自由という誘惑 (PART 1)
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デンマンさん。。。 “自由という誘惑”ってぇ、なんだか悩ましいタイトルですわねぇ~。。。
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ジューンさんもなんとなくワクワクするでしょう!?
今日は『万夜一夜の謎』の続きですか?
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■『万夜一夜の謎』
いや。。。 『万夜一夜の謎』とは関係ありません。
でも、タイトルから受けるイメージは、なんとなくアラビアンナイトを想わせますよねぇ~。。。
ジューンさんが、タイトルからどのようなイメージを受け取るのか?。。。 それはジューンさんの全く自由だけれど、僕がタイトルを考え付いたのは、実は夕べ、バンクーバー市立図書館で借りていた本を読んでいたら次の箇所に出くわしたからなのですよ。
画家の遊び空間
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何が楽しいかというと、絵の中に埋もれた画家たちの私小説が読めるのである。
タッチの表現を封じられた時代の画家たちのタッチが見える。 (略)
絵を描く筆触(タッチ)は画家の存在証明である。
絵を鑑賞する裁判官はタッチなどではなくそのテーマによって判決を下そうとするが、画家には絵のタッチがアリバイである。
アリバイとは岩波国語辞典によると「犯罪が行われた時、その現場以外の所に居たという証明。現場不在証明」とある。
この「犯罪」を「テーマ」という言葉に置き換えると見えてくるのだ。
もちろんその絵はすべてその画家が描いた。
画家はその絵の中心にあるテーマを描き上げることに奉仕している。
絵の隅にはサインもあるし、証拠は挙がっているのだ。
とはいうものの、いっぽうそのころ、画家はその絵のテーマの外にもいて、絵の中の部屋の隅、机の下、窓の外、窓の外の森、森の向こうの山並み、青空、白い雲など、絵筆があちこち遊び回っていることも事実である。 (略)
このころの絵のテーマというのはだいたいにおいて人物である。
肖像的要素をもつものがほとんどである。
その場合人物の中心は顔である。
その顔の中心といえば2つの目と1つの口を結ぶ三角地帯で、そのまた中心をあえていえば鼻の先であろう。
つまり、一枚の肖像画があり、その中心は鼻の先にあるのだ。
そこがテーマの頂点であり、画家のタッチのもっとも禁じられている場所である。
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だから、鼻の先、2つの目、その間の眉間、唇、頬、といった顔面中心部は、絵の中でもっともツルツルに仕上げられている。
もちろん絵筆で描いているのでタッチがないわけではないが、そのタッチが綿密に押し詰められて、点がぎっしり並んで面になるという感じで、タッチの凹凸がそこでは完全に埋没してツルツルになっているのである。
そしてそのタッチ厳禁の場所を離れるに従って、タッチの並びは水面下でゆるやかになり、ちょうど魚の背鰭が水面からときどきのぞくみたいに、ほんのりとタッチが顔を出すようになる。
そしてさらに顔面を離れ、人物を離れ、部屋の床や壁や窓の外の風景などに行くと、タッチはピュン、ピュンと飛びはじめてくるのだ。 (略)
顔面中心の目と鼻の先の近辺だけは、とりあえずツルツルに描くことに留意している。
その中心部ではタッチを殺しながら、そこを離れた周辺部ではタッチが嬉しそうに飛び跳ねている。
画家はそこで遊んでいるのだ。
絵の中心部では重々しい受難のキリスト像が、あるいは威厳ある顔つきの実力者像が、タッチを押し殺して出来上がろうとしている。
いっぽうそのころ、そこを離れた窓の外の風景の森の葉っぱで、画家の筆先はテーマの重力を脱したかのように、すいすいと軽やかに跳ね回り、遊び回っている。
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(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)
96-99ページ 『ルーヴル美術館の楽しみ方』
著者: 赤瀬川原平 熊瀬川紀
1997年2月20日 第11刷発行
発行所: 株式会社 新潮社
上の文章を読みながら 僕はすぐにレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた“モナリザ”の絵を思い浮かべたのですよ。
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このモナリザの絵がどうだとデンマンさんは言うのですか?
背景に注目してください。
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上の絵からモナリザ女史を取り除くと次のようになる。
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上の絵を見ると、なんとなく中国の水墨画と似ていると思いませんか?
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言われてみると、確かに絵の雰囲気が水墨画に似ていますわねぇ~。。。
ジューンさんは忘れてしまったかもしれないけれど、この事についてはかつてジューンさんと語り合ったことがあるのですよ。。。 ジューンさんが思い出すように、その時の記事をここに書き出すから改めて読んでみてください。
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モナリザの妹
あらっ。。。 モナリザのモデルの女性が中国人だったと言うのですか?
そうなのですよ。。。 香港をベースに活動しているイタリア人の歴史家兼小説家が、そういうような事を言い始めたのです。
でも。。。、あのモナリザは、どう見ても中国人のようには見えませんわァ~。。。
だから、そこですよ。。。 つまり、見る人によれば、中国人にも見えるのですよ。
そうかしらァ~。。。?
あのねぇ~、背景の風景が中国の風景だと書いてある。。。 確かに、言われてみると、中国の水墨画のようにも見えるのですよ。 モナリザだってぇ、見方によれば、中国人の血が混ざっていて、どこかに東洋系の面影があるようにも見える。
そうかしらァ~。。。?
ジューンさんも、そう思って もう一度じっくりと見てくださいよ。。。
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やっぱり、モナリザに中国人の血が混ざっているようには見えませんわァ。
ジューンさんは、しっかりと見ないからですよう。。。 中国人の血が混ざっているようだなァ~、と思いながら見れば、次のように見えるのです。
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デンマンさんが中国人の女性の顔を貼り付けたというのが見え見えですわァ。
あのねぇ~、ジューンさん。。。 神経の集中力が足りないのです。。。 もし、ジューンさんの祖先がレオナルド・ダ・ヴィンチに出会っていたら、レオナルドはジューンさんの祖先をモナリザとして描いていたのですよ。
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つまり、レオナルドは、その時にオツムに印象的に浮かんだ女性を描いたと言うことですかァ~?
その通りですよ。 レオナルドは、モナリザを描く時に自分の母親を描きたかったのです。
。。。で、レオナルドはお母さんをモデルにしたのですか?
いや。。。 レオンナルドはモデルを使わなかったのです。
どうして、モナリザを描く時にモデルを使わなかったのですか?
あのねぇ~、その事については、僕はすでに2002年に記事を書いたのです。 重複するので、ジューンさんも次の記事を読んでみてください。
『モナリザの妹』より
(2015年12月19日)
“モナリザ”を書いた当時、レオナルドが中国から伝わった水墨画を見る機会があった、とデンマンさんは考えているのですか?
当然、その機会があったはずなのです。。。 なぜなら、レオナルドが“モナリザ”を描いたのは1503年から1506年の間だと考えられている。。。 マルコポーロが亡くなったのが1324年。。。 つまり、1324年からレオナルドが生まれるまでに、中国の水墨画がレオナルドが活躍するフィレンツェやミラノにもたらされたということは充分に考えられるのですよ。。。
。。。で、上の中国の山水画はいつごろ描かれたのですか?
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この水墨画は李成(りせい)【919年-967年】という北宋初期の山水画家が描いたものです。 この画家は当時有名な画家で、たくさんの水墨画を残したのですよ。
つまり、この人の書いた水墨画がシルクロードを通じて当時のイタリアにまで伝わったと言うのですか?
そうです。。。 好奇心が旺盛だったレオナルドだから、当然、水墨画の技法を真似て、遊び心で“モナリザ”の背景に、水墨画のような景色を描いたのですよ。
つまり、レオナルドの“遊び空間”は水墨画の世界だったと、デンマンさんは考えているのですか?
少なくとも“モナリザ”の背景をじっくりと眺めると、そうとしか考えられないのですよ。
要するに、この事を言うために、『ルーヴル美術館の楽しみ方』の本から画家たちの私小説のエピソードを持ち出してきたのですか?
いや。。。 そればかりではないのですよ。。。 レオナルドの“モナリザ”も多くの画家や写真家に“遊び心”を呼び覚ましたのですよ。。。 つまり、自由という誘惑を後世の芸術家に呼び起こしたのです。
例えば、どのように。。。?
ちょっと次のコラージュを見てください。
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この作者はスーパーマンにハマッているのですよ。。。で、“モナリザ”を“スーパーウーマン”にしたらどうなるか?
その想いに駆られて上の作品をデッチ上げたのですか?
そういうことです。。。 そういう誘惑に駆られたのですよ。
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あらっ。。。 この作者は痴漢常習者なのですわねぇ~。。。
おそらく、そうだろうと思います。。。 “モナリザ”にハマり過ぎて、どうしても彼女を痴漢しないではいられなかったのですよ。 (微笑)
でも。。。、でも。。。、どうして刺青(いれずみ)をしなければならないのですか?
だから、この作者は刺青にもハマッているのですよ。
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あらっ。。。 “モナリザ”がテロリストの女性活動家になってますわねぇ~。。。
あのねぇ~、イタリアでも、かつて1980年の8月にテロリストによる「ボローニャ駅爆破事件」というのがあったのです。。。 この事件では85人が死亡、200人以上が負傷したのですよ。。。 当初、この事件は事故と思われていたものの、その後の調査で捜査員が爆心地近くで金属片とプラスチック片を発見したことにより、テロ事件と断定されたという経緯(いきさつ)があるのです。
つまり、その関係者が上の“モナリザ”をコラージュしたのですか?
それは僕の想像ですけど。。。 (微笑)
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あらっ。。。 この作者は“巨乳志向”の男性ですわねぇ~。。。
たぶん、そうだと思います。。。 次の作品の作者は、マジで“巨乳”にハマッてしまった男性ですよ。
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あらっ。。。 マジですごいオッパイですわねぇ~。。。 うふふふふふ。。。
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この作者はエドゥアール・マネによって描かれた「草上の昼食」にインスピレーションをもらったはずです。
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上の絵はパリのオルセー美術館に展示されているものですわねぇ~。。。
あれっ。。。 ジューンさんは意外にフランス絵画にも詳しいのですねぇ~。。。
だってぇ~、このマネの絵はマジで有名ですわ。。。 マネの代表作と言われているものですわ。
その通りですよ。。。 だから、モナリザを「草上の昼食」に誘ったらどうなるか?。。。 それをテーマにして作ったのが上のモナリザが裸になっている絵ですよ。。。 では、次の作品を見てください。
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あらっ。。。 近未来が背景になってますわねぇ~。。。
どうして、ジューンさんは近未来が背景になっていると思うのですか?
だってぇ~、背景の建物が、なんとなく近未来を想わせるではありませんか!
うん、うん、うん。。。 たぶん、SFにハマッているひとがコラージュしたのだと思いますよ。
。。。で、デンマンさんの作品は。。。?
だから、すでに発表しましたよ。
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僕にとってジューンさんの微笑こそ自由という誘惑ですから。。。 それで、この記事を書こうと決めたのですよ。。。
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(すぐ下のページへ続く)