくて、死活問題とまで力んで言うほどのものではないだろう。むしろマラッカ海峡で海賊に襲われてる日本船はいくつかあったと思うけど。世の中には脅かし商法みたいな連中がよくいるので、それと同じようなもんだな。「あなたの年金は本当に貰えますか?この有利な投資で運用して老後資金を用意しておきなさい」とか、「あなたの医療費は本当に払えますか、ガンになればこんなにかかります、退院後の生活費もこんなにかかります」みたいなのも、似てるな。不安に陥れようと思えば、いくらでも材料を出せるからね。
給油活動を止めて帰還した後で、多国籍軍の警備ができなくなり日本のタンカーが攻撃された事例を是非教えて欲しいね。テロはやり放題になったんでしょ?(笑)
続きは後で。