こんな記事を書くと、撃たれてしまうかもしれない。暗い夜道に気をつけよう(笑、冗談です)。
Bloombergcojp アジア
まず、公的資金返済は政府から口出しされない為、というのは当然であろう。
そして、資金調達も行うという合わせ技。
まさに歌詞にある通りに、「あの日、あの時、あの場所で」、だ。
ブルームバーグの記事中で、『インスティチューショナル・リスク・アナリティクスのマネジング・ディレクター、クリストファー・ウェーレン氏は「ゴールドマンにとって、資金調達のコストは年内で今が最も良いだろう」と述べ、「これから年末までは良い環境にはならないと思う」と語った。』と述べられている通りなのだ。
まさしく、ここしかない、というタイミングであったのだ。
巨額ボーナス決定権限を自身の手に奪い返す為の、渾身の一撃を放つには、この瞬間だけだった。
GSが最強なのは何故なのか、素人ながら考えてみた。
ご参考までに、これまでそういう世界を覗いたことは一度もなく、知り合いも勿論いない。判るのは、ニュースだけ。ブログを書き始める前までは、GSなんてあまりよく知らない名前であり、殆ど興味もなかった。何かで時々目にするくらい。しかし、ここ数年観察を続けてきた結果、彼らが何故ここまでの収益を上げられるのか、ということが、何となくではあるが、少し見えたように思えるのだ。
ビジネスモデルが素晴らしいとか、トレーディング技術が凄いとか、投資ノウハウの蓄積が凄いとか、そういう色んな面があるのだろうとは思うのだけれども、多分、それらは装飾であり本質ではないような気がする。そういった技術的なことは時間が経てば変化してゆくものであり、儲けの本質ではないように思える。
では、コア部分とは、一体何か?
基本的には、「人間の術」というか「人間の反応」を商売の種としているのではないか、というものである。それが、他の何処よりも巧みであり優れているのだろうと思う。
具体的には、どんなことか?
端的に言ってしまえば、「人間操作」の戦術だ。人間を操る、ということ。この仕掛けや作戦が飛び抜けているのである。ビジネスの前提として、「彼らはどう反応し、行動するか、どんな手を打ってくるか」ということをまず考えるのだ、ということだ。「彼ら」とは、GSから見た周囲の人々である。顧客なのか、同業他社なのか、ライバル会社なのか、その他大勢の投資家たちか、マスメディアか、政府役人か、他国の政治家か、それとも一般大衆か…等々決まってないし正確には判らないけれども、色々な場合があるであろう。そういうのをいかにして操作し、到達目標に辿り着くかというのをビジネスにしているのだろうと思う。
時には、自社のトレーダーたちとて、操作の一部でしかないかもしれない。巨額の成功報酬という、単純で判りやすい「釣り餌」というのは、まさしく「ぶら下げられたニンジン」なのだから。そうやって、人々を操作し支配する術を駆使することで、巨額の利益を稼ぎ出すのである。
こうした戦術は、社内に限らず、社外でも、またいかなる場所でも実践される。政治の場でも、日常的に行われる。そして、最も巧みな情報戦術は、他を出し抜くには十分過ぎる成果をもたらすのである。これらは、総合的に戦略として機能しているだろう。
ブランクフェルトCEOが他の金融機関のボーナスは「けしからん、米国民の怒りもごもっとも」という、まるで代弁者のように振る舞い、怒る人々の溜飲を下げるのに一役買ったであろうが、このセリフさえもが「次の一手」の布石でしかないのではないかと、私には見えたわけである。こうした「改悛の情」―日本の検察や裁判所では重要らしい―を示すのは、自らの有利な立場を確保したいが為であって、人間とは往々にしてそうなのだろうと思うのである。反省などしていないとしても、口で言うだけなら「タダ」なのだから。決して損をしない謝罪の表明や遺憾の意を示すことは、戦術の一部ではあっても心の底から反省しビジネスを改めるといったようなことではないはずだ。裏を返せば「他の金融機関は酷いですね、『税金投入を受けているのに』巨額ボーナスを取るなんて、まことにもってけしからん」ということで、だから『税金は返すべきだ』=先に返還する我々は正しい、ということを正当化しているわけである。
GSが賢いのは、常にこういうポジションを占めることなのである。それは人々の反応よりも先回りしているから、ということでもある。発信する言葉一つ一つ、或いは「発信すべき言葉」も、情報戦術の一環なのである。意味のない、無駄なアナウンスなど、「するはずがない」ということ。
戦略の思考のパターンは、個人的印象に過ぎないけれども、「詰め将棋」に近いものかもしれない。
そのコースに乗ると、必殺のチェックメイトが待ち受けているわけである。逃れる術はない。詰み手順がある限り、基本的には容赦などしてくれないからだ。時には大チョンボをしてしまい、うっかり詰み手順を逃してくれたり、見過ごしがあったりするかもしれないが、余程の長手数でもない限り、間違えることはかなり少ないだろう。こうした「詰みを見逃さない」という姿勢こそが、稼ぎの源泉なのだから。将棋の人工知能が詰み手順を間違ってはくれない、というのと似ている。
ゴールドマン・サックスの根幹となる戦略とは、「人々はどう動くか、どう反応するか」ということを深く正確に突き詰めてゆくことによって、いち早く先回りし「詰み手順」を完成させる、というようなものなのである。自分で決定したと思っている行動ですら、GSの読み筋の一部でしかないのだ。究極の人間探求・操作術と言ってもいいのではないだろうか。相手に行動を起こさせるには、自分が動くよりも難しいからね。
けれども、よく観察していれば、行動特性を知ることができるのだ。例えていえば、飛車か金のどちらかが助からない場合は、多くの人が「飛車を逃げる」みたいなものである。こういうのを積み重ね、相手が動かないなら「動きたくなるように仕向ける」ことさえやらねばならないのだ。そのための各ピースのはめ込みこそが、「詰め将棋」の手順みたいなものなのだ。意図的に捨て駒とか、まさしくそういった類のものだ。
儲けを企むライバルたちを出し抜くには、どのように行動すればいいのか、ということも勿論ある。荒稼ぎしようと目をぎらつかせているハイエナたちを相手にして、味方の1人に過ぎないというフリをしながら、素知らぬ顔で隣の知り合いのポケットから金を確実にむしり取る、くらいのことができなければ最強にはなれないであろう。同業者といえども容赦はしない。損をする連中が愚かなだけだからだ。詰みコースに乗ってることに自力で気付け、ということだろう。GSでは、気付けない人間は去れ、という世界なのかもしれない。
GSには無関係だが、ここで一つ、架空の適性試験を考えた。
君に兄がいるとしよう。
兄は経済的に破綻(破産)してしまうと、兄自身は破滅することがわかっているとする。さて、この時、弟である君が何に賭けるか、ということだ。
①兄が破産することに賭け、破産した場合に多額の報酬が貰える目に張る
②兄が破産するのは可哀想なので、兄に助言したり一部肩代わりを申し出る
迷わず①を選ぶことができなければならない。
たとえ兄が破滅しようとも、儲ける方を選ぶのだ、ということ。
最強の道は遠い。
どことなく雀士の世界のような、殺伐とした感じがするのである(笑)。
(ところで、この記事を書きかけにしていたが、gooのブックマークだけはブルームバーグの引用記事宛てに打ってあった。当方のブックマークはヨソの人にも判ってしまうのであろうか。多分、そういうことではないのだろうけれども、たまたまFTの記事に釘を刺すような記事が掲載されたらしいから、偶然とは面白い。)
Bloombergcojp アジア
まず、公的資金返済は政府から口出しされない為、というのは当然であろう。
そして、資金調達も行うという合わせ技。
まさに歌詞にある通りに、「あの日、あの時、あの場所で」、だ。
ブルームバーグの記事中で、『インスティチューショナル・リスク・アナリティクスのマネジング・ディレクター、クリストファー・ウェーレン氏は「ゴールドマンにとって、資金調達のコストは年内で今が最も良いだろう」と述べ、「これから年末までは良い環境にはならないと思う」と語った。』と述べられている通りなのだ。
まさしく、ここしかない、というタイミングであったのだ。
巨額ボーナス決定権限を自身の手に奪い返す為の、渾身の一撃を放つには、この瞬間だけだった。
GSが最強なのは何故なのか、素人ながら考えてみた。
ご参考までに、これまでそういう世界を覗いたことは一度もなく、知り合いも勿論いない。判るのは、ニュースだけ。ブログを書き始める前までは、GSなんてあまりよく知らない名前であり、殆ど興味もなかった。何かで時々目にするくらい。しかし、ここ数年観察を続けてきた結果、彼らが何故ここまでの収益を上げられるのか、ということが、何となくではあるが、少し見えたように思えるのだ。
ビジネスモデルが素晴らしいとか、トレーディング技術が凄いとか、投資ノウハウの蓄積が凄いとか、そういう色んな面があるのだろうとは思うのだけれども、多分、それらは装飾であり本質ではないような気がする。そういった技術的なことは時間が経てば変化してゆくものであり、儲けの本質ではないように思える。
では、コア部分とは、一体何か?
基本的には、「人間の術」というか「人間の反応」を商売の種としているのではないか、というものである。それが、他の何処よりも巧みであり優れているのだろうと思う。
具体的には、どんなことか?
端的に言ってしまえば、「人間操作」の戦術だ。人間を操る、ということ。この仕掛けや作戦が飛び抜けているのである。ビジネスの前提として、「彼らはどう反応し、行動するか、どんな手を打ってくるか」ということをまず考えるのだ、ということだ。「彼ら」とは、GSから見た周囲の人々である。顧客なのか、同業他社なのか、ライバル会社なのか、その他大勢の投資家たちか、マスメディアか、政府役人か、他国の政治家か、それとも一般大衆か…等々決まってないし正確には判らないけれども、色々な場合があるであろう。そういうのをいかにして操作し、到達目標に辿り着くかというのをビジネスにしているのだろうと思う。
時には、自社のトレーダーたちとて、操作の一部でしかないかもしれない。巨額の成功報酬という、単純で判りやすい「釣り餌」というのは、まさしく「ぶら下げられたニンジン」なのだから。そうやって、人々を操作し支配する術を駆使することで、巨額の利益を稼ぎ出すのである。
こうした戦術は、社内に限らず、社外でも、またいかなる場所でも実践される。政治の場でも、日常的に行われる。そして、最も巧みな情報戦術は、他を出し抜くには十分過ぎる成果をもたらすのである。これらは、総合的に戦略として機能しているだろう。
ブランクフェルトCEOが他の金融機関のボーナスは「けしからん、米国民の怒りもごもっとも」という、まるで代弁者のように振る舞い、怒る人々の溜飲を下げるのに一役買ったであろうが、このセリフさえもが「次の一手」の布石でしかないのではないかと、私には見えたわけである。こうした「改悛の情」―日本の検察や裁判所では重要らしい―を示すのは、自らの有利な立場を確保したいが為であって、人間とは往々にしてそうなのだろうと思うのである。反省などしていないとしても、口で言うだけなら「タダ」なのだから。決して損をしない謝罪の表明や遺憾の意を示すことは、戦術の一部ではあっても心の底から反省しビジネスを改めるといったようなことではないはずだ。裏を返せば「他の金融機関は酷いですね、『税金投入を受けているのに』巨額ボーナスを取るなんて、まことにもってけしからん」ということで、だから『税金は返すべきだ』=先に返還する我々は正しい、ということを正当化しているわけである。
GSが賢いのは、常にこういうポジションを占めることなのである。それは人々の反応よりも先回りしているから、ということでもある。発信する言葉一つ一つ、或いは「発信すべき言葉」も、情報戦術の一環なのである。意味のない、無駄なアナウンスなど、「するはずがない」ということ。
戦略の思考のパターンは、個人的印象に過ぎないけれども、「詰め将棋」に近いものかもしれない。
そのコースに乗ると、必殺のチェックメイトが待ち受けているわけである。逃れる術はない。詰み手順がある限り、基本的には容赦などしてくれないからだ。時には大チョンボをしてしまい、うっかり詰み手順を逃してくれたり、見過ごしがあったりするかもしれないが、余程の長手数でもない限り、間違えることはかなり少ないだろう。こうした「詰みを見逃さない」という姿勢こそが、稼ぎの源泉なのだから。将棋の人工知能が詰み手順を間違ってはくれない、というのと似ている。
ゴールドマン・サックスの根幹となる戦略とは、「人々はどう動くか、どう反応するか」ということを深く正確に突き詰めてゆくことによって、いち早く先回りし「詰み手順」を完成させる、というようなものなのである。自分で決定したと思っている行動ですら、GSの読み筋の一部でしかないのだ。究極の人間探求・操作術と言ってもいいのではないだろうか。相手に行動を起こさせるには、自分が動くよりも難しいからね。
けれども、よく観察していれば、行動特性を知ることができるのだ。例えていえば、飛車か金のどちらかが助からない場合は、多くの人が「飛車を逃げる」みたいなものである。こういうのを積み重ね、相手が動かないなら「動きたくなるように仕向ける」ことさえやらねばならないのだ。そのための各ピースのはめ込みこそが、「詰め将棋」の手順みたいなものなのだ。意図的に捨て駒とか、まさしくそういった類のものだ。
儲けを企むライバルたちを出し抜くには、どのように行動すればいいのか、ということも勿論ある。荒稼ぎしようと目をぎらつかせているハイエナたちを相手にして、味方の1人に過ぎないというフリをしながら、素知らぬ顔で隣の知り合いのポケットから金を確実にむしり取る、くらいのことができなければ最強にはなれないであろう。同業者といえども容赦はしない。損をする連中が愚かなだけだからだ。詰みコースに乗ってることに自力で気付け、ということだろう。GSでは、気付けない人間は去れ、という世界なのかもしれない。
GSには無関係だが、ここで一つ、架空の適性試験を考えた。
君に兄がいるとしよう。
兄は経済的に破綻(破産)してしまうと、兄自身は破滅することがわかっているとする。さて、この時、弟である君が何に賭けるか、ということだ。
①兄が破産することに賭け、破産した場合に多額の報酬が貰える目に張る
②兄が破産するのは可哀想なので、兄に助言したり一部肩代わりを申し出る
迷わず①を選ぶことができなければならない。
たとえ兄が破滅しようとも、儲ける方を選ぶのだ、ということ。
最強の道は遠い。
どことなく雀士の世界のような、殺伐とした感じがするのである(笑)。
(ところで、この記事を書きかけにしていたが、gooのブックマークだけはブルームバーグの引用記事宛てに打ってあった。当方のブックマークはヨソの人にも判ってしまうのであろうか。多分、そういうことではないのだろうけれども、たまたまFTの記事に釘を刺すような記事が掲載されたらしいから、偶然とは面白い。)