続きです。
毎度で申し訳ないが、例で考えてみる。
今、目の前にブルー軍の戦車が1両ある。ガス欠になって動けない。
この場所で戦闘行為は行われていない。30km離れた隣村には、敵軍部隊がいることを知っている。
さて、この時、あなたがタンクローリーの持ち主で大量の燃料を持っているとする。
ブルー軍戦車の燃料を満タンに補給したら、隣村のレッド軍部隊と交戦できることは容易に想像できる。
戦車の搭乗員はあなたに次のように説明した。
「燃料補給という行為は交戦でもなく、あなたは加担したことにならない」
だから補給せよ、と言うのである。
詭弁だ、と思うことなく、本当に「加担したことにならない」と考えるであろうか?
自分が燃料補給を行えば、補給を受けた他の者が確実に戦闘に参加し、武力行使に該当する行為を行うであろうことが明白である時、補給と武力行使が一体的であると考えるのは当然なのではないか?ブルー軍戦車に燃料を入れるからこそ、その戦車は隣村まで行って戦闘を行うのであり、補給がなければそうした武力行使が行われることはなかったはずである。これは幇助みたいなものであり、共犯関係に近いのであり、実態として一連の「補給、進軍、戦闘」という行為に参加しているのと同じようなものである。たとえ意図が違うものであったとしても、補給を行えば戦闘に至ることは誰にでも判るのであって、武力行使と一体的でないという主張には無理があるだろう。
こんな極端な例ではどうか。
目の前にジェイソンがいる。
過去にジェイソンがチェーンソーで人を大量に殺してきたことを、あなたは知っている。
今、ジェイソンが持っているチェーンソーがガス欠となり、動かなくなりました。これにガソリンを補給するとチェーンソーは復活し、ジェイソンは人殺しを始めるかもしれません。
さて、ここでジェイソンは次のように言いました。
「ガソリンを補給しても、あなたがチェーンソーを動かすわけではない」
「ガソリンを補給する行為自体が誰かを殺すわけではない」
「だから、これは殺人には該当しないし、何の罪にもならない」
「大丈夫、違法ではないから、ガソリンを補給してくれ」
外形的にどんな屁理屈を付けようとも、実態としてはチェーンソーのガソリンを補給することは、チェーンソーで誰かが殺されるのを手伝ってるのと同じだと考えるだろう。ジェイソンがチェーンソーで殺戮を行う蓋然性が高いのに、これを「補給した行為は問題ない」とか「一体化ではないから罪はない」などと言えるのだろうか?
結局のところ、どんな詭弁を用いようとも、一体的な補給業務に該当すると考えるのが妥当であって、行為の関係の密接性は極めて高いのである。2つの例のように、戦車を駆動する、チェーンソーを駆動する、ということを可能にしてしまうのですからね。日本が直接的に武力行使を受けておらず、当事国ではないのに、わざわざ「武力行使」とみなされるような補給業務を行っているのである。
こんな議論もあるので、参考までに取り上げる。
>テロ・イラク特別委 宮崎内閣法制局第一部長答弁(平成16年3月3日)
安全確保支援活動というふうに法律で書いてあります、その支援対象であります米英軍の安全確保活動、具体的に申しますれば、国連加盟国が行うイラクの国内における安全及び安定を回復するための活動というふうに法律に書いてございますが、それには、今御指摘のように米英軍等による武力の行使、すなわち国際的な武力紛争の一環として行われるところの戦闘行為に該当する場合もありますし、また、それに該当しない純然たる治安維持活動、例えば純然たる盗賊団の掃討というようなこともあり得ると考えております。我が国の憲法上、このような米英軍等の活動に対しまして、それ自体は武力行使に当たりません医療、輸送等によって支援する場合に憲法上問題となりますのは、米英軍が今申し上げた前者に当たる行動をしている場合に限られるというふうに考えておりまして、後者に当たる行動につきましては、米英軍はさきに申し上げた意味での武力の行使を行っているわけではないので、これに対して我が国が医療、輸送等の支援をしたとしても、武力の行使との一体の問題というのは生じないとかねてから申し上げております。
====
ここで注意すべきは、
『我が国の憲法上、このような米英軍等の活動に対しまして、それ自体は武力行使に当たりません医療、輸送等によって支援する場合に憲法上問題となりますのは、米英軍が今申し上げた前者に当たる行動をしている場合に限られる』
との部分である。
大雑把にまとめると、
◎行為自体が武力行使に当たらない「医療や輸送等によって支援する場合」であっても、
→ア)武力行使(=国際的武力紛争の一環として行われる戦闘行為)に当たる行動をしている場合
→イ)純然たる盗賊団の掃討に当たる行動をしている場合
で解釈は異なる、ということである。憲法上問題となるのは、ア)の場合、ということが述べられている。
OEF-MIOの根拠は安保理1368に基づくものであり(集団的)自衛権行使による武力行使と主張しているのであれば、少なくとも多国籍海軍の行動がア)に該当すると認容しているものと考えられる。よって、行為自体が武力行使に該当しない医療や輸送等であっても憲法上問題となる、との見解が示されているものと考えられる。宮崎部長はこれを否定し、そうではなく、自衛隊が支援するのはイ)の行動についてのみである、だから違法性は問題とならない、ということを言っているのである。
しかし、イ)が事実であるとして、そうであれば、「テロとの戦い」という説明そのものがウソである。誤解を招くような語句を用いるのは、詐欺的である。たとえば、「盗賊、チンピラ、ヤクザ、マフィア、ならず者、等々」の掃討に自衛隊は支援します、と真実を言うべきであろう。「国際テロ組織が日本のタンカーを攻撃する」なんてことも真っ赤なニセモノで(爆)、「盗賊団やチンピラマフィアの一部がインド洋で日本のタンカーを狙っています」と正しく言うべきではないか?
因みに、盗賊団は数千トンクラスの大型船を持っているのかね?よく知らんけど。そんなドデカイ船を持っていたら、「超目立って」しょうがないんじゃないか?どこかに入港した途端に、直ぐに捕まりそうだけど(爆)。外洋で日本のタンカーを襲おうと企んでるくらいだから、小型船なわけないよね?タグボートとか漁船みたいに小さいということもないんだよね?数十万トンとかあるような巨大クジラ(=タンカー)に挑むからには、メダカとかサンマとかちっぽけな魚じゃ襲いかかれないもんね?まあ、産経新聞の主張を撃破したところで、こちらには何らのメリットもないから、別にいいんだけどさ。
結論的には、イラク派遣やインド洋派遣というのは、憲法違反に該当するであろう、と思われる。
憲法違反を回避するべく、非戦闘地域とかをひねり出し、要件に該当しないようにした。国民にはウソの説明を未だに続けている。そうまでしてどうしても派遣せざるを得なかった、という理由があるとすれば、その最大の理由とは「日本を米国から守る為」というだけであろう。きっと、そういうことだ。
毎度で申し訳ないが、例で考えてみる。
今、目の前にブルー軍の戦車が1両ある。ガス欠になって動けない。
この場所で戦闘行為は行われていない。30km離れた隣村には、敵軍部隊がいることを知っている。
さて、この時、あなたがタンクローリーの持ち主で大量の燃料を持っているとする。
ブルー軍戦車の燃料を満タンに補給したら、隣村のレッド軍部隊と交戦できることは容易に想像できる。
戦車の搭乗員はあなたに次のように説明した。
「燃料補給という行為は交戦でもなく、あなたは加担したことにならない」
だから補給せよ、と言うのである。
詭弁だ、と思うことなく、本当に「加担したことにならない」と考えるであろうか?
自分が燃料補給を行えば、補給を受けた他の者が確実に戦闘に参加し、武力行使に該当する行為を行うであろうことが明白である時、補給と武力行使が一体的であると考えるのは当然なのではないか?ブルー軍戦車に燃料を入れるからこそ、その戦車は隣村まで行って戦闘を行うのであり、補給がなければそうした武力行使が行われることはなかったはずである。これは幇助みたいなものであり、共犯関係に近いのであり、実態として一連の「補給、進軍、戦闘」という行為に参加しているのと同じようなものである。たとえ意図が違うものであったとしても、補給を行えば戦闘に至ることは誰にでも判るのであって、武力行使と一体的でないという主張には無理があるだろう。
こんな極端な例ではどうか。
目の前にジェイソンがいる。
過去にジェイソンがチェーンソーで人を大量に殺してきたことを、あなたは知っている。
今、ジェイソンが持っているチェーンソーがガス欠となり、動かなくなりました。これにガソリンを補給するとチェーンソーは復活し、ジェイソンは人殺しを始めるかもしれません。
さて、ここでジェイソンは次のように言いました。
「ガソリンを補給しても、あなたがチェーンソーを動かすわけではない」
「ガソリンを補給する行為自体が誰かを殺すわけではない」
「だから、これは殺人には該当しないし、何の罪にもならない」
「大丈夫、違法ではないから、ガソリンを補給してくれ」
外形的にどんな屁理屈を付けようとも、実態としてはチェーンソーのガソリンを補給することは、チェーンソーで誰かが殺されるのを手伝ってるのと同じだと考えるだろう。ジェイソンがチェーンソーで殺戮を行う蓋然性が高いのに、これを「補給した行為は問題ない」とか「一体化ではないから罪はない」などと言えるのだろうか?
結局のところ、どんな詭弁を用いようとも、一体的な補給業務に該当すると考えるのが妥当であって、行為の関係の密接性は極めて高いのである。2つの例のように、戦車を駆動する、チェーンソーを駆動する、ということを可能にしてしまうのですからね。日本が直接的に武力行使を受けておらず、当事国ではないのに、わざわざ「武力行使」とみなされるような補給業務を行っているのである。
こんな議論もあるので、参考までに取り上げる。
>テロ・イラク特別委 宮崎内閣法制局第一部長答弁(平成16年3月3日)
安全確保支援活動というふうに法律で書いてあります、その支援対象であります米英軍の安全確保活動、具体的に申しますれば、国連加盟国が行うイラクの国内における安全及び安定を回復するための活動というふうに法律に書いてございますが、それには、今御指摘のように米英軍等による武力の行使、すなわち国際的な武力紛争の一環として行われるところの戦闘行為に該当する場合もありますし、また、それに該当しない純然たる治安維持活動、例えば純然たる盗賊団の掃討というようなこともあり得ると考えております。我が国の憲法上、このような米英軍等の活動に対しまして、それ自体は武力行使に当たりません医療、輸送等によって支援する場合に憲法上問題となりますのは、米英軍が今申し上げた前者に当たる行動をしている場合に限られるというふうに考えておりまして、後者に当たる行動につきましては、米英軍はさきに申し上げた意味での武力の行使を行っているわけではないので、これに対して我が国が医療、輸送等の支援をしたとしても、武力の行使との一体の問題というのは生じないとかねてから申し上げております。
====
ここで注意すべきは、
『我が国の憲法上、このような米英軍等の活動に対しまして、それ自体は武力行使に当たりません医療、輸送等によって支援する場合に憲法上問題となりますのは、米英軍が今申し上げた前者に当たる行動をしている場合に限られる』
との部分である。
大雑把にまとめると、
◎行為自体が武力行使に当たらない「医療や輸送等によって支援する場合」であっても、
→ア)武力行使(=国際的武力紛争の一環として行われる戦闘行為)に当たる行動をしている場合
→イ)純然たる盗賊団の掃討に当たる行動をしている場合
で解釈は異なる、ということである。憲法上問題となるのは、ア)の場合、ということが述べられている。
OEF-MIOの根拠は安保理1368に基づくものであり(集団的)自衛権行使による武力行使と主張しているのであれば、少なくとも多国籍海軍の行動がア)に該当すると認容しているものと考えられる。よって、行為自体が武力行使に該当しない医療や輸送等であっても憲法上問題となる、との見解が示されているものと考えられる。宮崎部長はこれを否定し、そうではなく、自衛隊が支援するのはイ)の行動についてのみである、だから違法性は問題とならない、ということを言っているのである。
しかし、イ)が事実であるとして、そうであれば、「テロとの戦い」という説明そのものがウソである。誤解を招くような語句を用いるのは、詐欺的である。たとえば、「盗賊、チンピラ、ヤクザ、マフィア、ならず者、等々」の掃討に自衛隊は支援します、と真実を言うべきであろう。「国際テロ組織が日本のタンカーを攻撃する」なんてことも真っ赤なニセモノで(爆)、「盗賊団やチンピラマフィアの一部がインド洋で日本のタンカーを狙っています」と正しく言うべきではないか?
因みに、盗賊団は数千トンクラスの大型船を持っているのかね?よく知らんけど。そんなドデカイ船を持っていたら、「超目立って」しょうがないんじゃないか?どこかに入港した途端に、直ぐに捕まりそうだけど(爆)。外洋で日本のタンカーを襲おうと企んでるくらいだから、小型船なわけないよね?タグボートとか漁船みたいに小さいということもないんだよね?数十万トンとかあるような巨大クジラ(=タンカー)に挑むからには、メダカとかサンマとかちっぽけな魚じゃ襲いかかれないもんね?まあ、産経新聞の主張を撃破したところで、こちらには何らのメリットもないから、別にいいんだけどさ。
結論的には、イラク派遣やインド洋派遣というのは、憲法違反に該当するであろう、と思われる。
憲法違反を回避するべく、非戦闘地域とかをひねり出し、要件に該当しないようにした。国民にはウソの説明を未だに続けている。そうまでしてどうしても派遣せざるを得なかった、という理由があるとすれば、その最大の理由とは「日本を米国から守る為」というだけであろう。きっと、そういうことだ。