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続・自衛隊のインド洋派遣に関する考察

2008年01月13日 19時34分35秒 | 法関係
続きです。


毎度で申し訳ないが、例で考えてみる。

今、目の前にブルー軍の戦車が1両ある。ガス欠になって動けない。
この場所で戦闘行為は行われていない。30km離れた隣村には、敵軍部隊がいることを知っている。
さて、この時、あなたがタンクローリーの持ち主で大量の燃料を持っているとする。
ブルー軍戦車の燃料を満タンに補給したら、隣村のレッド軍部隊と交戦できることは容易に想像できる。

戦車の搭乗員はあなたに次のように説明した。
「燃料補給という行為は交戦でもなく、あなたは加担したことにならない」
だから補給せよ、と言うのである。
詭弁だ、と思うことなく、本当に「加担したことにならない」と考えるであろうか?

自分が燃料補給を行えば、補給を受けた他の者が確実に戦闘に参加し、武力行使に該当する行為を行うであろうことが明白である時、補給と武力行使が一体的であると考えるのは当然なのではないか?ブルー軍戦車に燃料を入れるからこそ、その戦車は隣村まで行って戦闘を行うのであり、補給がなければそうした武力行使が行われることはなかったはずである。これは幇助みたいなものであり、共犯関係に近いのであり、実態として一連の「補給、進軍、戦闘」という行為に参加しているのと同じようなものである。たとえ意図が違うものであったとしても、補給を行えば戦闘に至ることは誰にでも判るのであって、武力行使と一体的でないという主張には無理があるだろう。


こんな極端な例ではどうか。

目の前にジェイソンがいる。
過去にジェイソンがチェーンソーで人を大量に殺してきたことを、あなたは知っている。
今、ジェイソンが持っているチェーンソーがガス欠となり、動かなくなりました。これにガソリンを補給するとチェーンソーは復活し、ジェイソンは人殺しを始めるかもしれません。
さて、ここでジェイソンは次のように言いました。
「ガソリンを補給しても、あなたがチェーンソーを動かすわけではない」
「ガソリンを補給する行為自体が誰かを殺すわけではない」
「だから、これは殺人には該当しないし、何の罪にもならない」
「大丈夫、違法ではないから、ガソリンを補給してくれ」

外形的にどんな屁理屈を付けようとも、実態としてはチェーンソーのガソリンを補給することは、チェーンソーで誰かが殺されるのを手伝ってるのと同じだと考えるだろう。ジェイソンがチェーンソーで殺戮を行う蓋然性が高いのに、これを「補給した行為は問題ない」とか「一体化ではないから罪はない」などと言えるのだろうか?


結局のところ、どんな詭弁を用いようとも、一体的な補給業務に該当すると考えるのが妥当であって、行為の関係の密接性は極めて高いのである。2つの例のように、戦車を駆動する、チェーンソーを駆動する、ということを可能にしてしまうのですからね。日本が直接的に武力行使を受けておらず、当事国ではないのに、わざわざ「武力行使」とみなされるような補給業務を行っているのである。


こんな議論もあるので、参考までに取り上げる。
>テロ・イラク特別委 宮崎内閣法制局第一部長答弁(平成16年3月3日)

安全確保支援活動というふうに法律で書いてあります、その支援対象であります米英軍の安全確保活動、具体的に申しますれば、国連加盟国が行うイラクの国内における安全及び安定を回復するための活動というふうに法律に書いてございますが、それには、今御指摘のように米英軍等による武力の行使、すなわち国際的な武力紛争の一環として行われるところの戦闘行為に該当する場合もありますし、また、それに該当しない純然たる治安維持活動、例えば純然たる盗賊団の掃討というようなこともあり得ると考えております。我が国の憲法上、このような米英軍等の活動に対しまして、それ自体は武力行使に当たりません医療、輸送等によって支援する場合に憲法上問題となりますのは、米英軍が今申し上げた前者に当たる行動をしている場合に限られるというふうに考えておりまして、後者に当たる行動につきましては、米英軍はさきに申し上げた意味での武力の行使を行っているわけではないので、これに対して我が国が医療、輸送等の支援をしたとしても、武力の行使との一体の問題というのは生じないとかねてから申し上げております。
====

ここで注意すべきは、
『我が国の憲法上、このような米英軍等の活動に対しまして、それ自体は武力行使に当たりません医療、輸送等によって支援する場合に憲法上問題となりますのは、米英軍が今申し上げた前者に当たる行動をしている場合に限られる』
との部分である。

大雑把にまとめると、

◎行為自体が武力行使に当たらない「医療や輸送等によって支援する場合」であっても、

→ア)武力行使(=国際的武力紛争の一環として行われる戦闘行為)に当たる行動をしている場合

→イ)純然たる盗賊団の掃討に当たる行動をしている場合
で解釈は異なる、ということである。憲法上問題となるのは、ア)の場合、ということが述べられている。

OEF-MIOの根拠は安保理1368に基づくものであり(集団的)自衛権行使による武力行使と主張しているのであれば、少なくとも多国籍海軍の行動がア)に該当すると認容しているものと考えられる。よって、行為自体が武力行使に該当しない医療や輸送等であっても憲法上問題となる、との見解が示されているものと考えられる。宮崎部長はこれを否定し、そうではなく、自衛隊が支援するのはイ)の行動についてのみである、だから違法性は問題とならない、ということを言っているのである。


しかし、イ)が事実であるとして、そうであれば、「テロとの戦い」という説明そのものがウソである。誤解を招くような語句を用いるのは、詐欺的である。たとえば、「盗賊、チンピラ、ヤクザ、マフィア、ならず者、等々」の掃討に自衛隊は支援します、と真実を言うべきであろう。「国際テロ組織が日本のタンカーを攻撃する」なんてことも真っ赤なニセモノで(爆)、「盗賊団やチンピラマフィアの一部がインド洋で日本のタンカーを狙っています」と正しく言うべきではないか?
因みに、盗賊団は数千トンクラスの大型船を持っているのかね?よく知らんけど。そんなドデカイ船を持っていたら、「超目立って」しょうがないんじゃないか?どこかに入港した途端に、直ぐに捕まりそうだけど(爆)。外洋で日本のタンカーを襲おうと企んでるくらいだから、小型船なわけないよね?タグボートとか漁船みたいに小さいということもないんだよね?数十万トンとかあるような巨大クジラ(=タンカー)に挑むからには、メダカとかサンマとかちっぽけな魚じゃ襲いかかれないもんね?まあ、産経新聞の主張を撃破したところで、こちらには何らのメリットもないから、別にいいんだけどさ。


結論的には、イラク派遣やインド洋派遣というのは、憲法違反に該当するであろう、と思われる。
憲法違反を回避するべく、非戦闘地域とかをひねり出し、要件に該当しないようにした。国民にはウソの説明を未だに続けている。そうまでしてどうしても派遣せざるを得なかった、という理由があるとすれば、その最大の理由とは「日本を米国から守る為」というだけであろう。きっと、そういうことだ。




自衛隊のインド洋派遣に関する考察

2008年01月13日 19時32分29秒 | 法関係
これまでとは視点を変えて、法的にどうなのかということについて考えてみたい。

1)日本における基本的見解

自衛隊の派遣については、過去の答弁等で見解が形成されてきた部分がかなりあるものと思われる。特に、国連中心の活動への参加はどの程度許容されるものか、という論点がある。

①稲葉誠一君提出質問主意書に対する答弁書(昭和55年10月28日)

いわゆる「国連軍」は、個々の事例によりその目的・任務が異なるので、それへの参加の可否を一律に論ずることはできないが、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないと考えている。これに対し、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴わないものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないわけではないが、現行自衛隊法上は、自衛隊にそのような任務を与えていないので、これに参加することは許されないと考えている。
====

つまり、武力行使を伴うものであれば違憲であるとし、目的・任務が武力行使を伴わないなら参加可能。しかし、当時には自衛隊法上でその任務がないことから「参加は許されていない」との見解となっていた。


②衆院国連平和協力特別委 中山外務大臣答弁(平成2年10月26日)

一 いわゆる「国連軍」に対する関与のあり方としては、「参加」と「協力」とが考えられる。

二 昭和55年10月28日付政府答弁書にいう「参加」とは、当該「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味し、平和協力隊が当該「国連軍」に参加することは、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊が当該「国連軍」に参加する場合と同様、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。

三 これに対し、「協力」とは、「国連軍」に対する右の「参加」を含む広い意味での関与形態を表すものであり、当該「国連軍」の組織の外にあって行う「参加」に至らない各種の支援をも含むと解される。

四 右の「参加」に至らない「協力」については、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであっても、それがすべて許されないわけではなく、当該「国連軍」の武力行使と一体となるようなものは憲法上許されないが、当該「国連軍」の武力行使と一体とならないようなものは憲法上許されると解される。
====

手短にいうと、この答弁では、
・「参加」と「協力」は異なる
・「協力」はより広範な関与形態
とし、「国連軍の目的、任務が武力行使を伴う場合」であっても、「協力」であれば、
・武力行使と一体となるものは違憲
・武力行使と一体とならないものは合憲
と解するものとされた。

つまり、「参加」してはいけないが、「協力」ならいいですよ、という部分は「少しある」ということになるのである。


③衆院予算委 大森内閣法制局長官答弁(平成10年3月18日)

現在の国連憲章第42条、43条に規定されております国連軍につきましては、従前から私どもが申し上げておりますように、憲法9条の解釈、運用の積み重ねから推論いたしますと、我が国がこれに参加することには憲法上の疑義があるというふうに考えているわけでございます。憲法問題でございますから、疑義がある限りは我が国としてこれをやってはいけないわけでございますが、ただ、断定的に結論を述べておらないゆえんのところは、要するにまだ国連軍というのは、このような憲章上の正規の国連軍の話でございますが、いまだ設けられたことがなく、そのための前提となる特別協定もいかなる内容になるか不明であります。したがって、将来、その編成が現実の問題となり、兵力の提供に関する特別協定の具体的内容が確定したときに初めて確定的な意見が申し上げられるということ、これも従前から申し上げているところであります。これは、何も結論を逃げているわけじゃございませんで、具体的な特別協定がどうなるかが決まらなければ、確定的な憲法判断ができないということでございます。それを若干申し上げますと、要するに、国連軍への参加というのは、我が国の主権行為が基点になることは間違いございません。ただ、その上で、その参加をした我が国の組織が国連軍の中でどう位置づけられ、それに対する指揮の形態がどうなるのか、あるいは撤収の要件あるいは手続がどう定められるのかということが、その参加した我が国の組織の行動がなお我が国の武力の行使に当たるかどうかという評価にやはり決定的な影響を及ぼす。したがいまして、特別協定が決まらなければ、そのあたりの確定的な評価ができない、こういうことでございます。
====

長いので読みにくいですが、これも手短に書けば、
・原則として国連憲章42条、43条規定の軍に参加するのは憲法上の疑義がある
・よって参加できないと判断される
しかし、現実には存在しなかったので結論は断定できず、
・特別協定の具体的内容による
・組織中での位置付け
・指揮形態
・撤収要件や手続
等の条件が必要である、これにより日本国の武力行使に該当するかの評価をする、ということだ。


④衆院安保委 秋山内閣法制局第一部長答弁(平成10年5月14日)

国連の決議に従って我が国が武力の行使を行うという場合でありましても、我が国の行為であることには変わりがございませんので、このような行為は憲法9条において禁じられるというふうに考えているわけでございます。それから、集団的安全保障措置に関しましても、これは国際紛争を解決する手段であるということには変わりないのでございますから、このような措置のうち、武力の行使等に当たる行為につきましては、我が国としてこれを行うことが許されないというふうに考えているわけでございます。
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これも簡潔にいえば、
・国連決議があっても武力行使に該当する行為は禁止
・集団的安全保障措置に関する武力行使も禁止
ということです。

⑤参院予算委 林内閣法制局長官答弁(昭和34年3月19日)
今安保条約の改定の交渉をやっております場合において、日本の態度は、いわゆる日本の負うべき義務は、日本の憲法の範囲内においてやるということでございますから、日本の憲法上負い得ないものをこの条約の中に盛り込むはずはないわけであります。ただいま仰せられました補給業務ということの内容は、先ほど総理が仰せられた通り実ははっきりしないのでございますが、経済的に燃料を売るとか、貸すとか、あるいは病院を提供するとかということは軍事行動とは認められませんし、そういうものは朝鮮事変の際にも日本はやっておるわけであります。こういうことは日本の憲法上禁止されないということは当然だと思います。しかし極東の平和と安全のために出動する米軍と一体をなすような行動をして補給業務をすることは、これは憲法上違法ではないかと思います。そういうところは条約上もちろんはっきりさしていくべきだと思います。
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(平和と安全の為に出動する)米軍と一体をなすような行動をして「補給業務」をすることは、違憲とみなされる、という判断かと思われます。「米軍と一体をなすような行動」や「補給業務」という字句の範囲や定義について解釈を変えることで、違憲性から逃げることはできるのかもしれないが、外見上では「インド洋での給油活動」は補給業務としか映らず、また、米軍と一体をなすような行動にしか見えませんね。


⑥衆院予算委 大森内閣法制局長官答弁(平成9年2月13日)
他国による武力の行使と一体となす行為であるかどうか、その判断につきましては大体四つぐらいの考慮事情を述べてきているわけでございまして、委員重々御承知と思いますが、要するに、戦闘活動が行われている、または行われようとしている地点と当該行動がなされる場所との地理的関係、当該行動等の具体的内容、他国の武力の行使の任に当たる者との関係の密接性、協力しようとする相手の活動の現況等の諸般の事情を総合的に勘案して、個々的に判断さるべきものである、そういう見解をとっております。
====

要件として、4点挙げられており、
・地理的関係(当該行動がなされる場所と戦闘活動の実施(予定)場所との)
・当該行動等の具体的内容
・他国の武力行使の任に当たる者との関係の密接性
・協力しようとする相手の活動の現況等
が武力行使と一体とみなされる行為であるかどうかが判断される、ということであろう。

補足としてコレ>衆院安保委 大森内閣法制局長官答弁(平成9年11月27日)

いわゆる一体化論についての直接の規定が憲法にあるわけではございません。しかしながら、憲法第9条では、御承知のように、はしょって申しますと、我が国は国際紛争を解決する手段としては、戦争、武力による威嚇または武力の行使は行ってはならないということを規定しているわけでございます。 そこで、・・・いわゆる一体化論と申しますのは、我が国に対する武力行使がない、武力攻撃がない場合におきまして、仮にみずからは直接武力の行使に当たる行動をしていないとしても、しないとしても、他のものが行う武力の行使への関与の密接性などから、我が国も武力の行使をしたという法的評価を受ける場合があり得る。そのような法的評価を受けるような形態の行為はやはり憲法九条において禁止せられるのである。したがって、どこに書かれているかというのは、憲法9条の裏といたしまして、憲法解釈の当然の事理としてそこから読み取れるのであるということでございます。
====


2)ISAFの位置づけ

こちらがよく判ります>国際治安支援部隊 - Wikipedia

(設立根拠を以下に引用)

国際治安支援部隊(ISAF)は、NATOによる活動を国連がオーソライズ(authorize:承認)したもの。設立は、2001年12月20日の安保理決議1386号により、国連憲章第7章の発動の下で行われる軍事的強制措置[3]、すなわち集団安全保障の実行措置として、憲章第43条の規定に基づいている。軍事的強制措置は、「安全保障理事会と加盟国の間の特別協定に従って提供される兵力・援助・便益」によって行われる。ISAFはこの措置に従い、2001年12月31日にアフガン暫定政府と軍事技術協定(Military Technical Agreement)[4]を結んでおり、この協定はアフガン正統政府の発足後、2003年12月9日に再び調印されている。

2007年9月19日の安保理決議1776号[5]及び延長前の1707号(2006年9月12日採択)[6] において、ISAF司令部に対し、「事務総長を通し安全保障理事会に対しその活動委任内容の履行状況について四半期ごとあるいは定期的な報告を行うことを要請する」という主旨の決定事項が決議本文に記載されているものの、いわゆる憲章6.5章に基づく正規の国連PKOではない。ISAFは、「国連安保理に派遣を承認された有志国連合軍」である。
=====

まとめますと、
・国連のオーソライズ
・安保理決議1386による
・国連憲章7章下の軍事的強制措置
・集団安全保障の実行措置として憲章43条規定に基づく
・国連PKOではなく有志国連合軍

ということである。前項③及び④からすると、43条の集団安全保障措置に基づく軍事的強制という性格を持つので、原則的には参加は違憲であると判断されうる。しかし、③の特別協定の具体的内容によって武力行使に該当するか否かの判断が行われるものであるとすれば、違憲ではない活動があるかもしれない。具体的には、復興ニーズ調査支援、麻薬対策支援、人道支援サポート等が部分的に可能であるかもしれない。ただその場合であっても、指揮系統が独立していること、武力行使と一体とならないこと、などが守られねばならないであろう。
言い換えると、例えば「多国籍軍が行っている活動のうち、人道支援サポート」に自衛隊が(参加ではなく)「協力する」という範囲でならば、武力行使と一体となるようなものでない限り、合憲ということになる可能性はあるかもしれない。


3)OEFの位置づけ

同じく>不朽の自由作戦 - Wikipedia

(法的根拠の一部引用)

不朽の自由作戦(OEF)は、国連の安保理決議によって認められた集団安全保障措置としての軍事行動ではない。OEFの法的根拠は、国連憲章第51条の規定に基づき、攻撃開始の当日である2001年10月7日に米英両国により安保理に提出された書簡にあるとされている。
(中略)
すなわち、国連憲章第51条の報告義務の規定に基づき、米国は「他の諸国とともに個別的又は集団的な固有の自衛の権利の行使として行動を開始した」[3]ことを、安保理に報告しているのである。したがって、OEFは国連では、米国及びその同盟国が個別的又は集団的自衛権の行使として行った「武力行使」であると認識(recognize)されている。
====

まとめますと、
・集団安全保障措置とは異なる(ISAFと違う)
・憲章51条規定に基づく個別的または集団的自衛権行使
・安保理決議1368に基づく

ということです(中には自衛権行使に該当しない、とする説もあるらしい)。
米国以外の参加国を含む集団的自衛権の行使であるとしても、武力行使であることには違いがなく、インド洋上での給油活動はこれに連なるOEF-MIOの一環として認識される。さらには米国の自衛権行使の要件としての、必要性、均衡性、時間性の全てについて議論の対象(=疑問が呈されているということ)となっているように見受けられ、このこと自体が日本が参加する場合に違憲という法的評価を受ける可能性はある。前項③の大森長官答弁にもあったように、「疑義がある限りはわが国としてこれをやってはいけない」という慎重な立場で見るべき問題なのである、ということは言えよう。


4)給油活動の違憲性について

OEF-MIOの一環として行われるインド洋上での給油活動は、憲法上で問題がないのかどうかを考えてみよう。これまでの政府見解等から、特に、⑤及び⑥の観点を中心に検討してみる。

まず、⑥の4要件について見る。
・地理的関係:
産経新聞社説に示された如く、日本のタンカーが航行している海域が海上テロ部隊の活動範囲と重なっている(笑)との認識が、一般国民(社説子は普通の国民であろう)に成立するほどであるので、給油活動の実施地域と海上テロ部隊の活動範囲とは「重複している」可能性はあるだろう。戦闘活動地域ではない場所でしか給油しない、としても、敵であるテロの船がどこに出現しどこで戦闘となるのか確定できないことから、給油地点が絶対に「戦闘活動地域とはならない」と断言できるような材料は存在しない。よって、給油活動を行う地域と戦闘活動の行われている地域の「地理的関係」は、近い関係にあるか重複地域である、という可能性は否定できず、「戦闘活動地域でない」とは断言できない。

・行為の具体性
軍艦への「補給業務」であると言える。液体燃料の補給である。

・関係の密接性
武力行使国である米国は、日本と唯一の同盟関係にあり、「緊密な」日米関係とか日米同盟と形容されるように、関係の密接性は明確である。他の参加国との関係では、密接かどうかは議論の余地があるかもしれないが、これまでの活動上では「緊密に連携」していたようであり(司令本部に人員配置が可能なほどの、笑)、そうした意味では密接性が高いと言えるのかもしれない。国と国との関係ではなく、行為の密接性を言うのかもしれないが、これは後述する。

・活動の現況
武力行使による対テロ作戦が行われている、と言える。日本はCTF150に補給活動を行っているが、CTF150は米海軍司令官の指揮下にあって、海上臨検とほぼ同様の行為が行われていると考えられる。
自衛隊が臨検行為を行うことが違憲か否かにはかつて議論がなされたが、原則的には9条違反に相当するとの判断から臨検行為を行うことは認められていない。即ち、自衛隊自身が行えば違憲性の認定可能性が高い行為について、当該部隊は現在の活動の中で行っていると考えられる。

これら要件に該当するかどうかは、議論の分かれる部分はあるものの(反論しようと思えばいくらでも可能だろう)、該当している可能性は高いであろう。
・集団的自衛権に基づく武力行使を米国を中心に行っている
・地理的に戦闘地域との明確な峻別はなされない
・補給業務にほかならない
・緊密な関係国である米国の指揮下にある
・臨検に該当する行為が行われている

実態としては、⑤の答弁で指摘されていた「一体となすような補給業務」が行われた、と言ってよいであろう。また、多くの指摘がある通りに、OEF自体が国連(安保理)にオーソライズされたものでないことは明らかであって、自衛権行使が「現時点において要件を満たしているかどうか」ということさえも疑問視される。

ここまでの検討結果では、「武力行使と一体的な補給業務であるとみなされるおそれが高い」、すなわち「他の者が行う武力行使の結果、日本の関与をみれば日本が同様に武力行使をしたとみなす」という法的評価は十分有り得るであろう。

◇◇◇◇◇◇


文字数オーバーにつき、次に続く…




続・本当に議論したと言えるのか~特措法のこと

2008年01月13日 13時12分44秒 | 政治って?
昨夜は眠ってしまい、できませんでした。失礼致しました。で、続きでございます。


インド洋から撤退したので、情報が入ってこなくなった、ということが理由として挙げられますが、これもとって付けたような理由でございます。殆どが嘘っぱちの「不利益」と考えてもよさそうです。

まず、日本の自衛隊は多国籍軍の指揮系統とは独立したものとなっています。本来的には連携協力することはあっても、多国籍軍の司令部とは直接的には繋がっていないのが建前ではないでしょうか。(日本からの)連絡調整用の人員をバーレーンに置けなくなったので情報が入らない、だから多大な不利益を蒙る、という論法かと思いますけれども、その情報を知ることは日本の外交・防衛上でどのような意味を持つものでありましょうか?どのような国益に繋がっていますか?答えられるなら言ってごらんなさいな。

どの艦がどの辺で行動中である、とか、どこら辺で補給をしてくれるとありがたい、とか、そういう局地的な情報は詳しく判るのかもしれませんね。でも、日本にとっては細々した戦術的情報をかき集めてみたところで、さしたる重要性はないと思われますが。例えば、米軍の~という艦は○○近辺で行動中、という話を知って、だからどうだと言うのでしょうか?まあ、○○海域ではテロ部隊の船が出現した、というような危険情報みたいなものは大事であると思いますけれども、そうした「公海上の危険情報」みたいなものは手に入れた方がよいでしょうね。通常であれば、パキスタンをはじめとする周辺関係国にいるであろう、日本の大使館員たちが情報を集めているはずであり、そういうのができていないとか、知らないということになれば、外務省や防衛省は一体何をやっているのか、って話だな。怠慢が明らかになっただけ、ってこと。

更に言えば、バーレーンの司令部って、実質的には米軍の基地なのではありませんか?(笑)行ってみたこともないし、報道なんかでもどこにあるとかは不明なんですけれども、バーレーンには米軍の第五艦隊基地があるのではないですかね?先日ブッシュがバーレーンを訪れた時、第五艦隊本部に行く予定という報道がありましたからね。MIOの司令部がどこにあるのか、というのは知りませんけれども、実質的に米軍基地にあるのであれば、ただ単に米軍からの情報を貰えなくなった、というだけの話なのではないですか?
これはただの「嫌がらせ」だろ(爆)。米軍が重要情報を「一切教えなくなった」ということなら、それは日本を軽視していることの裏返しであって、はっきり言えば「お前に教える必要はねえ」というのと一緒。現在のMIO司令官は米軍第五艦隊の中将らしいんですが、米軍経由でも「重要情報が入ってこない」というのなら、日本は今まで米軍との情報交換とか協力関係構築の為に何をやってきたのか、って話ですな。日本が大金はたいて思いやっても(笑)、大事な情報すらくれないような相手である、ということが明らかになっただけではないか。日本にとって唯一の同盟関係なのに、「1対1」関係の中でさえ大事なことを教えない、ということなら、日米同盟の重要性云々も相当怪しい、ってことだ。それとも、米軍関係筋から情報が入ってきているのであれば、現地の連絡員の有無にはあまり関係がない。バーレーンに人員を置けなくなったので情報が来ない、というのは、ニセの理由を言ってるだけ、ってことだ。

大体、本部に人員を送ることが日本にとって本当に重要なのであれば、ISAFに参加しているNATO軍にも人員を一桁だけ出している国はあるのだし、日本もそれにならって少数人員だけ派遣し後方支援に従事させるとかできるはずだろう。海上補給以外には業務がないわけでもあるまい?米軍が「口きき」するなら、司令部に人員を置くことが不可能であるはずもなく、それくらい協力してくれたとて米軍にばちが当たるわけでもあるまいに。つまり、そういうのを一切拒否されるとか、「お前は役に立たないから、どっか行け」と追い出されるというのは、日本を軽ろんじているのと当てになどされていない、ということがはっきりと判るだけだろう。これでもなお判らないというのは、相当の鈍感野郎だよね(笑)。


なので、情報が来なくなって困る、という理由には、かなり大袈裟なウソみたいな部分が含まれているのだろう、と思われるのだ。

・日本が知っても知らなくても、どっちでもいいという程度の「あまり重要ではない」情報が殆どである。
(=だから、司令部から人員を引き上げるし、米軍も細々と教えたりはしない)

・日本が知らないと国益を大きく損なうような重要情報を米軍が意図的に教えないのであれば、日米関係に信頼は築かれてこかなった、ということである。
(=米軍を頼ってもダメなのだから、日本だけが思いやる必要性はない)


で、他に何か「日本の国益」を大幅に損なうような理由は考えつきますか?(笑)
どうしても給油活動を行わねばならない理由とは、一体何でしょうか?
どうせ思いつかないなら、最初から正直に言えばいいのにね。
「みんな参加しているから、ウチだけ参加しないとは言えない、だから出すんだ」って。


もっともらしい理由を並べてウソをつくというのは、ありがちということなんですかね。しかもその意図というのが、(よく知らない)一般大衆を煙に巻き、騙そうとするのと同じなのだから、呆れるばかりである。心情的な肯定を誘う為に、高尚そうな言葉を並べたり、いかにもありそうな論を提示してみる、ということだろう。