社労士試験では「欠勤したが出勤日に含める日」と「労働義務のない日」のそれぞれの休業日等を覚えなければなりませんが(覚え方は?)
年休権の発生については、労基法に次のような記述があります。
使用者は、雇い入れの日から6か月以上継続勤務(=労働関係が実質的に存続していればよく、労働契約の更新や合併・在籍出向であっても継続とされる)し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し又は分割した10労働日以上の有給休暇を与えなければならない。そしてその後は、勤務年数を増すにしたがって、その日数は20労働日まで加算される。
この「全労働日の8割以上出勤」の計算方法(出勤率)であるが、出勤率=出勤日数/全労働日で計算される。休業日の種類によって、2つの計算方法があって、1、例えば、使用者側に起因する経営・管理上の障害による休業日のように、「全労働日」の中に入らない日 2、業務上障害により療養のために休業した期間のように、「出勤したとみなす」(=出勤日数に含む取り扱い)ものがある。1、は分母の「全労働日」の中に含めないのであるから、当然分子の「出勤日数」にも含めない。2は、出勤したとみなすのであるから、「出勤日数」に含めるともに、当然分母の「全労働日」にもカウントしなければおかしくなる。
<ここで、ちょっと横道にそれるが、この1「全労働日に入らない」場合の範囲と2「出勤したとみなす」の範囲の事由の区分が、社労士試験に出されるが、なかなか事由が多くて覚えられないが、以下のように理解すれば、簡単に覚えられるのではないでしょうか。>
結局 1、は、出勤率=出勤日数+-0(ゼロ)/全労働日+-0(ゼロ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・労働日に入らない日
2、は、出勤率=出勤日数+α /全労働日+α (α日の出勤したとみなす日があった場合)・・・出勤したとみなす日 となる。
ということで、例えば、全労働日が249日でそのうちの出勤した日が199日とすれば、全労働日に入らない休業日が何日あったとしても、1の出勤率は、(199+-0)/(249+-0)=79.9% <したがって、8割を超えないので、有給休暇は与えられない>
一方、出勤したとみなす日が1日あったとすれば、α=1であるから、(199+1)/(249+1)=80.0%となる。 <8割以上となり、有給休暇が与えられることになる>
このように、ちょっとの差であるが、1の「全労働日に入らない」のと2の「出勤したとみなす」の差は大きい。1は、まったく出勤率に影響がないが、2は、ちょっと出勤率が高まるのである。
ここで、「全労働日」とは、本来「労働者に労働契約上労働義務が課せられている日」のことであり、実質的に労働義務のない日も(休日と同様の一般休暇日)これから除くことになる。さらに、この「全労働日の8割以上出勤」と言うのは、「労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高いものをその対象から除外する趣旨で定められたものであり」(八千代交通事件、水町著労働法)、この趣旨から、労働者に帰責のない欠勤日は、この「全労働日に入らない」ことになる。労働日に帰責のない欠勤日は、行政解釈により示されており、A不可抗力による休業日 B 使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日 C 正当な争議行為により就労しなかった日が挙げられている。
「全労働日に入らない日」である休業日というのは、労働義務のない休日や実質的に労働義務のない日である一般休暇日だけではなく、労働者に責任のない欠勤日も含んでいるのであり、大きい意味での実質的に働く義務のなかった(労働者に責任のないところのものを含めて)ものであるといえる。実質的に働く義務のなかった日であるから、全労働日にも入らず、かつ、出勤日数にも入らず、出勤率にはなんら影響しないことになる。大きい意味での、「普通の一般の休業日」であるといえる。
これに対して、「出勤したとみなす」という休業日というのは、計算式で述べたように、より出席率の高い計算方法(全労働日と出勤日数の両方でカウント)であるので、より優遇された取り扱いである。これは、労働者が法律上の権利を行使して休業している日であって国等が支援しているところのものであり、D 業務上の傷病により療養のために休業した期間 E 産前産後の休業期間 F 育児介護休業法に規定する育児・介護休業を取得した期間 (労基39条8項) G 年休を取った日 (昭22.9.13基発17号) である。
さらに、最近の裁判で(八千代交通事件 平成25年最高)を受けて、使用者に無効な解雇を告げられたため就労できなかった日を出勤日に含めるとした。(平25.7.10基発0710第3号)、これは、「使用者側の強い帰責性の下に出勤できなかった日」ということであろうか。
つまり、より出席率の高い計算方法であり優遇された取り扱いとなるのは、無効な解雇期間等と労働者が法律上の権利を行使している休業の2つを現在では指しており、特別のワンランク上の計算方法といえる。
<社労士試験では、この全労働日に入らない日(=労働義務のない日等)と出勤した日をみなす(=欠勤したが出勤した日に含める日)のそれぞれの休日・休業日を覚えなければならないと考える方がいらしゃるかも知れません。しかし、これは「出勤したとみなす」休業日の方が特別に優遇し、出勤率が高くなる取り扱いをしていることから、この特別に設定された「出勤したとみなす」方の休業日の方を覚えればよい。、それは、前述のように「労働者が法律上の権利を行使して休業している日」(D、E、F、G)のことであり、さらに後から判例によって加わった「使用者によって無効な解雇になった期間等」を足して覚えておけばよい。これ以外の他の休業日・休日は、「全労働日に入らない日」として考えるのである。>
参考 労働法 菅野著
労働法 水町著 有斐閣
年休権の発生については、労基法に次のような記述があります。
使用者は、雇い入れの日から6か月以上継続勤務(=労働関係が実質的に存続していればよく、労働契約の更新や合併・在籍出向であっても継続とされる)し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し又は分割した10労働日以上の有給休暇を与えなければならない。そしてその後は、勤務年数を増すにしたがって、その日数は20労働日まで加算される。
この「全労働日の8割以上出勤」の計算方法(出勤率)であるが、出勤率=出勤日数/全労働日で計算される。休業日の種類によって、2つの計算方法があって、1、例えば、使用者側に起因する経営・管理上の障害による休業日のように、「全労働日」の中に入らない日 2、業務上障害により療養のために休業した期間のように、「出勤したとみなす」(=出勤日数に含む取り扱い)ものがある。1、は分母の「全労働日」の中に含めないのであるから、当然分子の「出勤日数」にも含めない。2は、出勤したとみなすのであるから、「出勤日数」に含めるともに、当然分母の「全労働日」にもカウントしなければおかしくなる。
<ここで、ちょっと横道にそれるが、この1「全労働日に入らない」場合の範囲と2「出勤したとみなす」の範囲の事由の区分が、社労士試験に出されるが、なかなか事由が多くて覚えられないが、以下のように理解すれば、簡単に覚えられるのではないでしょうか。>
結局 1、は、出勤率=出勤日数+-0(ゼロ)/全労働日+-0(ゼロ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・労働日に入らない日
2、は、出勤率=出勤日数+α /全労働日+α (α日の出勤したとみなす日があった場合)・・・出勤したとみなす日 となる。
ということで、例えば、全労働日が249日でそのうちの出勤した日が199日とすれば、全労働日に入らない休業日が何日あったとしても、1の出勤率は、(199+-0)/(249+-0)=79.9% <したがって、8割を超えないので、有給休暇は与えられない>
一方、出勤したとみなす日が1日あったとすれば、α=1であるから、(199+1)/(249+1)=80.0%となる。 <8割以上となり、有給休暇が与えられることになる>
このように、ちょっとの差であるが、1の「全労働日に入らない」のと2の「出勤したとみなす」の差は大きい。1は、まったく出勤率に影響がないが、2は、ちょっと出勤率が高まるのである。
ここで、「全労働日」とは、本来「労働者に労働契約上労働義務が課せられている日」のことであり、実質的に労働義務のない日も(休日と同様の一般休暇日)これから除くことになる。さらに、この「全労働日の8割以上出勤」と言うのは、「労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高いものをその対象から除外する趣旨で定められたものであり」(八千代交通事件、水町著労働法)、この趣旨から、労働者に帰責のない欠勤日は、この「全労働日に入らない」ことになる。労働日に帰責のない欠勤日は、行政解釈により示されており、A不可抗力による休業日 B 使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日 C 正当な争議行為により就労しなかった日が挙げられている。
「全労働日に入らない日」である休業日というのは、労働義務のない休日や実質的に労働義務のない日である一般休暇日だけではなく、労働者に責任のない欠勤日も含んでいるのであり、大きい意味での実質的に働く義務のなかった(労働者に責任のないところのものを含めて)ものであるといえる。実質的に働く義務のなかった日であるから、全労働日にも入らず、かつ、出勤日数にも入らず、出勤率にはなんら影響しないことになる。大きい意味での、「普通の一般の休業日」であるといえる。
これに対して、「出勤したとみなす」という休業日というのは、計算式で述べたように、より出席率の高い計算方法(全労働日と出勤日数の両方でカウント)であるので、より優遇された取り扱いである。これは、労働者が法律上の権利を行使して休業している日であって国等が支援しているところのものであり、D 業務上の傷病により療養のために休業した期間 E 産前産後の休業期間 F 育児介護休業法に規定する育児・介護休業を取得した期間 (労基39条8項) G 年休を取った日 (昭22.9.13基発17号) である。
さらに、最近の裁判で(八千代交通事件 平成25年最高)を受けて、使用者に無効な解雇を告げられたため就労できなかった日を出勤日に含めるとした。(平25.7.10基発0710第3号)、これは、「使用者側の強い帰責性の下に出勤できなかった日」ということであろうか。
つまり、より出席率の高い計算方法であり優遇された取り扱いとなるのは、無効な解雇期間等と労働者が法律上の権利を行使している休業の2つを現在では指しており、特別のワンランク上の計算方法といえる。
<社労士試験では、この全労働日に入らない日(=労働義務のない日等)と出勤した日をみなす(=欠勤したが出勤した日に含める日)のそれぞれの休日・休業日を覚えなければならないと考える方がいらしゃるかも知れません。しかし、これは「出勤したとみなす」休業日の方が特別に優遇し、出勤率が高くなる取り扱いをしていることから、この特別に設定された「出勤したとみなす」方の休業日の方を覚えればよい。、それは、前述のように「労働者が法律上の権利を行使して休業している日」(D、E、F、G)のことであり、さらに後から判例によって加わった「使用者によって無効な解雇になった期間等」を足して覚えておけばよい。これ以外の他の休業日・休日は、「全労働日に入らない日」として考えるのである。>
参考 労働法 菅野著
労働法 水町著 有斐閣