愛車の廃車(MTB)

2022年05月15日 | 自転車ぐらし
 数日前の話になるが,我が愛車のマウンテンバイク,ジャイアントGIANT XtC850を廃車処分にした。その日,いつもと同じ朝食を済ませた後,些かの重たい気分で玄関のドアを開けて表に出た。そして,ここ最近では約1年近くもガレージの隅でずっと眠ったままになっていたジャイアン君をやおら叩き起こし,久しぶりにその太いタイヤに空気を入れ,チェーン,ギア回りに油を差し,ウェスで全体をササっと拭き清めた。それから,一応の別れの儀式として記念写真(遺影?)なんぞも撮影しておきました。改めてじっくり眺めると,現在履いているタイヤは2.1インチのセミスリックで,もうメーカーも忘れてしまったけれど割に高価なシロモノだったと思う。さらにもっと以前には2.3インチの幅広ブロックタイヤを常用していたのだ。最近ではもっぱら我が足代わりとなっているパナソニックのハリヤ(電チャリ)と比べると,全体的にかなり無骨な感じがするガタイである。

 振り返りみれば,このジャイアント製MTBを購入したのは2005年のことで,今から17年も前になる。爾来,喜びも悲しみも幾年月,私のツマシイ日々の暮らしに欠かすことのできない大事な相棒として,各地の山岳や谷間や河川や湖沼,野原や林,丘や平地,主要幹線道や地方街道,田舎の農道や都会の路地裏などなど,あちこちの野外活動を共にして多くの苦楽を味わってきた仲だった。春・夏・秋・冬,早朝から夜遅くまで,あんなこともあった,こんなこともあった。。。 それら数知れぬ思い出が今、走馬灯のように老人のボケた脳裏を駆け抜けてゆく。。。 とは申せ,大部分は神奈川県西部地方を主たるフィールドとして県内各地をうろうろした程度に過ぎないのであって,県境を越えて遠出をしたのは,東京と静岡とにそれぞれ数回くらいに限られていたと思う(さすがに軟弱かつ非力なサイクリストたる私にとっては「輪行無理」な重戦車であった)。それでも,長の年月を飽くことなく日々コツコツと走り続けていたわけで,結果,その通算の走行距離数は決して馬鹿にならなかっただろうと思う(と言って,ここで改めて過去帳をひもといてそれらを集計してみたりする気なんぞは全く起きませぬが)。
 
 とまれ,本日は彼との「ラスト・ラン」となった。行き先は家から約5kmほど離れた 市の環境資源センター(=粗大ゴミ処分場)である。そこが彼の墓場もとい終の棲家となる。ちなみに,当市においては,粗大ゴミ処分は自宅で引き取ってもらう場合は回収費用が1個当たり650円であるが(月2回、事前予約制)、それを処分場に自己搬入すると手数料は300円で済む(予約なしでいつでもOK)。そうか,キミは最後まで孝行息子だったのかも知れないなぁ。プラス・マイナス幸せの在庫はいくつ,ってか?

 駄言はさておき。出掛けるに先だって自宅前道路で少しだけ乗車して現在の車両状態を確認してみた。すると,長いこと「ほったらかし」にしておいたツケが来たのだろうか,後輪のディスクブレーキの効き具合が大分甘くなっており,加えてギアの変速も特に高速の方がガシガシ音がして少々覚束ないようだった。それでも,まぁ急ぐ旅ではない,最後の旅路くらいはユックリと参りましょう。無理せずノンビリ自走して行くことにした。

 家を出て少し行くと,緩い台地状になったところに古くからの戸建て住宅団地が広がっており,その静かな住宅街のなかを通り抜けると,やがて国道246号へと向かう手前に「轟坂」という名のカーブの多い急な坂道がある。ここは従来から(電チャリになった現在でも基本的に変わりないが),かなりの急スピードで車道を一気に走り下ってゆく爽快感&緊張感のある坂道なのであるが(ただしカーブで無駄に膨らんでくる登りの対向車には十分気を付けて!),さすがにこの日ばかりは不安が勝って,歩道の上をユルユルと下って行きました。国道246号に出てからもやはり歩道(舗道)の方をユックリユックリと走った。ここら辺りの246号は幹線道路にもかかわらず片側1車線なものだから,大型トラック,中・小型トラック,普通乗用車,ライトバン,軽乗用車,軽トラ,モーターバイク等々の多種多様なクルマが混在し,加えてロードバイクやマウンテンバイクなどのスポーツ自転車もそれらに混じるように路肩近くを遠慮気味にあるいは果敢に走っている。その日もいつもと同じく,そのような各種車両が相も変わらずギチギチとあるいはイライラと半ば無駄に混雑して走行するといった毎度の光景が展開していたが,それらの様をのんびりと横目で見やりながら,我ら歩道組はジャイアン君にうち跨ってユックリ並走していった。やがて,「ヤビツ詣で」にこれから向かおうとするローディー達が三々五々屯している名古木(ナガヌキ)の交差点を渡り,さらにその先の,善波隧道近くにある処分場へと20分近くもかけて到着した。

 処分場の構内に入ると,係員の指示により少し順番待ちをしたのち,極めてテキパキと事務処理され,あっという間に自転車の方は処分完了となった。そうして私の手を離れたGIANT XtC850は,すぐと何処かに持ち運び去られてしまった。はい,サヨナラ! それはまことに潔い別れでありました。

 さて,帰路はどうする? この処分場は結構不便な場所にあって,バスの便は昼間の時間帯だと秦野駅行きが1時間に1本かそこらある程度だ。処分場のすぐ隣には何故かタクシー会社があるのだけれども,そんなのを安易に利用したら350円(650円-300円)を浮かせた意味がないし,ジャイアン君だってそりゃ浮かばれないだろう。という次第で,ままよ,歩いて帰ろう,と決めた。これまで彼と一緒に過ごしてきた長きにわたる歳月のなかで経験・体験してきた数多の出来事,あんなこと,こんなこと,それらを能うる限り思い起こし,呼び戻し,懐かしみ,反芻し,それらの思い出にタップリと浸りつつ,ゆっくりと,のんびりと,しんみりと,今来た道を歩いて帰ってゆこう。

 でも今夜は アタシ,泣くと思います・・・ (by 中島みゆき)

 いや,泣きませんってば! アタシ,もうそんな年ではございません。ただ,こうしてまたひとつ,「自分史」の終焉に向けてのページが,人知れず,静かにめくられてゆく,のかもネ。 何事ノ不思議ナケレド。

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