元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

試用期間はどれくらいの期間が適当なのでしょうか!?(就業規則の掲載事項)

2011-11-23 04:03:26 | 社会保険労務士

就業規則で、試用期間の延長制度を設ける!!

 地方公務員では、企業での試用期間に当たるものとして、条件付き採用期間というのがあります。これは、期間が6か月となっています。その期間、その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとされています。公務員であれば、法律で定まっているので、簡単には「条件付き採用期間」は変更できませんが、企業であれば、この試用期間について、不利益変更の問題はありますが、就業規則等で期間の変更は可能でしょう。

 では、試用期間はどれくらいの期間が妥当なのでしょうか。これには法的な規制があるのでしょうか。特に規制はありませんし、制度を設けることも自由です。一般企業では、3か月から6か月が多いといわれています。しかし、あまりにも長くなると、従業員としての地位が不安定な期間になるため、労働者に不当な不利益を強いることになり、公序良俗に違反し無効となると考えられます。

 改正前の労働基準法が、労働契約の期間は1年を超えてはならないとしていたことから、試用期間も最高で1年と解すべきであるとされていたとしている解釈があります。1年は長すぎるのではないということになるが、一年が長すぎるから無効だということには、判例を見る限り、ないとのことです。(昭45.7.10大阪高裁。大阪読売新聞社事件、採用から退職までの意法律知識ー安西愈著)、これに対し、見習い期間2か月とその後の試用期間1年がある事案で、無効としたものがあります。(ブラザー工業事件、名古屋地判昭59.3.23、就業規則モデル条文ー中山慈夫著)これは、中途採用者を原則2か月の見習期間とし、入社時から6か月を経過した後に3か月ごとに行われる試用社員登用試験に3回以内に合格した者を試用社員に登用し、試用社員は6か月後から3か月ごとに行われる社員登用試験に3回以内に合格すれば社員に登用され、さもなくば解雇という制度でした。(労働紛争解決実務講義、河本毅著)これは、誠に、長きにおいて社員を不安定な立場に置き、労働者にとって過酷なものを強いると言うべきでしょう。

 総じて、裁判例からいうと、1年までは認められるようであるが、結局のところ、その内容等が影響するものと思われ、1年経過してはじめて1サイクルというような、また業務内容が季節において変動するような合理的な理由があれば、1年の試用期間も認められるものとすべきでしょう。(リスク回避型就業規則作成マニュアル森・岩崎共著を参考) 例えば、学校教員のような場合は、1年単位でカリキュラムが組まれるため、適格性評価期間として合理性があるとしています。(就業規則モデル条文、中山慈夫著)

 さて、法律論はさておき、実際のところ、どれくらいの期間が適当なのだろうか。使用者側にとっては、長ければ長いほどその適性や能力を見抜けることになるが、漫然と長くあっても、見抜けなければ、意味はないものであるし、労働者側にとっては、地位の確保からいって、短ければ短いに越したことはないことになる。

 私の経験から申せば、業種や業務内容にもよるが、知識・能力・態度等の適性については、3か月では判断するのが難しい事例も発生しそうであるし、6か月ほどあれば、ある程度の判断は可能と思われるところである。また、持病との病気を隠していた場合はどうだろうか。腰痛があった場合に、3か月は隠し通せるが、病状にもよるが、6か月も隠しながら作業や勤務に就くには無理であろう。

 では、精神的な面で堪え得るかは、精神的に追い込まれる状況を作らない限り、確かめようがないが、その場面を作ることは、人権から考えて難しいであろうし、また、6か月で日常の通常の業務を行っている限りは難しいであろう。しかし、これは1年を試用期間としても、そういった状況が来ない限り、判断は難しいであろう。

 考えるに、精神面は別にして妥当な線は、6か月前後と思われる。そして、何らかの不安材料が見つかり判断に迷った場合には、試用期間の延長を、就業規則に記載することによって、その判断を確実にすることができると思われます。

<就業規則の期間延長規定の例>

「従業員としての適格性判定のために必要と認めた場合は、3か月を限度として試用期間を延長することがある」(就業規則モデル条文 中山慈夫著)
 「前項の試用期間は、事情により短縮し、もしくは入社の日から1年を超えない限りで1回に限り延長することがある。なお、延長する場合は、2週間前までに本人に通知する。」(「就業規則」ここが問題です 北村・桑原著)
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする