平御幸(Miyuki.Taira)の鳥瞰図

古代史において夥しい新事実を公開する平御幸(Miyuki.Taira)が、独自の視点を日常に向けたものを書いています。

佐藤美弥の天才

2015-09-02 18:27:29 | バレーボール
 はじめに関連動画をアップしました。下の画像で使っているものです。
佐藤美弥の変貌 2014 夏→ 2015 夏
https://youtu.be/C5CQKaStzcw

 3月に書いた『A型セッターの苦悩』。A型セッターの代表である日立リヴァーレの佐藤美弥さんは、昨夏(2014年)のサマーリーグでは輝きが見られませんでした。背中を丸めて気怠(けだる)そうに練習をこなすだけ。顔の表情にも締まりがありません。

 当時の日立は監督が交代したばかりで、中心選手の退部や移籍が相次ぎました。先行き不透明な中で、選手の動揺が尾を引いている感じがしました。その精神的な張りの無さが、微妙に選手の体の線を崩していたのです。佐藤美弥さんも例外ではありませんでした。

 佐藤美弥さんは、「みゃーサーブ」とニコ生で書き込まれる、独特の型を持っています。ボールを叩いてから着地の間に、体が「ノ」の字に傾くのです。この独特の体の使い方は、実はトスアップの時にも見られるもので、セッターだから編み出し得た型とも形容できるのです。では、何故にこのような型になったのか。それは力学的に自然だからです。


みゃーサーブ(昨夏 2014) 高くジャンプしている

 セッターのトスアップはジャンプして行うことが多く、そのために余程の腕力がないと、強くて速い並行トスなどが放てません。それで、腕力の劣る女子選手は、体全体(特に頭)を前掛かりにしてトスするようになります。これがセッターに猫背が多い理由です。竹下や中道の姿勢が、立ち姿でも頭を突き出しているのはこのため。






以上3枚が昨夏のバックトス
体のラインが美しくない







以上3枚が昨夏のレフトへのトス
猫背に頭が後ろに押されて軸が崩れている
無駄なドルフィンキックとバランスの悪い内股


 しかし、猫背ではバックトスが苦しくなる。特に長身選手では弊害が大きい。そこで、僕は佐藤美弥さんに背中を伸ばすように書いたことがあります。長身セッターが背中を伸ばすのは、先ほど書いたように腕力がないと大変ですが、実は佐藤美弥さんは天性の才能でカバーできるのです。それは長い足を利したカウンターウエイトです。


カウンターウエイトの原理
作用と反作用は同量で方向が逆になるが、カウンターウエイトには反作用を打ち消す効果がある


 カウンターウエイトとは、巨大な重機から繊細なトーンアームにまで使われる錘(重り)のことで、力学的にバランスを取るために必要不可欠な概念です。人体でカウンターウエイトを応用するのが、バレエのアラベスクというポーズです。






以上3枚が今夏のレフトへのトス
軸が出来てカウンターウエイトになる右足も綺麗に伸びている


 佐藤美弥さんの場合、昨夏まではジャンプした後のドルフィンキックをカウンターウエイトにしていたので、その反動で体の軸がずれていました。ところが、体幹を鍛えて姿勢の良くなった今夏は、長い足を前に出すことがカウンターウエイトになっているのです。

 前に伸ばされた長い足は、重力で下向きの力になる。これを力点として、腰を支点とし、腕を作用点としたテコの原理が完成します。腕の力が二倍になったに等しい。これによって、重い頭が後ろに下がる反作用を半減させることが出来る。頭を前に出さなくても強くて速いトスが繰り出せるのです。もっとも、足の下る力と、腹筋で足が持ち上がる力のプラス・マイナスで、見た目は足を上げているだけにしか見えませんが。実は複雑な力学のバランスで成り立っているのです。

 また、体の軸が完成し、腰回りが強靭になり、体のラインが見違えるくらいに美しくなった。前はラインではなく、微妙に細かい凸凹があったのです。

 こうして、体の使い方が理想に近くなったので、エネルギー消費が小さく、長丁場でもスタミナが切れないトスやサーブが出来るようになった。それがサーブの時のジャンプが小さくなった理由です。












以上6枚が今夏の柏戦でのバックトス
この美しさに対抗できるのは佐藤あり紗さんだけ (;^ω^)
1枚で止めた清水玲衣さんも凄い


 国体予選の柏エンゼルクロスとのシーンですが、長いバックトスを体を美しく反らして、アンテナ際に完璧にトスアップしています。これが相手に1枚ブロックされたのは、遠井選手のタイミングがわずかに遅く、しかも相手に打つコースが読まれていたからです。あの体勢では右ライン際には打てませんから。柏は研究済みだったのでしょう。














以上7枚が今夏のデンソー戦の難しい体勢からのロングトス
デンソーのライトが対応できない
アタッカーの渡邉選手が枠外から突然現れるほどの遠い距離


 サマーリーグのデンソー戦では、難しい体勢から逆サイドに長いトスアップ。これが見事なのは、レシーブのボールが上がった時点で、デンソーの前衛は、日立のMB井上選手と遠井選手のバックアタックをマークしたからです。あの体勢ではレフトには放てないと誰もが思う。その判断の逆を突いて、渾身のドルフィンキックを繰り出して逆サイドのレフトに振った。慌てたデンソーのブロックが間に合っていません。

 今の佐藤美弥さんなら、岡山の宮下選手やトヨタ車体の藤田夏未選手より上だと思います。アンテナぎりぎりのトスも、速くて低い並行トスも繰り出せる。特に、井上選手とのコンビで見せる高速Aと高速Bは全日本クラスを超えています。

 しかし、問題なのは両サイド。空中で漕ぐ遠井選手も、フットワークの悪い渡邉選手も遅い。川村小捺の方が合っているかも。ここに内瀬戸選手が入ってくるのか、佐々木選手に任せるか。佐々木選手はまだ上体が強く、力むだけタイミングが遅くなるし、下半身が物足りない。腰回りに肉が欲しいですね。選手としての完成は来年か。

 なお、2月6日に書いた『日立のプリアンプ HCA-8000の修理』ですが、驚くべきことに、HCA-8000のシリアルナンバー下二桁が37で、佐藤美弥さんの誕生日と一緒でした。回路図を改めて見て判明しました。背番号と型番、誕生日とシリアルナンバーまで一緒とは (;^ω^)

    エフライム工房 平御幸

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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (うずしお)
2015-09-02 22:18:15
先生こんばんは。画像をたくさんの解説ありがとうございますm(__)m
動画を拝見しました。
佐藤美弥選手のすごさは、試合を見ても気づきませんでしたorz
昨年より、安定して美しいトスを上げられてると分かりました。
カウンターウエイトを知りませんでしたorz
身体のラインと動きが連動されて、良くなられてすごいですm(__)m
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うずしおさんへ (平御幸)
2015-09-02 22:27:25
うずしおさん( ノ゜Д゜)こんばんわ

大器晩成す。瑠璃(ラピスラズリ)も玻璃(エメラルド)も磨けば光る。佐藤美弥さんはまだ成長途上です (;・∀・)

模範的な速い並行トスの動画がないのが残念 orz
昨シーズン後半の動画に探せばあるかも。
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Unknown (スイカ)
2015-09-03 00:52:23
先生、こんばんは。

動画と画像のアップをありがとうございますm(_ _)m

2シーズンほど前(まだ江畑選手がいた頃)に佐藤美弥選手のプレーを見たときは、トスミスもあったりして大丈夫かな…と思ったのが第一印象でした。
それが、とてもきれいなフォームに改善されていて感動しました。
努力すれば人は変わるんですね…
特に、画像で紹介されているバックトスのしなやかさがとても良いです!

今年からのシーズンで、生観戦するのがとても楽しみになりました!
動画の佐藤あり紗選手のサーブとアタックの練習もチラ見してしまいました(^^;)
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スイカさんへ (平御幸)
2015-09-03 01:40:22
スイカさん( ノ゜Д゜)こんばんわ

入った頃は遠慮があったのだと思います。江畑のワンマンチームのようなマスコミの扱いでしたから。

菅原総監督(現副部長)がチーム作りをW佐藤にシフトした。その結果が江畑放出で、佐藤美弥さんのためにセッター出身の松田監督を引っ張ってきたのだと思います。

人は高みを目指すと美しくなるように出来ているのです。そういう意味では未完成の選手も多い。センターにダミージャンプで映っている引地舞選手も形がいいから楽しみ。川村小捺もそろそろ蛹から脱皮しないと (;・∀・)
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日立2-0KUROBE 動画アップ (平御幸)
2015-09-03 13:32:07
サマーリーグ2015 日立リヴァーレ2-0KUROBEアクアフェアリーズ

https://youtu.be/T1Ws1Wh7eSw
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日立2-0上尾 動画アップ (平御幸)
2015-09-03 18:18:51
今夏の残っていた最後の動画をアップしました~ (;・∀・)

サマーリーグ2015 日立リヴァーレ2-0上尾メディックス

https://youtu.be/JDjNg6SFnsw
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orz (平御幸)
2015-09-03 18:23:23
デンソー戦が残ってた (;´Д`)
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Unknown (ほんと)
2015-09-03 22:25:36
先生こんばんは。

たくさんの画像とご解説、動画をありがとうございます。m(_ _)m

バレー・バレエにかかわらず、体幹が鍛えられて軸がしっかりしたフォームは、とても美しいと思いました。

多彩なトスワークでの攻撃が見られたら、試合観戦も一層楽しくなりそうです。
今後の佐藤美弥選手の活躍にも期待したいと思います。
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ほんとさんへ (平御幸)
2015-09-03 22:39:22
ほんとさん( ノ゜Д゜)こんばんわ

デンソー戦もアップロード完了。向こうの処理待ち (;´∀`)

サマーリーグ2015 日立リヴァーレ2-0デンソーエアリービーズ
http://youtu.be/TgRmoM0tt5I

子供に逃げられるから厳しい基礎を教えない。この姿勢がバレーボール界の自殺行為だったのです。野球でも相撲でも基礎がないと守りに限界が来る。

運動神経の良い選手を放任で育てるより、運動神経の足りない選手に基礎を叩きこむほうが良い結果になるはずです。今日の全日本も守りが課題と書かれているようじゃダメですね (-_-;)
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Unknown (hinoko2)
2015-09-04 01:12:23
先生 こんばんは。

画像や動画のアップありがとうございました。

佐藤美弥さんのトスは、体が弓のようにしなやかで美しいですね。日立の練習を見学した際に、随分体がしまって綺麗だなぁと思ってみていました。凄く努力して練習した結果が実を結んでいるのですね( ´∀`)
まだまだ成長の余地があるとは、今シーズンが楽しみです。
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