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まるでスティーブ・マックィーンSteve McQueenのように

2012年09月24日 | 自転車ぐらし

 一昨日の午後,我が町では《たばこ祭り》という伝統的行事が盛大に催されていたのであったが,そちら方面にはあえて近づくことはせずに,渋沢丘陵から大井町篠窪方面への道を自転車で辿った。あいにくの曇天ながら,何とか雨は降らずに天気は持ちこたえそうな感じだった。

 国道246号の曲松交差点を左折して県道708号を丘陵地へと向かう。渋沢中学校入り口の先にある峠トンネルはくぐらずに,その少し手前で左の脇道に入って細い急坂を登っていった。平均斜度は15~20%くらい,最大では30%を優に超えるだろう。それはもうシンドイ坂だ。時速2~3km/h程度の止まるようなスピードでヒイコラ登るが,これがまた楽しい。MTBなればこその刺虐的?快感を伴う上昇感覚である。

 尾根筋に出たあとは,うねるような緩い稜線をゆっくりと南に向かった。吹き来る秋の風が肌に心地よく,急な登攀でタップリかいた汗をスーッと冷やしてくれる。谷を隔てた東側には栃窪無線中継所の電波塔から南へと伸びる尾根,すなわち近い将来 大規模霊園開発により切り崩される(かも知れぬ)丘陵が見渡せる。一転,憂鬱な気分になる。 あ゛あ゛ぁ。。。

 あぁ,そうだ。さらにイヤなことを思い出した。それは標題に係わる話なのであるが,昨年晩秋の候,やはりこの付近一帯の里道,山道,ケモノ道をMTBでノンビリ走っていたときのことだ。ある場所に獣害防止用の電気柵が設置されていることに気がついた。そこは時々自転車で通る小径なのだが,電気柵を見たのはその日が初めてであった。ということは,少なくともその数週間前に新規に設置されたものらしい。

 なんだろう。このあたり一帯の丘陵地は丹沢,箱根エリアとは違ってシカやサルはほとんど生息していないだろうから,これはイノシシ除けなのかな? それにしても電気柵設置には随分と費用がかかることだろう。恐らくどっかの補助金利用なんだろうけれど,こんなに立派なものを設置して,その費用対効果はいかがなものか? 電気は夜だけ流すのかな? それとも,昼間でも電気を流すことがあるのだろうか,触ってみなけりゃわからないのかな? クワバラクワバラ。とかなんとかブツブツ考えながら,その少し先を左折して脇道の斜面を峠方面へと下っていこうとした。

 と,そのとき,道の前方に張られていたワイヤーロープに自転車ごとモロに引っかかり,そのまま人車一体となってワイヤーに絡み付いてコケてしまったのだ。その脇道の入口にも新たにゲートが設けられていたわけだ。よく知った道であること,視線が斜面のはるか下方の県道の方をもっぱら注目していたこと,加えて,日頃は自転車活動の際には遠近両用メガネを掛けるのだが,その日はたまたま室内用の中近両用メガネのままで出掛けてしまったこと等々により,不覚にも道を塞ぐワイヤーが一瞬目に入らなかったのだ。スピードを出していなかったのがせめてもの幸いであった。

 ワイヤーに絡まったMTB本体と自らの身体をウンショ,ウンショと苦労して引き剥がしながら,アチャー,こりゃ,まるで映画『大脱走』のスティーブ・マックイーン状態だなぁ,なんて思ったのである。彼の場合はモーターバイクに乗っていて鉄条網(有刺鉄線)に絡まって往生したわけだが,私の場合はマウンテンバイクに乗っていて電気柵のコイルワイヤでの往生である。幸いにして,夕方の末だ明るい時間帯だったためか通電はされてはいなかった。もしこれが夜間だったら どのような悲惨な状況が待ち受けていただろうか。哀れホントの大往生となっただろうか。ふと,人気絶頂期に風呂場で感電死したクロード・フランソワClaude Francoisのことなんぞを思い出した。人間万事塞翁が自転車,まことにもって一寸先は闇でアリマス。



 ちなみに,それからまた数週間後に自転車でその場所を通った折り,小径の傍らに《和牛の放牧事業[地域畜産活性化支援事業]》なる看板が設置されていることを確認した。なんでも県の有害鳥獣及び荒廃農地対策事業の一環らしい。そのときは電気柵に囲まれた内側の一角が牧草地のようにキレイに刈り込まれた状態になっており,2頭の牛が隅っこの方で遠慮がちにじっと佇んでいた。電気柵にバリケードされた和牛(生贄もしくは晒し者?)ってのもチョット可哀相だなぁ,なんて思いつつ,たまたま近くに畑仕事をしている老農夫がいたので,挨拶して電気柵のことなどを聞いてみた。


- この柵は最近出来たみたいですけど,イノシシ除けですか?

- いや,イノシシはまず居ないね。シカ除けだろうさ。

- シカですか? 盆地の北側の山麓あたりでしたら随分といるようですけど,渋沢丘陵のこちら側までもシカは来るんですか? 

- ああ,松田の山の方から谷を越えて来るみたいだね。

- そうなんですか。四十八瀬川を渡って足柄古道を辿ってくるわけですね。 サルは来ますか?

- 群れでは見ないけど,たまに,はぐれザルを見ることはあるよ。

- なるほど。じゃぁ,この電気柵もソレナリニ役に立ってはいるんでしょうかね。

- さぁ,どうだかな。金が掛かるばっかりで。メンドクサイし。ジャマクサイし。。。


 その金が自己負担であるのかどうか,それは聞きそびれた。聞いたとしても恐らく正直には答えてくれまい。なお,以上の話は老農夫の投げやりな応対ゆえ,その真偽のほどは定かではないが(例えばイノシシの有無など),少なくとも電気柵の設置をあまり快く思っていないことだけは伺えた。やはりこれは里地・里山エリアにおける昨今の「電気柵ビジネス」の隆盛ぶりの証左なのだろう。人間至ル所商売アリ。

 以上のような一年ほど前のエピソードを思い出しながら,話は一昨日のことに戻るが,現在,件の電気柵のなかは草ボウボウで荒れ放題の状態であった。立て看板も伸びた雑草にほとんど埋もれるように隠れ,もちろん牛の姿なんぞどこにも見あたらない。今は放牧お休みの時期で,秋になったら再開するのか? それとも諸般の事情により和牛の調達が出来ないのか? あるいは,当該畜産振興事業自体が一年を経ずして頓挫してしまったのか? 何にせよ謎は謎を呼ぶケレドモ,人気のない山中のことゆえ好き勝手にやっても構わないというものでもなかろう。いつだってそうなのだが,私ども住民のあずかり知らぬところで お金は回っている。地方自治体の緊縮財政が続く今日この頃,その貴重な財政の使途,そしてその帳尻だけはキッチリ明示して欲しいものである。 クロイワ某は何をしておる!(こればっか)


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