元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

本来インターンシップは労働法(労基法・労契法)の適用外であり「無給」ですが・・<学生インターンシップの注意>

2017-05-07 06:40:48 | 社会保険労務士
 企業によっては安い労働力としての利用⇒労働者に該当すれば少なくとも最低賃金の支払いが必要

 学生に対するインターンシップとは、「自分の専攻や将来のキャリアに関連した職業体験」のことを指しますので、あくまでも「職業体験」であるわけで、労働法上の「労働者」ではありません。従って、その報酬としての「賃金」は当然支払われません。せいぜい会社まで行く交通費等などが支払われることになるにすぎません。ただし、会社としては、将来の良質な労働者の確保のために、この機会に会社を知ってもらうなどのPRをしない手はありませんし、みやげものを持たされることにもなるかもしれません。

 一方、インターンシップを賃金を払わないでいいからと、安い労働力として利用する輩=会社もいないとは限りません。労働力として利用するなら労働法の「労働者」となる可能性も出てきますが、労働契約法や労働基準法では労働者を次のように定義しています。
 労基法 この法律で労働者とは、職業の種類をとわず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。(9条)
 労契法 この法律で労働者とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。(2条1項)
 使用されていることと賃金を支払われていることの両方を満たしていれば労働法上の労働者ということになることになりますが、この労働者であるかどうかの具体的な判断基準として「使用従属関係」ということばが、よく使われることがあります。これは指揮監督関係賃金支払いの両方を含む概念ですが、重点は指揮監督関係におかれています。この「使用従属関係」の判断要素して、①仕事の依頼、業務の指示等に対する諾否の自由の有無(諾否が自由でない場合は「労働者」の要素がある)②業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無(指揮命令が認められれば労働者の要素あり)③勤務場所・時間についての管理の有無(管理されていれば「労働者」の要素あり)などが指揮監督関係の主なものとしてありますが、これらを総合的に捉えて、労働者かどうかを判断することになります。

 ここで、「指揮監督関係」の他に、「賃金が支払われていること」が判断の一(いち)要素となることとしてとらえることになると問題でして、安い労働力として利用する会社としては、もともと労働者としてではなく(疑似ですが)インターンシップとして扱われることで、賃金を払わないことにうまみを感じているわけですから、疑似のインターンシップは労働者の定義には当てはまらないことになります。したがって、ここで賃金を支払うことを疑似インターンシップの労働者の定義とすることはできません。そこで、行政通達では次のような判断基準が示されています。(1997・9・18基発636号労働省通達)
 一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり、使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労基法9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと認められる。

 賃金を支払う面も「労働者」として定義すると、疑似インターンとしては当てはまらないため、支払うべき賃金の源泉となるものとして、生産活動に従事した結果として「利益・効果」が企業に発生しているかを問うています。もちろん、使用従属関係が認められなければならないことは、前述のとおり、必要になってきます。

 労働者に該当すれば、最低賃金以上の賃金は支払わなければなりませんし、事故が起これば労災事故として処理しなければならず、労働法上の労働者として扱わなければなりません。それだけ企業としては責任を持たなければならないのです。真摯な会社であれば行政通達の意味するところを考慮に入れて、労働力として利用するような働かせ方はしないはずですが、実際にはブラックな企業もあり、インターンシップを悪用する事例がないとは限りません。学生の方、くれぐれもご注意を!!

 参考 大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A 石田眞・浅倉むつ子・上西充子著 旬報社
    労働法 両角道代・森戸英幸・梶川敦子・水町勇一郎著 有斐閣
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