ペットといえど法的には権利義務の主体となることはできませんので、自分の死後の財産をペットには譲れません。
先日、うちの愛犬がなくなりました。人であろうとペットであろうと「死」という生の収斂は、犬の散歩のときの付き合い程度だったにもかかわらず、やはりそれなりの愛情が深かったのでしょうか、精神的にダメージを私に与えました。特に妻には、子供が育ち巣立っていった、最後の「子供」だったようで、日常の世話をしていたためか、相当のショックだったようです。ドッグイヤーというのは、人の1年が6年に相当するといいますが、、愛犬は16歳になっていましたので、既に人の年齢の90歳を超えていたようです。歴史的には、我が家の子供が犬とじゃれあって、家から離れて行き、その後残った、私たち老夫婦が犬の保護者になりましたが、それが今日まで続き、愛犬の臨終を迎えたのです。
さて、話しを成年後見人制度にもどして、成年後見制度を利用している被後見人に愛犬がいた場合においては、どうでしょう。被後見人は、隣近所や区長さんなどの協力を得ながらどうにか愛犬の世話をしてきました。自分か死んだら、だれが愛犬の世話をしてくれるかどうか気になります。
その前に、逆の場合で、被後見人より愛犬が先に亡くなったときは、「後見人」が包括的な代理権を持っていますから、後見人の代理の範囲内で、被後見人本人の意思を尊重し、犬を手厚く葬ってあげることができますので、まずはひと安心です。
ところが、冒頭の話にもどって、被後見人の方が愛犬より先に亡くなった場合はどうでしょう。「後見人」の仕事は、被後見人の死亡の時点から、管理してきた財産の引き渡しのための財産計算を除いて、全くなくなります。被後見人の死亡の時点から、愛犬といえども物扱いで、相続人の相続財産となってしまいます。相続人が愛犬家で引き取ってくれればいいのですが・・・。
そこで、分かりやすい方法としては、遺言に残すことです。愛犬といえども先ほどもいいましたが、権利・義務の主体となることはできず、モノ扱いですので、「愛犬」そのものに財産を残すことはできません。そこで、信頼できる人に愛犬を「遺贈」して、かわいがってもらうことです。
・遺言者Aは、B(生年月日、住所)に愛犬ポチを遺贈します。
・Bには、ポチを家族同様に大事にし、食事や散歩等その飼育を誠実に行うよう希望します。ポチがなくなったときには私の墓のそばに埋葬してください。
しかしこれでは、愛犬家であって信頼のおける人であれば、よいのですが、遺言では、遺贈の部分しか法律関係は発生せず、他の大事に扱う等の点においては、Aさんの希望にしか過ぎません。そこで負担付遺贈という方法があります。
第○条 遺言者Aは、遺言者の有する預貯金のうち金500万円を、B(生年月日、住所)に遺贈します。
第○条 Bは、この遺贈の負担として、Aが飼育している愛犬ポチを引き取り飼育するものとします。ただし、やむ得ない事情のため飼育が困難な場合は、大切に飼育してくれる人を責任をもって探すものとします。愛犬ポチが死亡した場合は、適当な方法で埋葬、供養してください。
第○条 ポチがAより先に死亡した場合には、遺贈しません。
第○条 遺言執行者をC(生年月日、住所)とします。
Bに対して、利益を与えると同時に、愛犬の世話等の負担を伴うことになりますが、Bが遺贈を拒絶すれば、この遺言そのものが成り立ちませんので、Bには愛犬ぽちの飼育義務もなくなります。やはりBに前もって了解を得ておく必要がありそうです。遺言執行者を指定して、遺言執行を進めるとともに、執行全体の監督してもらうことも必要です。
A、B両者ともに、了解しているのであれば、遺言というかたちではなく、「負担付死因贈与契約」という贈与契約という方法を取ることが可能です。
負担付死因贈与契約
贈与者Aと受贈者Bとの間で、本日、次のとおり死因贈与契約を締結する。
第○条 平成○年○月○日贈与者Aは、以下の財産を受贈者Bに対し贈与することを約し、Bはこれを受託した。
○○銀行○○支店の預金全部
第○条 Bは、本件贈与を受ける負担として、次の各号を履行することを承諾する。
(1) Aの愛犬ポチを引き取って飼育、療養に努める。
(2) 前号の療養に要する費用及び飼育に係る費用はBの負担とする。
(3) 愛犬ポチが死亡した場合には、適宜な方法で埋葬、供養すること。
第○条 Aは執行者としてC(生年月日、住所)を指定する。
第○条 Bが第○条の負担を履行しないとき、Aは本契約を解除することができる。
*遺言・契約の例文については、いずれもQ&A「成年被後見人死亡後の実務と書式」((一社)日本財産管理協会編、新日本法規発行)の中から引用(P121~123)した。さらにここでは、信託法による信託の方法も紹介している。
先日、うちの愛犬がなくなりました。人であろうとペットであろうと「死」という生の収斂は、犬の散歩のときの付き合い程度だったにもかかわらず、やはりそれなりの愛情が深かったのでしょうか、精神的にダメージを私に与えました。特に妻には、子供が育ち巣立っていった、最後の「子供」だったようで、日常の世話をしていたためか、相当のショックだったようです。ドッグイヤーというのは、人の1年が6年に相当するといいますが、、愛犬は16歳になっていましたので、既に人の年齢の90歳を超えていたようです。歴史的には、我が家の子供が犬とじゃれあって、家から離れて行き、その後残った、私たち老夫婦が犬の保護者になりましたが、それが今日まで続き、愛犬の臨終を迎えたのです。
さて、話しを成年後見人制度にもどして、成年後見制度を利用している被後見人に愛犬がいた場合においては、どうでしょう。被後見人は、隣近所や区長さんなどの協力を得ながらどうにか愛犬の世話をしてきました。自分か死んだら、だれが愛犬の世話をしてくれるかどうか気になります。
その前に、逆の場合で、被後見人より愛犬が先に亡くなったときは、「後見人」が包括的な代理権を持っていますから、後見人の代理の範囲内で、被後見人本人の意思を尊重し、犬を手厚く葬ってあげることができますので、まずはひと安心です。
ところが、冒頭の話にもどって、被後見人の方が愛犬より先に亡くなった場合はどうでしょう。「後見人」の仕事は、被後見人の死亡の時点から、管理してきた財産の引き渡しのための財産計算を除いて、全くなくなります。被後見人の死亡の時点から、愛犬といえども物扱いで、相続人の相続財産となってしまいます。相続人が愛犬家で引き取ってくれればいいのですが・・・。
そこで、分かりやすい方法としては、遺言に残すことです。愛犬といえども先ほどもいいましたが、権利・義務の主体となることはできず、モノ扱いですので、「愛犬」そのものに財産を残すことはできません。そこで、信頼できる人に愛犬を「遺贈」して、かわいがってもらうことです。
・遺言者Aは、B(生年月日、住所)に愛犬ポチを遺贈します。
・Bには、ポチを家族同様に大事にし、食事や散歩等その飼育を誠実に行うよう希望します。ポチがなくなったときには私の墓のそばに埋葬してください。
しかしこれでは、愛犬家であって信頼のおける人であれば、よいのですが、遺言では、遺贈の部分しか法律関係は発生せず、他の大事に扱う等の点においては、Aさんの希望にしか過ぎません。そこで負担付遺贈という方法があります。
第○条 遺言者Aは、遺言者の有する預貯金のうち金500万円を、B(生年月日、住所)に遺贈します。
第○条 Bは、この遺贈の負担として、Aが飼育している愛犬ポチを引き取り飼育するものとします。ただし、やむ得ない事情のため飼育が困難な場合は、大切に飼育してくれる人を責任をもって探すものとします。愛犬ポチが死亡した場合は、適当な方法で埋葬、供養してください。
第○条 ポチがAより先に死亡した場合には、遺贈しません。
第○条 遺言執行者をC(生年月日、住所)とします。
Bに対して、利益を与えると同時に、愛犬の世話等の負担を伴うことになりますが、Bが遺贈を拒絶すれば、この遺言そのものが成り立ちませんので、Bには愛犬ぽちの飼育義務もなくなります。やはりBに前もって了解を得ておく必要がありそうです。遺言執行者を指定して、遺言執行を進めるとともに、執行全体の監督してもらうことも必要です。
A、B両者ともに、了解しているのであれば、遺言というかたちではなく、「負担付死因贈与契約」という贈与契約という方法を取ることが可能です。
負担付死因贈与契約
贈与者Aと受贈者Bとの間で、本日、次のとおり死因贈与契約を締結する。
第○条 平成○年○月○日贈与者Aは、以下の財産を受贈者Bに対し贈与することを約し、Bはこれを受託した。
○○銀行○○支店の預金全部
第○条 Bは、本件贈与を受ける負担として、次の各号を履行することを承諾する。
(1) Aの愛犬ポチを引き取って飼育、療養に努める。
(2) 前号の療養に要する費用及び飼育に係る費用はBの負担とする。
(3) 愛犬ポチが死亡した場合には、適宜な方法で埋葬、供養すること。
第○条 Aは執行者としてC(生年月日、住所)を指定する。
第○条 Bが第○条の負担を履行しないとき、Aは本契約を解除することができる。
*遺言・契約の例文については、いずれもQ&A「成年被後見人死亡後の実務と書式」((一社)日本財産管理協会編、新日本法規発行)の中から引用(P121~123)した。さらにここでは、信託法による信託の方法も紹介している。
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