北畑次官の発言が話題となっていたが、個人のデイトレーダーなんて大した悪影響を持たない人たちが殆どであろう。それよりも巨悪が潜んでいるんだよ。
ここ最近の市場荒らしは目に余るものがある。特に、売り方の相場操縦ともいえる取引は、厳重に処罰されてしかるべきだろう。ここに、不正取引を厳しく取り締まるべく提案をしたい。
1)不正な取引
日頃の売買高がある程度読めていて、あまり大きな売買高のない銘柄であれば、仕掛けは可能です。特に、何かの売り材料が出るのではないか、という不安心理をつきやすいものなら、なおよしでしょうね。売買代金が資金量でカバーできる範囲であれば、仕掛けてくるでしょう。
売り主体が誰なのかは全く判りません。割と大きな資金を持っている個人なのか、匿名組合みたいなものの運用担当者なのか、ヘッジファンドなのか、複数の共謀なのか、全くの不明です。けれども、方法としては割と簡単でしょう。
まず、何が問題なのか、ということを考える為に、例から書いてみます。
小さな豆腐屋さんがあるとしましょう。一日生産量は10、価格は50円とします。日々市場に豆腐を売り出しています。そこに、巨大資本の食品メーカーがやってきて、豆腐屋を潰し利益を目論むものとします。まず、日々の市場では豆腐の需給が100くらいだとしますか。そこでメーカーは豆腐を40円で供給し、市場の需給をほぼ手中にしたとします。豆腐屋さんは50円で供給していたので、負けてしまいますよね。そこで、豆腐屋さんは努力して40円で供給を始めました。安売り競争です。すると、メーカーも30円で供給を始めたのです。メーカーはこれでは赤字水準になることが判っていましたが、支配してしまえば後の利益が大きいので30円で売るのです。豆腐屋さんも頑張って30円に挑戦しましたが、赤字が込んでいくので資金量が底をつくと負けが確定します。メーカーとの我慢比べでは、「資金量が大きい方が大抵は勝ってしまう」のです。
これは独占禁止法で禁止される行為だろうと思われますが、現在の株式市場における売買では、これに類する手法がまかり通っています。簡単に言えば「資金量が多い方が勝つ」ということです。資金量で圧倒する為に、売買高の少ない(=売買代金はたかが知れてる)銘柄を狙い打つということです。
売り方の狙い目はそこにあるのです。
2)どのような操縦方法か
簡単にいうと、
・とりあえず大量に売る
・大量の見せ玉を常時置く
・値が下がるので買いたがらない人が増える
・買い注文が出てもそれを上回る成行売りで消し飛ばす
・更に下がる
・察知した個人なども便乗し、売り方が圧倒的優勢となる
・損失を嫌い投売りしてくる人も出てくるので売られる
・もっと下がる
・損切りラインを設定してある個人の自動売りが発動する
・底が抜けたように下がる
・値下がりランキング上位となり売りに参加する人も出てくる
・買い方が買っても見せ玉があるので重しとなり、上がらなくなる
・一定幅の下げを確保できれば、チャート上で下げを記録できる
・これで買い手の参加を阻むことに成功し更に下げる材料とできる
要するに、上に書いたような資金量の大きいメーカーと弱小豆腐屋の我慢比べでは、勝敗は目に見えているというわけです。しかも、株の場合には便乗者がかなり現れるし、損切り自動プログラムの発動ラインを超えることに成功すれば、買っていた人たち自身が売り方に自動的に参加することになってしまうので、圧倒的有利な状況を人為的に作り出せるということです(なので、個人的には一度も損切りを自動設定したことはない、笑)。
これが本当に「自由な取引」「資本主義原理に基づく価格形成」などと言えるのか、という話です。経済学の教科書には、こうした悪意的取引を実行するような投資主体というのは、ほぼ出てこないのではないかと思われます。売りの売買高が完全な価格支配力を持つ場合、それは独占と同じような意味合いであり、不正取引以外の何ものでもありません。
これは数年前にも目にしたので書いたことがありますが、この手法を研究し踏襲しているとしか思われません(笑)。
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続・双日の謎
SESCに忠告しますが、全く監視能力に乏しいと言わざるを得ませんね。
この前にも目撃したので書いたんですが、その後対策として何かの発表さえもありませんし。JT株を調べるには時間がかかりますね、とかの間抜けなコメントだけだったよね、報道されたのは。
株主に人種は関係あるの?(笑)
また、05年に書いた記事(
チャンスか、罠か?株式相場)を読んだわけではないのかもしれませんが(笑)、偶然にもヒロセ電機でも同じ手法が取られていましたな。2月7日の取引ですよ。まあ私が保有していたわけではないので、ナンですが、あれですか、何かを狙っているとかですか?誰かに大損させようと、情報漏れ漏れとか?(笑)
7日の取引は、前場は普通だったが、午後一番で大量売りが発生し、まっ逆さまに落ちていきましたな。始値は10170円だったものが、午後には9060円まで急落してましたね。ストップ安寸前で止まった。板の買い注文が見えていたからでしょうけど。出来高は前日の約17.7万株から、約54万株と3倍になっていた。
この手法も全く同じ。で、翌日には値を戻すという、ワケのわからん取引が横行しているんですよ。
こうした株価操縦のような取引を放置しておくのは、国内市場を破壊するだけだ。健全な買い手も寄り付かなくなるし、断じて正常な株価形成なんかではない。SESCよ、この日のヒロセ電機株の売買について、証券会社に全取引の調査資料を提出させなさい。売買主体が誰なのか、捜査しなさい。こういう取引を放置するな。
3)取引規制も止むを得ない
そもそも、こうした取引が違法行為として処罰できるのか、という問題がある。そこで、条文を見てみる。
金融商品取引法
○第百五十七条
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等について、不正の手段、計画又は技巧をすること。
二 有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等について、重要な事項について虚偽の表示があり、又は誤解を生じさせないために必要な重要な事実の表示が欠けている文書その他の表示を使用して金銭その他の財産を取得すること。
三 有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等を誘引する目的をもつて、虚偽の相場を利用すること。
私が判断するなら、一号の「不正の手段、又は技巧」に該当するものと思う。が、これを立証するのは、中々難しいのかもしれない。更に、見せ玉だが、これは売買等を誘引する目的を持っているし、虚偽の相場利用に該当している。が、これも、実際の売買注文状況を監視していないと判らないであろう。SESCは能力不足なので、全く取り締まれないのである。何をやっているのか、とは思う。
また、159条の禁止行為には、上に書いたような操縦方法は入っていないので、該当していない。唯一適用できそうなのは、2項三号の『有価証券売買等を行うにつき、重要な事項について虚偽であり、又は誤解を生じさせるべき表示を故意にすること。』というのが、見せ玉に該当する可能性はあるが、実際売買が成立することもあるので、現実には摘発するのが難しい面もあるだろう。
そこで、161条の規定を使うのが、とりあえずの措置として有効ではないかと思うのである。
○第百六十一条
内閣総理大臣は、金融商品取引業者等若しくは取引所取引許可業者が自己の計算において行う有価証券の売買を制限し、又は金融商品取引業者等若しくは取引所取引許可業者の行う過当な数量の売買であつて取引所金融商品市場若しくは店頭売買有価証券市場の秩序を害すると認められるものを制限するため、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認める事項を内閣府令で定めることができる。
2 前項の規定は、市場デリバティブ取引及び店頭デリバティブ取引について準用する。
売買代金が数億円~数十億円可能な個人というのはほぼ存在していないと思われ、可能なのは、例のデイトレの人くらいだろう。ごく少数個人しか存在しないなら、それが重大な問題とはならない。それ以外は、ヘッジファンドや匿名組合みたいな主体や証券会社自身であろう。それら取引を制限するべきである。
この161条規定に該当する内閣府令は探したが見つからず、次条の161条の二に該当する内閣府令はあったので(ないとこの条文は効力を発揮できないもんね)、多分まだ制定されていないのではないかと思う。だって161条では「定めることができる」となっており、「内閣府令で別に定める」とかみたいなよくある言い回しとは違うもんね。
内閣府令で規制するなら、法律制定よりも簡単だろうと思いますし(所謂省令に相当するものと思いますので)、短期間で対応可能でしょう。
4)具体的規制方法
殆どの大口注文の場合には一括で売却されるので、気配値として注文成立まで時間が取られる。この方法以外で大量の売却を同一の主体が行うのを禁止すればよいだろう。
例えば、同一の主体が同じ日に過去5営業日の平均売買高の10%を超える株数を売買する場合には、一度に売買注文を出す以外注文は認めない、大量注文につき株数が充足するまで最低5分以上注文を表示する、等である。
自己計算取引の規制のみであるので、一般投資家からの売買注文が多くなっても問題ないし、従来の寄付等の大口注文は規制されないのでこれまで通り行える。問題になるのは、不正な操縦だ。投資家心理の脆弱性をついたり、投売りを誘うような手法である。
例えば、あるファンドが取引をする場合を考える。
過去5営業日の平均売買高が10万株、現在株価が1000円とする。本日の株価を見て、担当者は売却を考えたとする。売却株数は3万株であるとしよう。従来であれば、これを何度も分けて注文を出したり、引っ込めたり、好きな価格で自由に売ることが可能であった、と。しかし、規制後には、この日にどうしても3万株売却したいのであれば、「一括して注文」し、3万株の買いが集まるまでは黙って待っているしかない、ということだ。売って買い戻したいとしても、それも一度に売買注文を出せ、ということ。
運営主体が実質的に同一のファンドなんかがあるかもしれないので、そういうのが共謀して役割分担を行うことも可能であるので、ファンドが○○号とか別々の名前が付いているとしても、同一主体と見なす。
○○証券とか、××投資銀行とか、色々と分かれているかもしれないが、実体としては同じ会社組織であったりすると、「本日、~ファンドで大量の解約売りがある」などという内部情報を知っている人間は、存在しうる。そうした注文状況や内部情報を利用して、暴落を演出したりしてる連中は多分いるだろう。運用担当者同士が顔見知りとか、売買情報を漏らすことで便乗で仕掛ける連中がいる可能性があるかもしれない。そういうのはインサイダー的なのだが、立証にこぎ着けるのは中々難しい面があるだろう。なので、同一の主体と見なして売買規制をかけるしかないだろうな。
後は、事後的に注文・売買履歴の提出だ。不正な取引をあぶり出すのは、こうした記録を検証する必要がある。一般投資家の注文なんて別にどうってこともないが(滅多に市場に大きな影響を与えない)、自己計算取引部門は闇に包まれたままだからね。SESCにでも提出していただこう。時間のある人間が、各取引履歴をチェックするんだよ。不自然な株価変動のあった銘柄について、その日の全取引を徹底的に調べるのさ。くまなく見ていれば判るからね。取引の流れを大きく変えるのは、大口の売買であることが多いので、資金量が相当ある人間じゃなけりゃ、そんなことはできんから。数十億円も投入できる個人なんて、そうそういやしませんぜ(笑)。
内閣府令はそれほど制定が難しいわけではない。速やかに実行すべし。
消費者重視内閣なんでしょ?
不正取引を断じて許すな。