作業服、作業用品代、出張旅費、社内交際費、器具損料は業務必要経費であって、本来的には労基法の賃金(≠人件費)にはなり得ない
労働基準法の「賃金」とは、労基法が労働者の保護を図るのに重きをおいているから、「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」(労基法11条)とされており、賃金をなるべく広義に解釈して、支払規制の及ぶ範囲をより広くしている。支払規制とは、よくいわれている賃金支払いの4原則 1、通貨払いの原則 2、代理人を介してはならないという直接払いの原則 3、全額払いの原則 4、毎月1回以上一定期日払いの原則の他、男女同一賃金などの労基法上の労働者保護の規制のことである。
そのため、広く解釈する方向で「何が労働の対償に当たるかではなく、何が労働の対償に当たらないのかという、いわば消去法によってその範囲を画する(決める)という手法が採られている。」(荒木労働法)
たとえば、結婚祝い金という名目上は労働とは直接的な関係ないものであっても、支給規定等の基準が定められて、労働者に労働提供の対価として支給されると期待が生じる場合は、広義には「労働の対償」として解されることになり、賃金とみなしている。このように、結婚祝い金のような「任意的恩恵的給付」に該当すれば、本来直接的な労働の対償ではないにもかかわらず、支給基準があってそのとおり支給されることになれば、労働者の期待感から「労働の対償」の範囲内に含めるということであろう。また、従業員のための資金貸付、住宅貸与、レクレーション施設の提供などは、従業員の「福利厚生給付」であり、労働の対償とはいえないものであるが、同じ福利厚生給付であっても、支給規定等のより支給基準が決まっている「家族手当」や「住宅手当」は、同様に「賃金」に当たることになる。
さて、ここからであるが、作業服、作業用品代、出張旅費、社用交際費、器具損料等は、業務遂行のため必要な費用(実費弁償)であり、これは本来企業が負担する費用(=人件費ではない、企業本来のコスト)であるので、結婚祝い金等と同列に「賃金」とすることはできない。これが、企業が支出する旨の基準が定められていても、本来企業が支出すべき費用を労働者に支払ったに過ぎない。すなわち、業務必要経費を本来の費用負担すべき企業が労働者に支払ったものであり、本来的には「賃金」にはなりえないのである。
ところが、法的には勘違いしやすいものとして、通勤手当がある。一見すると会社が負担する業務必要経費の支給として、考え違いをするかもしれない。しかし、民法上は、労働者が債務の履行として労働を提供する場合は、債権者(=使用者)の現在の住所にて行うこととなっており(民484条)、その必要な費用=通勤に要する経費は、労働者(=債務者)の自己負担で行うことになっているところである。(民法485条) それゆえ通勤にかかる経費(通勤手当)は、本来労働者の負担するところであって、前述した会社の負担である「業務必要経費」(=本来的に賃金とは考えられないもの)ではないこととなります。そのため、通勤手当も結婚手当同様、支給基準が定められていれば、労働者に労働の対価として支給されると期待が生じることになり、やはり広義の「労働の対償」となりえます。
むしろ、このように法的にどうのこうの言うより、特に正社員については、就業規則により(場合によっては慣習により)支払い基準が定まっている場合が多く、実務的には、賃金として堂々と支払われているというのが現実でしょう。
参考 労働法 荒木尚志著 有斐閣
労働基準法の「賃金」とは、労基法が労働者の保護を図るのに重きをおいているから、「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」(労基法11条)とされており、賃金をなるべく広義に解釈して、支払規制の及ぶ範囲をより広くしている。支払規制とは、よくいわれている賃金支払いの4原則 1、通貨払いの原則 2、代理人を介してはならないという直接払いの原則 3、全額払いの原則 4、毎月1回以上一定期日払いの原則の他、男女同一賃金などの労基法上の労働者保護の規制のことである。
そのため、広く解釈する方向で「何が労働の対償に当たるかではなく、何が労働の対償に当たらないのかという、いわば消去法によってその範囲を画する(決める)という手法が採られている。」(荒木労働法)
たとえば、結婚祝い金という名目上は労働とは直接的な関係ないものであっても、支給規定等の基準が定められて、労働者に労働提供の対価として支給されると期待が生じる場合は、広義には「労働の対償」として解されることになり、賃金とみなしている。このように、結婚祝い金のような「任意的恩恵的給付」に該当すれば、本来直接的な労働の対償ではないにもかかわらず、支給基準があってそのとおり支給されることになれば、労働者の期待感から「労働の対償」の範囲内に含めるということであろう。また、従業員のための資金貸付、住宅貸与、レクレーション施設の提供などは、従業員の「福利厚生給付」であり、労働の対償とはいえないものであるが、同じ福利厚生給付であっても、支給規定等のより支給基準が決まっている「家族手当」や「住宅手当」は、同様に「賃金」に当たることになる。
さて、ここからであるが、作業服、作業用品代、出張旅費、社用交際費、器具損料等は、業務遂行のため必要な費用(実費弁償)であり、これは本来企業が負担する費用(=人件費ではない、企業本来のコスト)であるので、結婚祝い金等と同列に「賃金」とすることはできない。これが、企業が支出する旨の基準が定められていても、本来企業が支出すべき費用を労働者に支払ったに過ぎない。すなわち、業務必要経費を本来の費用負担すべき企業が労働者に支払ったものであり、本来的には「賃金」にはなりえないのである。
ところが、法的には勘違いしやすいものとして、通勤手当がある。一見すると会社が負担する業務必要経費の支給として、考え違いをするかもしれない。しかし、民法上は、労働者が債務の履行として労働を提供する場合は、債権者(=使用者)の現在の住所にて行うこととなっており(民484条)、その必要な費用=通勤に要する経費は、労働者(=債務者)の自己負担で行うことになっているところである。(民法485条) それゆえ通勤にかかる経費(通勤手当)は、本来労働者の負担するところであって、前述した会社の負担である「業務必要経費」(=本来的に賃金とは考えられないもの)ではないこととなります。そのため、通勤手当も結婚手当同様、支給基準が定められていれば、労働者に労働の対価として支給されると期待が生じることになり、やはり広義の「労働の対償」となりえます。
むしろ、このように法的にどうのこうの言うより、特に正社員については、就業規則により(場合によっては慣習により)支払い基準が定まっている場合が多く、実務的には、賃金として堂々と支払われているというのが現実でしょう。
参考 労働法 荒木尚志著 有斐閣