晴れて身請けした保護ネコが初めて我が家にやって来た日,まず最初に私が履行したミッションは,彼に新たに付けた名前を本人自身に覚えさせることだった。それまでは動物愛護センターの中でずっと「モルツ」(仮)と呼ばれていたようなのだけれども,これからは「レオン」というのが君の名前だ。まぁ別に「レオ」でも「レオナルド」でもいいんだが,いちおう正式な名前はレオンLéonだよ。それで,彼に向かってレオン!と大声で呼びかけた。レオン!こっちおいで。レオン!いい子だね。レオ〜ン!ご飯だよ。レオ〜〜ン!どこ行っちゃったの〜? とにもかくにも日がな一日,家中に レオン! レオ〜ン! というジジイの声が響き渡り,谺したような次第でありました。
当初困ったのは,レオンが新たな環境にまったく慣れることができず,オドオド・ソワソワしたまんまで,すぐどこかに隠れてしまうことだった。初めのうちは多分そのような行動をとるであろうことは一応の想定内であるとはいいながら,とにかく,いつの間にやら姿を眩まして何処かに隠れてしまう。クローゼットの棚の上に隠れる。押し入れの奥に隠れる。納戸の中に積まれた雑多な物品の陰に隠れる。玄関の下駄箱の下に隠れる。私のベッドの下に潜り込んで隠れる。タンスの裏に隠れる。台所の電子レンジの裏に隠れる。などなど。。。 何せ,高齢者2名だけが住まう築40年近い老朽化した6LDK+αの無駄に広い家屋であるからして,隠れ潜む場所にはことかかない。別の言い方をすれば,「コドモ」にとって「カクレンボ」にはうってつけの場所と映じたのかも知らん。
そういった敬遠反応ないし忌避行動に対して,こちらから強引に無理矢理に隠れ場から引っ張り出すようなアクションなどはもちろん行わない。ただ,危険な場所には決して行かないよう,じっと優しく生暖かく見守るのみであった。けれども,いつまでも隠れん坊を続けてひとり放置しておくわけにも行くまいから,ネコじゃらで誘い出す,オヤツで誘う,タブレットの猫ビデオなどで気を誘う,等々,とにかくアレコレと苦労した訳であります。それはまた,楽しくも微笑ましくも,穏やかで心安らぐ苦労ではあったのだケレドモ。。。
しかしながら,そういった淡いシアワセ(童心に戻ったかの如き隠れんぼ&鬼ごっこ三昧)で満たされた時間はいつまでも続くわけでない。3日目の昼間のこと,しばらく下の仕事場で作業をしている時間に,二階の私のベッドの上で何とオシッコをされてしまったのだ。夏用の薄掛け布団とシーツと,何よりもベッドのマットレスまでが少しシミを作ってしまった。このマットレスは,背骨(脊椎)に少なからぬ不具合を抱えている身である私にとって就寝時におけるせめてもの安らぎ(ないし気休め)を得るための大切な寝具として,それより1年ほど前に少々奮発して購入したイタリア製のマニフレックスのモデル246という製品なのだが,その貴重で高額な介護補助的寝具の上での情け容赦ないオシッコ放出だ。アワワ! さらにその翌々日にはダメを押すかのごとく,ほぼ同じ場所でウンチまでされたのだった。アワワワワ!! いや,決してトーチャンは怒ったりはしないんだけれどもね,それにしても自己主張にも程があろうってもンじゃないのか〜ぃ!!!
そんなこんなで,最初の1週間は怒涛の渦にまみれつつもアッという間に過ぎ,そして更に1ヶ月が過ぎ2ヶ月が過ぎると共に,老人のセワシナイ日々は「凡庸で味気ない日めくり」のように機械的に更新を重ねてゆき,やがて徐々に少しづつ,元の静かで穏やかで単調で平凡な日常が戻ってきたのでありました。もちろん,そのような経験を通じて,我が老齢期ジンセイの特性ないし意味合いは「レオン前」と「レオン後」とで全く異なってしまったことは確かである。それが良いことなのか悪いことなのか,と問われれば,躊躇なくこう答えよう。大海の波間を漂よい続ける筏のごとき儚い我が身なれども,もし一旦事あらば、何にもまして心すべきは、先ずは相棒だ! Mon copain,d’abord!
ちなみに,このレオンLéonという名前は,ポール・ルカPaul Loukaの歌からの引用ではなく,ましてやジャン・レノJean Reno演じるところのフィルム・ノワールの主人公なんぞでもなく、実は、ジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensの《アコーデオン弾きレオンLe vieux Léon》から採ったのであります。。。
Y'a tout à l'heure, quinze ans de malheur
Mon vieux Léon
Que tu es parti au paradis de l'accordéon
Parti bon train voir si le bastringue et la java
Avaient gardé droit de cité chez Jéhovah
Quinze ans bientôt que musique au dos
Tu t'en allais
Mener le bal à l'amicale des feux follets
En cet asile, par Sainte-Cécile pardonne-nous
De n'avoir pas su faire cas de ton biniou
C'est une erreur mais les joueurs d'accordéon
Au grand jamais on ne les met au Panthéon
Mon vieux, tu as dû te contenter du champ de navets
Sans grandes pompes et sans pompons
Et sans "ave"
Mais les copains suivaient le sapin le coeur serré
En rigolant, pour faire semblant de ne pas pleurer
Et dans nos cœurs pauvre joueur d'accordéon
Il fait ma foi beaucoup moins froid qu'au Panthéon
Depuis mon vieux qu'au fond des cieux tu as fait ton trou
Il a coulé de l'eau sous les ponts de chez nous
Les bons enfants de la rue de Vanves à la Gaîté
L'un comme l'autre au gré des flots furent emportés
Mais aucun d'eux n'a fait fi de son temps jadis
Tous sont restés du parti des myosotis
Tous ces pierrots ont le cœur gros
Mon vieux Léon
En entendant le moindre chant d'accordéon
Quel temps fait-il chez les gentils de l'au-delà?
Les musiciens ont-ils enfin trouvé le "la"?
Et le petit bleu, est-ce que ça ne le rend pas meilleur?
D'être servi au sein des vignes du Seigneur
Si de temps en temps une dame d'antan se laisse embrasser
Sûrement papa que tu regrettes pas d'être passé
Et si le bon Dieu aime tant soit peu l'accordéon
Au firmament tu te plais sûrement
Mon vieux Léon
当初困ったのは,レオンが新たな環境にまったく慣れることができず,オドオド・ソワソワしたまんまで,すぐどこかに隠れてしまうことだった。初めのうちは多分そのような行動をとるであろうことは一応の想定内であるとはいいながら,とにかく,いつの間にやら姿を眩まして何処かに隠れてしまう。クローゼットの棚の上に隠れる。押し入れの奥に隠れる。納戸の中に積まれた雑多な物品の陰に隠れる。玄関の下駄箱の下に隠れる。私のベッドの下に潜り込んで隠れる。タンスの裏に隠れる。台所の電子レンジの裏に隠れる。などなど。。。 何せ,高齢者2名だけが住まう築40年近い老朽化した6LDK+αの無駄に広い家屋であるからして,隠れ潜む場所にはことかかない。別の言い方をすれば,「コドモ」にとって「カクレンボ」にはうってつけの場所と映じたのかも知らん。
そういった敬遠反応ないし忌避行動に対して,こちらから強引に無理矢理に隠れ場から引っ張り出すようなアクションなどはもちろん行わない。ただ,危険な場所には決して行かないよう,じっと優しく生暖かく見守るのみであった。けれども,いつまでも隠れん坊を続けてひとり放置しておくわけにも行くまいから,ネコじゃらで誘い出す,オヤツで誘う,タブレットの猫ビデオなどで気を誘う,等々,とにかくアレコレと苦労した訳であります。それはまた,楽しくも微笑ましくも,穏やかで心安らぐ苦労ではあったのだケレドモ。。。
しかしながら,そういった淡いシアワセ(童心に戻ったかの如き隠れんぼ&鬼ごっこ三昧)で満たされた時間はいつまでも続くわけでない。3日目の昼間のこと,しばらく下の仕事場で作業をしている時間に,二階の私のベッドの上で何とオシッコをされてしまったのだ。夏用の薄掛け布団とシーツと,何よりもベッドのマットレスまでが少しシミを作ってしまった。このマットレスは,背骨(脊椎)に少なからぬ不具合を抱えている身である私にとって就寝時におけるせめてもの安らぎ(ないし気休め)を得るための大切な寝具として,それより1年ほど前に少々奮発して購入したイタリア製のマニフレックスのモデル246という製品なのだが,その貴重で高額な介護補助的寝具の上での情け容赦ないオシッコ放出だ。アワワ! さらにその翌々日にはダメを押すかのごとく,ほぼ同じ場所でウンチまでされたのだった。アワワワワ!! いや,決してトーチャンは怒ったりはしないんだけれどもね,それにしても自己主張にも程があろうってもンじゃないのか〜ぃ!!!
そんなこんなで,最初の1週間は怒涛の渦にまみれつつもアッという間に過ぎ,そして更に1ヶ月が過ぎ2ヶ月が過ぎると共に,老人のセワシナイ日々は「凡庸で味気ない日めくり」のように機械的に更新を重ねてゆき,やがて徐々に少しづつ,元の静かで穏やかで単調で平凡な日常が戻ってきたのでありました。もちろん,そのような経験を通じて,我が老齢期ジンセイの特性ないし意味合いは「レオン前」と「レオン後」とで全く異なってしまったことは確かである。それが良いことなのか悪いことなのか,と問われれば,躊躇なくこう答えよう。大海の波間を漂よい続ける筏のごとき儚い我が身なれども,もし一旦事あらば、何にもまして心すべきは、先ずは相棒だ! Mon copain,d’abord!
ちなみに,このレオンLéonという名前は,ポール・ルカPaul Loukaの歌からの引用ではなく,ましてやジャン・レノJean Reno演じるところのフィルム・ノワールの主人公なんぞでもなく、実は、ジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensの《アコーデオン弾きレオンLe vieux Léon》から採ったのであります。。。
Y'a tout à l'heure, quinze ans de malheur
Mon vieux Léon
Que tu es parti au paradis de l'accordéon
Parti bon train voir si le bastringue et la java
Avaient gardé droit de cité chez Jéhovah
Quinze ans bientôt que musique au dos
Tu t'en allais
Mener le bal à l'amicale des feux follets
En cet asile, par Sainte-Cécile pardonne-nous
De n'avoir pas su faire cas de ton biniou
C'est une erreur mais les joueurs d'accordéon
Au grand jamais on ne les met au Panthéon
Mon vieux, tu as dû te contenter du champ de navets
Sans grandes pompes et sans pompons
Et sans "ave"
Mais les copains suivaient le sapin le coeur serré
En rigolant, pour faire semblant de ne pas pleurer
Et dans nos cœurs pauvre joueur d'accordéon
Il fait ma foi beaucoup moins froid qu'au Panthéon
Depuis mon vieux qu'au fond des cieux tu as fait ton trou
Il a coulé de l'eau sous les ponts de chez nous
Les bons enfants de la rue de Vanves à la Gaîté
L'un comme l'autre au gré des flots furent emportés
Mais aucun d'eux n'a fait fi de son temps jadis
Tous sont restés du parti des myosotis
Tous ces pierrots ont le cœur gros
Mon vieux Léon
En entendant le moindre chant d'accordéon
Quel temps fait-il chez les gentils de l'au-delà?
Les musiciens ont-ils enfin trouvé le "la"?
Et le petit bleu, est-ce que ça ne le rend pas meilleur?
D'être servi au sein des vignes du Seigneur
Si de temps en temps une dame d'antan se laisse embrasser
Sûrement papa que tu regrettes pas d'être passé
Et si le bon Dieu aime tant soit peu l'accordéon
Au firmament tu te plais sûrement
Mon vieux Léon