「ヌードの映画史~黎明期から現代へ~」
起:映画創成期に裸は規制されるが、徐々に映画に裸が出てくるようになる。
承:価値基準が変わり、裸のシーンはどんどん増える。
転:80年代はいろんな映画で裸があった。
結:すべての表現が多方面から検証されるのだ。
初めて裸を観た映画が何かを問われると、いろんな映画が挙げられる。
「シャンプー」、「カリギュラ」、「青い珊瑚礁」、「初体験リッドモンドハイ」、
「ビッグ・バッド・ママ」、「ラストタンゴ・イン・パリ」。
Metoo運動などで、性問題が取り上げられるように。
かつてはオーディションでも裸になったと言う話もあった。
映画に出られる確証もないのにだ。
裸のある作品が評価された場合、演技と裸のどちらが評価されたのかわからない。
かつて裸は完璧なものとされ、絵画でも扱われたが、突然許容されなくなった。
映画も同様だ。
映画の創世記から裸のシーンはあった。
エジソンが特許で映画業界を支配し、従いたくない者は、商売になる裸に手を出した。
ヌードモデルを起用。
やがて水泳選手が出演し、動く裸が話題になった。
巨匠も「イントレランス」で裸のシーンを撮影した。
わいせつが問題になり、規制が必要となった。
検閲委員会が出来たが、検閲の内容は州によって異なった。
映画業界では、規制される前に自主規制すべきとされ、倫理規定が作られる。
裸は全面禁止になり、シルエットも不可とされた。
映画会社にとって、この規制は痛手だった。
だが1933年。
「春の調べ」では、水遊びのシーンで裸が描写されて、話題となった。
舞台がジャングルのターザン映画では、裸にも必然性があった。
モーリン・オサリバンが脱いだと評判になったが、実際は代役が使われた。
これが初めての裸の代役だ。
昔の裸の写真が見付かったマリリン・モンローは、会見で認め、
人気女優への踏み台となった。
50年後半には価値基準が変わり始める。
裸の女性が出ても、性的な描写がなければ問題ないとされたのだ。
一方、規制が緩い外国映画も配給されるように。
ブリジット・バルドーが話題になり、米国でも裸は儲かると気付く。
60年代、一番人気であるモンローの裸は影響力絶大だった。
ジェーン・マンスフィールド、マミー・ヴァン・ドーレンが続いた。
「質屋」の裸のシーンは、物語上重要なシーンであり、カットする事は出来ない。
次第に露骨な裸が登場し、ジェーン・バーキンの陰毛も話題になった。
何事にも反動はあるもので、ポルノ映画禁止を求める運動が起きた。
やがて年齢によるレイティングが設けられる。
マルコム・マクダウェルは、「Ifもしも…」で、男女同時の裸を撮影した。
マルコムは若手ヌード俳優と呼ばれる様になった。
70年代になり、「卒業」と「イージー・ライダー」で映画が変わった。
女優たちは、裸のシーンが汚点になると感じていた。
ヨーロッパの女優は問題視していない。
「真夜中のカーボーイ」はX指定だったが、アカデミー賞を受賞した。
「X指定」は商標登録されず、自称する事が出来た。
そのため、「ディープスロート」は「トリプルX」を自称した。
ハードコアポルノとの区別がつかず、X指定映画の新聞広告が禁止された。
裸のシーンは暗黙の了解となった。
「愛の狩人」では、アン・マーグレットが裸になったと話題になった。
「ラストショー」では、新人のシビル・シェパードが裸になった。
彼女はためらったが、物語上必要とされたシーンだ。
「ラストタンゴ・イン・パり」の裸のシーンは、暴行ではないかと話題になった。
ロジャー・コーマンが女囚ものというジャンルを始めた。
女囚は頻繁に裸になり、レズビアンを想像するシーンもあった。
ポルノ映画「エッチの国のアリス」は一般のドライブインでも上映され、
盗み見する者もいた。
「発情アニマル」はレイプ犯に復讐する女の物語で、上映禁止となるケースもあった。
マクダウェルにとって、「カリギュラ」は汚点になった。
映画はペントハウスの社長に乗っ取られ、ポルノに改変されたのだ。
米国映画のヌードはヨーロッパ的になった。
「テン」ではボー・デレクが脱いだ。
「アメリカン・ジゴロ」ではリチャード・ギアのペニスが話題になった。
「SOB」では、
ブレイク・エドワーズ監督の妻ジュリー・アンドリュースが裸になった。
「ハウリング」では、裸を経て狼女に変身した。独自の官能性だ。
「マイ・ライバル」のマリエル・ヘミングウェイは、
競技選手のレズビアンシーンが論争を呼んだ。
「スター80」は、プレイメイトになった女優が射殺される話だ。
マリエルは豊胸手術をしたが、自分の為にやったと言う。
リンダ・ブレアは「チェーンヒート」でジョン・バーノンと絡む暴力シーンがあった。
女優は契約で裸になる事が求められるが、裸になればどう演ずるかは問われない。
当時最高のヌードは「初体験リッジモンドハイ」のフィビー・ケイツだろう。
「プライベイトスクール」でも彼女は裸になった。
「追いつめられて」のショーン・ヤングは、オーディションで裸を確認された。
トレイシー・ローズは未成年のポルノ女優出身で、
ロジャー・コーマンの映画に出演した。
ローズは出演映画に裸のシーンがある事は承知していた。
90年代になると、17歳以下禁止と言うレイティングが生まれた。
「ヘンリー&ジューン」では開放的な性の描写があった。
「クライングゲーム」も話題になった。
「氷の微笑」はセックス依存症の話で、足の組み換えシーンは話題になった。
「ショートカッツ」では、
ジュリアン・ムーアが下半身裸のまま自然に会話するシーンがあった。
「ショーガール」で、製作者は17禁指定される事を狙っていた。
「素顔のままで」では、デミー・ムーアが裸になった。
テレサ・ラッセル、キャサリン・ターナー、ナターシャ・キンスキー、
メラニー・グリフィスが映画で裸になった。
裸になった事で表現者扱いされないなら、それは避けるべきだと言う声もある。
ケート・ウィンスレットは一般向けの映画「タイタニック」で裸になった。
これは重要なシーンだ。
「ブギーナイツ」はポルノ業界を描き、セクシーなシーンは避けられなかった。
ヘザー・グラハムはオールヌードになった。
「アメリカンパイ」の出演者は、脱ぐ事にはこだわらなかったが、
今なら必要な裸か否かを確認すると話す。
2000年代。
「あるあるティーン・ムービー」は、全裸の留学生によるコメディだ。
かつてイエローレンジャーを演じていた女優が裸になり、
その頃のファンの反発を受けた。
彼女は、その事に考えが及ばなかったと話す。
クリステナ・ローケンは、「ターミネーター3」の冒頭で裸になった。
過去作でターミネーターに裸がある事は承知しており、必要なシーンだと話す。
ポルノ映画がテーマの「僕らのポルノ・グラフィティ」は、
題名が問題視されてR指定となった。
だが、題名から「ポルノ」を外せば、意味が通じない。
「フィフティ・シェイズ・グレイ」は原作が知られており、
裸のシーンがある事はわかっていた。
美しくなければ脱げないと言う固定観念が生まれていたが、
「アバウト・シュミッツ」ではキャシー・ベイツが裸になって驚かせた。
metoo運動などによる俳優の待遇改善で、多くの検討が行われた。
理由も正当性も求められる。
すべての表現が多方面から検証されるのだ。
と言う訳で、ヌードの出てくる映画の歴史を振り返るドキュメンタリー。
あるジャンルの作品群を振り返るドキュメンタリーは色々観たが
本作は「ジャンル」と言うのには語弊があり、紹介される映画のジャンルは様々。
「〇〇って映画で△△が脱いでるらしいよ」と言う話題で映画に注目する事はあるが
あちらにもそういう目線で映画を観てる人がいるんすね。
ただし、秘蔵映像集みたいなものを期待すると、そう言う感じではなくて
裸が出てくる映画が、規制されたり容認されたりと言う推移を説明される。
それはまあまあ興味深いんだけど、
80年代くらいから以降は、ポルノ映画風の作品も紹介されて
この映画で有名女優が脱いでますと言うのと同列になって、ごった煮みたいに。
全裸の女子留学生がウロウロすると言うコメディなんか、AVみたいな発想だし。
なお、男優の裸がある作品も紹介されるが、
モザイクがかかっている日本では、本当に脱いでたのかどうかわからない。
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