海外脱出(PART 1 OF 4)
海外脱出する覚悟
2009年11月24日12時08分
若者の海外流出がちょっとした話題になっている。
まあ、したくなる気持ちはよくわかる。
もはや手に負えない少子高齢化、にも関わらず消費税導入に反対する頭がアレな人達、進まない規制緩和…こんな日本からすると、シンガポールなんて天国に見える。
実際、僕の知っている中でも出て行った人は結構多い。
ただ、よく見ていくと、流出といってもいくつかパターンがある。
1) キャリア的にゴールしてしまって、
海外へ拠点を移すケース。
起業等で資産とキャリアを築いた人に多い。年の半分をハワイで暮らしている本田直之氏などが代表だろう。理由は人それぞれだろうが、少なくとも各人がその国に何らかの魅力を感じているのは事実だ。
2) 働く場として、海外を選んだケース
香港や上海、台湾といった国に転職するエンジニアや金融マンが増えている。
拙著「アウトサイダーの時代」にも登場した人は、昨年上海で起業した。
日本人が好むと好まざるに関わらず、東アジアのホワイトカラー層では、横断的な労働市場が出来つつある。
ただ、ここで重要なのは、1、2番とも、別に日本との関係が切れたわけではないということ。日本人向けのビジネスが中心だったり、国内にも拠点があったりという風に、関わりは残っている。なにより、実家や親戚、友人がいるわけで、そういう意味ではやっぱり日本人である。
脱出とか流出というと、なんだか絶縁したような印象を持つが、そんなゴルゴ13みたいな人は僕は知らない。
なので、上記のような人たちは、もちろんキャリアのためにものすごく努力しているのだけど、たいていは人並み以上の視座の高さも合わせ持っている。
よく「政治の話なんて興味ない、そんなこと考えたって得にならない」というようなことを言う人がいる。
なるほど、「個人として生きる」という意味で、それもまた一つの価値観だろう。
ただ、そういう人は上記のような人たち以上の努力をしつつ、いろいろなしがらみを絶つ覚悟があるのだろうか。
実は、自分の目の前のことしか考えないという姿勢は、長期的にはとてもリスクの高い生き方だと思う。
僕にはとてもそんな勇気は無いので、これからも大きな話をし続けるつもりだ。
出典: Joe's Labo
デンマンさん。。。今日は海外脱出の勧(すす)めでござ~♪~ますか?
いや。。。特に海外脱出を勧めるわけではありません。
でも、わざわざ『海外脱出』というタイトルまで書いているではござ~♪~ませんか?
あのねぇ~、海外脱出なんて今に始まった事ではないのですよう!
。。。んで、いつ頃から始まったのでござ~♪~ますか?
やだなあああァ~。。。卑弥子さんは『小百合物語』のホステス役を務めているのですよう。。。
そうですわァ。。。デンマンさんに言われなくても、そのつもりでござ~♪~ますわよう。
だったら、小百合さんも、ずっと以前に海外に脱出したことを知っているでしょうにィ~。。。
あ~♪~らァ~。。。そうでしたのォ~?
あ~♪~らァ~じゃありませんよう!卑弥子さんだって次の小文を何度も読んだでしょう!?
(13年間)バーナビーで夏休みを過ごすことは 毎年私の支えの時間でした。
あの古い家は、夏休みで休むというより
ペンキ、芝のクローバむしり、
りんごの木の手入れ、
玄関まで高く長い階段のペンキはがしや、
しばらくみがかないガラス、
シミだらけのじゅうたん、
BASEMENTはランドリーのホコリとくもの巣、
行けば、掃除ばかりの家に大変でしたが
また戻りたいと思っていました。
『La Campanella (2009年11月27日)』より
確かに、何度も読ませられましたわよう!
だったら、小百合さんも15年ほど前にカナダにやって来た事を卑弥子さんだって知っているじゃありませんかア!
でも。。。、でも。。。、小百合さんはカナダに永住を決意したわけではござ~♪~ませんわ。
上に引用した記事でも海外に永住しようと勧めているわけではないのですよう。仕事で海外に脱出する事を書いている。でもねぇ、海外に脱出する目的は、何も仕事に限った事ではないのですよう。
仕事以外に何がありますの?
だから、小百合さんは書いているでしょう!
デンマンさんは、私がレンゲさんのような
ロマンチックな女だと期待しているようですが、
私は、そのような女っぽい女ではないのですゥ。
主人は私のことを「中性脂肪」だと言います。
つまり、女っぽくない脂肪の塊だと。。。
『夢とロマンの軽井沢 (2008年7月19日)』より
小百合さんは夫から「中性脂肪」と言われて悲観していたのですよう。
。。。んで、自殺なさろうとしたのでござ~♪~ますか?
あのねぇ、小百合さんは自殺するような弱々しい女性ではないのですよう。もし、小百合さんが自殺していたら、僕との再会もなかったのですからね。。。
つまり、小百合さんは夫の言ったことを半分は聞き流していたのでござ~♪~ますか?
そうですよう。。。旦那さんが言ったことを半分だけ受け止めていたのですよう。
どうしてデンマンさんに、そのような事が分かるのでござ~♪~ますか?
小百合さんは、「中性脂肪」だと言われてちょっと悲観した。それで、夏の期間、夫と離れてバーナビーの“山の家”で過ごしながら、家事をやり、子育てをして自分にだって“女らしいことができる事”を行動して自分で確かめたかったのですよう。
つまり、バーナビーの“山の家”で過ごす事は、小百合さんにとって“(心の)支えの時間”だったと言っている訳なのでござ~♪~ますか?
そうですよう。小百合さんは“心の支え”を見い出すために海外に脱出したのですよう。
分かりましたわ。。。んで、デンマンさんは何のために海外へ脱出したのでござ~♪~ますか?
あのねぇ~、このブログの1ページや2ページでは語りつくせないほど長いストーリーなのですよう。
それを、かいつまんでお話になる訳にはゆかないのでござ~♪~ますか?
あのねぇ、僕の話よりも夏目漱石の話の方が面白いですよう。
夏目漱石先生も海外脱出したのでござ~♪~ますか?
夏目漱石の場合には当時の文部省から海外留学を命ぜられたのですよう。でもねぇ~、夏目漱石はその留学体験を通して“海外脱出”の重要性を理解する事ができた。
どのようにでござ~♪~ますか?
興味深い文章を引用したから読んでみてくださいね。
本当の自分を持つ
「真に目覚める日本」とは、個人におきかえれば「本当の自分」を自覚することになる。
いわば「坊っちゃん」のように、内面と外面が一致する偽善のない姿を意味するのだろう。
これを問うことが漱石の文学的主題にもなったが、一方で、つねに自分の内面に問い続ける、資質的で内面的な視線を強化することにもなった。
また漱石は、その主題を「個人主義の確立」という公共社会的な課題にして、本当に「中身」のある近代を視野に入れようとした。
(中略)
ともあれ漱石は、日露戦争直前の、明治国家が世界における存亡を強く意識して極度に緊張した時期に留学したのである。
自己肥大どころか、自分は、日本は、貧弱な猿真似をしているに過ぎないのではないか、という意識を心に抱いて帰った。
そのことが、以後の日本の自己肥大化から距離をおいた文明論的な場所を漱石に与えたともいえる。
(中略)
「国家は大切かもしれないが、そう朝から晩まで国家国家といってあたかも国家に取り付かれたような真似はとうてい我々にできる話ではない。(略)
事実出来ないことをあたかも国家のためにするごとく装うのは偽りである。(略)
国家的道徳というものは個人的道徳に比べると、ずっと段の低いもののように見えることです。
元来国と国とは辞令はいくらやかましくっても、徳義心はそんなにありゃしません。
詐欺をやる。誤魔化しをやる、ペテンにかける、滅茶苦茶なものであります。」
(夏目漱石 『私の個人主義』 135-137ページ所収)
見事な指摘である。これを漱石は、日露戦争(1904-1905年)および第一次世界大戦(1914-1918年)の戦勝国となった日本で語っている。
国家と個人、国家と国家の関係において、この言葉は今でも説得力を持つ。
日本は、そののち「朝から晩まで国家国家」といわねばならない、「出来ない事」をできるといいはる国になり、「徳義」もないくせに「徳義」ヅラして(この点は欧米だって同じだが)、そして手ひどく(太平洋戦争で)負けた。
漱石の文明論的な視点は、そのあたりまで届いていた。
131-134ページ 『漱石の孫』 著者・夏目房之介
2003年4月22日 初版第一刷発行
発行所・株式会社 実業之日本社
『夏目漱石と成りすまし馬鹿 (2009年8月11日)』に掲載。
『坊っちゃんと熊谷 (2009年8月29日)』にも掲載。
(すぐ下のページへ続く)