負う場合が有り得る、ということだそうです。
ボツネタ経由。
>平成20行ヒ177第二次納税義務告知処分取消請求事件
『国税の滞納者を含む共同相続人の間で成立した遺産分割協議が,滞納者である相続人にその相続分に満たない財産を取得させ,他の相続人にその相続分を超える財産を取得させるものであるときは,国税徴収法39条にいう第三者に利益を与える処分に当たり得るものと解するのが相当である。』
と判示されている。
いってみれば、法定相続の割合が正しく、遺産分割協議というのは形式的なものに過ぎないのであって、人為的にあるいは意図的に変更できてしまう分割協議は認めるわけにはいかない、ということでしょう。
参照条文を見てみる。
○国税徴収法 第三十九条
滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定納期限の一年前の日以後に、滞納者がその財産につき行つた政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、債務の免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免かれた者は、これらの処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞納者の親族その他の特殊関係者であるときは、これらの処分により受けた利益の限度)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。
確かに、第二次納税義務を負うというのは書かれていますね。
遺産分割協議の「第三者に利益を与える処分」の該当性について、最高裁は肯定したものでしょう。判決中の『そもそも同条の規定によれば,滞納者に詐害の意思のあることは同条所定の第二次納税義務の成立要件ではないというべき』というのも、条文を読む限りは詐害意思の有無というのが成立要件とはなっていないでしょう。
ただ判決では『前記事実関係によれば,Aに詐害の意思のあったことは明らかである』といきなりの断定となっており、事実関係だけ読んでも詐害意思の有無が立証されるかどうかなんて、到底わかるものではないように思えますが、詐害意思はあったというのが最高裁判事のモノの見方ということらしいです(笑)。推定有罪、みたいなもんですか。
最高裁の論理では、「39条成立要件は詐害意思の有無は関係ないよ」、だけど、仮に「詐害意思の有無という点を見たって、詐害意思があったことは明白」と、外見上だけで完全に詐害意思を認定しているようですね。そんな証拠が提示されたのかどうかは、高裁判決がないので判らないんですがね。
ところで、第三者に利益を与える処分というのは、民法上でいう贈与と何か異なるのでしょうか?
ちょっとよく判らないんですが。
○民法 第五百四十九条
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
最高裁の言うように、第三者に利益を与える処分であるというのであれば、これは贈与ということになってしまうのではないか?法定相続分を超える部分というのは、その権利を主張しない側から利益を受けた側への無償譲渡(利益を与える処分)ということになり、贈与との違いはないように思われるのだが。そうすると、相続の遺産分割協議というのは、法定相続を超える部分は全て贈与ということになってしまうのか?
ある人物Xがいたとしよう。Xの配偶者Yは、滞納者(Yの滞納額は6000万円とする)。両者の子に、Z1とZ2の二人がいる。
いま、Xが死亡して相続財産が1億円あるとしよう。法定相続では、配偶者Yには半分の5000万円、Z1とZ2には、4分の1の2500万円ということになる。しかし、遺産分割協議により、Yが1000万円だけ相続し、Z1に6500万円、Z2には2500万円だったとすると、本来Yが主張できたであろう4000万円部分はYからZ1への利益を与える処分、すなわち無償譲渡ということに他ならず、これは贈与ということにならないのか、ということである。これまでに、こうした遺産分割協議において、法定相続を超える部分について常時「贈与」を認定してきているということであれば、これは当然の見解ということになろうかと思うが、すると毎回毎回贈与税を取られるということなのか。負担付贈与の一種なのだろうか?ちょっとよく判らない。
当事者というのは、配偶者Yと国税庁(局?)である。第三者は、Z1だ。
本来相続できるであろう、それとも、権利主張するべきところこれを放棄し、第三者に無償譲渡するなら、それは第二次納税義務を負うということで、おそらく最高裁及び国税の立場とすれば、もし遺産分割について不服がある時にはZ1がYに請求せよ、ということなのだろう。つまり、納税はZ1が負うことになるが、Yが相続できたであろう4000万円については国税が持っていくので、その支払はまずZ1がやっておいて、遺産分割を協議のとおりにせよということを求めるのであればZ1がYにその請求をせよ、ということですな。
もしも、第二次納税義務の適用を認めないとすると、かなり大きな抜け道を作ることになりかねないから、というのがあるのだろう。滞納税額分を子の世代に確実に残せる、という方法になってしまうからである(笑)。
でも、似たような仕組みを思いついたけど。この事件は、無償譲渡だったからダメだったんだろうから、違う方法がありそうな気がしてきたよ。
滞納者甲がいるとしよう。5億円滞納。
この5億円を使って、金目のものを買う。とりあえず絵画とか、貴金属などでもよいだろう。
甲は国税当局の差押えを逃れる為に、息子の乙と金銭消費貸借契約を締結。仮に100万円としよう。この担保として、先の絵画なり貴金属なりを設定するのである。契約書に書いてあれば、多分これは通用するのではないか。
で、この貸借関係を意図的に不履行というか、意図しているかどうかは外見的には確かめる方法はないので、返済期限までにこの100万円を返済しない(できなかった)という事実を成立させるのである。すると、乙は契約書の債権回収条項に基づいて、担保を頂戴するということが可能なのである。こうすれば、5億円相当の財産が甲の所有から乙へと移動することになる。この移動した担保について、国税庁が果たして第二次納税義務を負わせることが可能なのか、ということである。
はじめから契約上で債務不履行の場合には担保物権を甲に返還しない、という条項にしておいて、完全に所有権が移転することを謳っておけば担保の売却価値がいくらかというのは関係がなくなるのでは。乙はあくまで債務不履行の場合の契約に基づいて担保をもらうよ、ということになっているから、無償譲渡ではないはずである。著しく低い価額という点についても、担保であれば除外されるであろう。
まあ、貧乏人であるボクがこんな手口をあれこれ考える必要性はないけれども(笑)、きっと賢い人たちは大勢いるから、合法的脱税を考え抜いてきているはずだろうね。それでも国税が色々な不正蓄財を封じてきたであろうから、多分、何らかの防御法があるんだろう。
ボツネタ経由。
>平成20行ヒ177第二次納税義務告知処分取消請求事件
『国税の滞納者を含む共同相続人の間で成立した遺産分割協議が,滞納者である相続人にその相続分に満たない財産を取得させ,他の相続人にその相続分を超える財産を取得させるものであるときは,国税徴収法39条にいう第三者に利益を与える処分に当たり得るものと解するのが相当である。』
と判示されている。
いってみれば、法定相続の割合が正しく、遺産分割協議というのは形式的なものに過ぎないのであって、人為的にあるいは意図的に変更できてしまう分割協議は認めるわけにはいかない、ということでしょう。
参照条文を見てみる。
○国税徴収法 第三十九条
滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定納期限の一年前の日以後に、滞納者がその財産につき行つた政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、債務の免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免かれた者は、これらの処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞納者の親族その他の特殊関係者であるときは、これらの処分により受けた利益の限度)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。
確かに、第二次納税義務を負うというのは書かれていますね。
遺産分割協議の「第三者に利益を与える処分」の該当性について、最高裁は肯定したものでしょう。判決中の『そもそも同条の規定によれば,滞納者に詐害の意思のあることは同条所定の第二次納税義務の成立要件ではないというべき』というのも、条文を読む限りは詐害意思の有無というのが成立要件とはなっていないでしょう。
ただ判決では『前記事実関係によれば,Aに詐害の意思のあったことは明らかである』といきなりの断定となっており、事実関係だけ読んでも詐害意思の有無が立証されるかどうかなんて、到底わかるものではないように思えますが、詐害意思はあったというのが最高裁判事のモノの見方ということらしいです(笑)。推定有罪、みたいなもんですか。
最高裁の論理では、「39条成立要件は詐害意思の有無は関係ないよ」、だけど、仮に「詐害意思の有無という点を見たって、詐害意思があったことは明白」と、外見上だけで完全に詐害意思を認定しているようですね。そんな証拠が提示されたのかどうかは、高裁判決がないので判らないんですがね。
ところで、第三者に利益を与える処分というのは、民法上でいう贈与と何か異なるのでしょうか?
ちょっとよく判らないんですが。
○民法 第五百四十九条
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
最高裁の言うように、第三者に利益を与える処分であるというのであれば、これは贈与ということになってしまうのではないか?法定相続分を超える部分というのは、その権利を主張しない側から利益を受けた側への無償譲渡(利益を与える処分)ということになり、贈与との違いはないように思われるのだが。そうすると、相続の遺産分割協議というのは、法定相続を超える部分は全て贈与ということになってしまうのか?
ある人物Xがいたとしよう。Xの配偶者Yは、滞納者(Yの滞納額は6000万円とする)。両者の子に、Z1とZ2の二人がいる。
いま、Xが死亡して相続財産が1億円あるとしよう。法定相続では、配偶者Yには半分の5000万円、Z1とZ2には、4分の1の2500万円ということになる。しかし、遺産分割協議により、Yが1000万円だけ相続し、Z1に6500万円、Z2には2500万円だったとすると、本来Yが主張できたであろう4000万円部分はYからZ1への利益を与える処分、すなわち無償譲渡ということに他ならず、これは贈与ということにならないのか、ということである。これまでに、こうした遺産分割協議において、法定相続を超える部分について常時「贈与」を認定してきているということであれば、これは当然の見解ということになろうかと思うが、すると毎回毎回贈与税を取られるということなのか。負担付贈与の一種なのだろうか?ちょっとよく判らない。
当事者というのは、配偶者Yと国税庁(局?)である。第三者は、Z1だ。
本来相続できるであろう、それとも、権利主張するべきところこれを放棄し、第三者に無償譲渡するなら、それは第二次納税義務を負うということで、おそらく最高裁及び国税の立場とすれば、もし遺産分割について不服がある時にはZ1がYに請求せよ、ということなのだろう。つまり、納税はZ1が負うことになるが、Yが相続できたであろう4000万円については国税が持っていくので、その支払はまずZ1がやっておいて、遺産分割を協議のとおりにせよということを求めるのであればZ1がYにその請求をせよ、ということですな。
もしも、第二次納税義務の適用を認めないとすると、かなり大きな抜け道を作ることになりかねないから、というのがあるのだろう。滞納税額分を子の世代に確実に残せる、という方法になってしまうからである(笑)。
でも、似たような仕組みを思いついたけど。この事件は、無償譲渡だったからダメだったんだろうから、違う方法がありそうな気がしてきたよ。
滞納者甲がいるとしよう。5億円滞納。
この5億円を使って、金目のものを買う。とりあえず絵画とか、貴金属などでもよいだろう。
甲は国税当局の差押えを逃れる為に、息子の乙と金銭消費貸借契約を締結。仮に100万円としよう。この担保として、先の絵画なり貴金属なりを設定するのである。契約書に書いてあれば、多分これは通用するのではないか。
で、この貸借関係を意図的に不履行というか、意図しているかどうかは外見的には確かめる方法はないので、返済期限までにこの100万円を返済しない(できなかった)という事実を成立させるのである。すると、乙は契約書の債権回収条項に基づいて、担保を頂戴するということが可能なのである。こうすれば、5億円相当の財産が甲の所有から乙へと移動することになる。この移動した担保について、国税庁が果たして第二次納税義務を負わせることが可能なのか、ということである。
はじめから契約上で債務不履行の場合には担保物権を甲に返還しない、という条項にしておいて、完全に所有権が移転することを謳っておけば担保の売却価値がいくらかというのは関係がなくなるのでは。乙はあくまで債務不履行の場合の契約に基づいて担保をもらうよ、ということになっているから、無償譲渡ではないはずである。著しく低い価額という点についても、担保であれば除外されるであろう。
まあ、貧乏人であるボクがこんな手口をあれこれ考える必要性はないけれども(笑)、きっと賢い人たちは大勢いるから、合法的脱税を考え抜いてきているはずだろうね。それでも国税が色々な不正蓄財を封じてきたであろうから、多分、何らかの防御法があるんだろう。