元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

時季変更権は、使用者は代わりの時期を指定する必要なし<労働者の時季指定権に任せる>

2016-08-14 17:18:41 | 社会保険労務士
 時季変更権の行使は、代わりの年休を与えられる日の存在が必要<退職者の未消化年休の一括時季指定に注意>

 労働者の年次有給休暇の権利(=年休権)は、与えられた年休日数の範囲で、労働者が具体的にその時期を特定すれば、その日(期間、または時間)に、給与はそのまま支給された上で、労働義務だけがなくなるという効果が生じることになる。普通には、労働者は、これでもって年休の権利を行使できることになる。<これを労働者の「時期指定権」という。>

 ただ、使用者は、「事業の正常な運営を妨げる事由」がある場合は、この労働者の「年休権の行使」を別の日に変更することができることになっている。この使用者の権利は、「労働者の時期指定権」と反対に、労働者の年休権行使の効果を消滅させ、労働者にその日の労働義務を負わせる効果をもつことになる。<これを使用者の「時季変更権」という。>

 労働基準法では、次のように記述してある。
 「使用者は、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」(労基39条5項但し書き)

 これを素直に読む限り、「事業の正常な運営を妨げる事由」がある場合、使用者は代わりの時期を指定して、その日の年休は承認しないと言わなければならないように思えるのであるが、そうではない。

 というのは、労働者は先に述べた「時季指定権」をもっており、いつでも他の好きな別の日を指定できるのであるから、使用者が代わりの日を提案する必要はないのである。むしろ、使用者の提案した日が労働者に都合の悪い日であったりもするので、あくまでも、労働者の時期指定権によって決めさせればよい。

 したがって、使用者は、代わりの日は提案せずに、請求された年休を「承認しない」という意思表示でもって、使用者の時季変更権の意思表示になるが、極端には「年休はあきらめてくれ」という発言でも時季変更権の行使になると考えられる。

 しかしながら、時季変更権の行使は、代わりの年休を与えられる日が必ず存在することが前提となる。どういうことかというと、労働者が退職時に消化していなかった年休を一括して指定するような場合には、代わりの日がないので、使用者は時季変更権は行使できないのである。(そのため、使用者はそれがいやなら、なるべく早めに年休の消化をおこなうよう促すことが必要)

参考 労働法        菅野著 
   労働法        水町著 有斐閣
   労働法        荒木著 有斐閣
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする