連れ合いの福田緑は今日までに3冊のリーメンシュナイダーの写真集を出版してきましたが、この度、おそらく日本で初めてであろうリーメンシュナイダーの写真展を開くことになりました。その経過や内容に触れた緑の挨拶文がありますので読んでいただければ幸いです。
【ご挨拶】
2019年9月5日記
「啓」を長年読んできてくださった皆さま、ご無沙汰しています。
「啓」100号終刊号を発送してから既に5か月が経過しました。この暑い夏、皆さま如何お過ごしでしたか。「超」が付くほどの大型台風が来たり、激しい雨が降ったり、猛暑が続いたり。こんな夏の被害を受けた方には、心よりお見舞い申しあげます。
私たちは第16回目のドイツの旅(7月16日出発、8月14日帰国)を終え、幸い大型台風10号が東日本に来る前に成田に着くことができました。
今回の旅の目的は、シルヴィアとクラウスとの結婚式に出席することでした。彼女とは23年目のお付き合いになります。三津夫と2人でシルヴィアの新たなスタートに立ち会えたのは幸せなことでした。この日は大変暑かったので着付けをするだけで大汗をかきましたが、何とか着物姿でドイツでの結婚式に参加できたのは私の大切な思い出となりました。
そしてもちろん、ドイツ中世の彫刻もたくさん見て回りました。
今年はフランクフルトのリービークハウス中世彫刻担当、シュテファン・ロラーさんに初めてお目にかかることができ、ニコラウス・ゲルハルト・フォン・ライデンの分厚いカタログをいただきました。思いがけないプレゼントに三津夫は毎日のようにカタログを見て、旅の後半に訪れるネルトリンゲンやストラスブールの資料を読み込んでいました。
ミュンヘンのバイエルン国立博物館、マティアス・ヴェニガーさんとは旅行中に3回もお目にかかりました。一度はヴェニガーさんの住んでいるフライジングを案内していただき、ご家族との交流も深められましたし、一度は国立博物館内の図書室に入ってお話をしました。その際、大きな本棚の中に私の本を2冊見ることができました。そこで、「抜けている続編を日本に帰ったら送りますね」と伝えると、ヴェニガーさんは三津夫が買いたいと言って探していたエラスムス・グラッサーのカタログ(407頁もあるのでした)を私の本と交換に贈呈してくださったのです。しかも、持って帰るのは重たいだろうからと、日本に送ってくださるという嬉しいご配慮をいただきました。
このグラッサーという彫刻家の作品を今年初めてミュンヘン市立美術館で見ましたが、大変動きが豊かでおもしろく、今後は彼の作品も旅のリストに加わること必至です。下に一例を挙げておきます。Moriskenという言葉の意味が辞書に出ていないのでよくわかりませんが、大道芸人が踊るようなイメージではあります。もし意味をご存じの方がいらしたら教えてください。Schneiderは仕立屋のことだそうです。
そして今回、旅の途中で、とうとう4冊目の写真集を作ることを決意しました。グラッサーのようなおもしろい作品の写真も含め、リーメンシュナイダーと同時代の作家たちの写真がずいぶん溜まってしまったのです。「もう1冊写真集をまとめたら、もうそれで終わりにしよう」という三津夫の最後の一押しに負けました。この4冊目の写真集が出来上がった暁には、もう一度ぐらいお便りさせていただきます。ご迷惑かもしれませんが、どうぞお許しください。
ただ、旅行では楽しい思い出がたくさんできた一方、ドイツで垣間見た「あいちトリエンナーレ『表現の不自由展・その後』」の展示中止、さらに韓国に対する日本政府の非常識な対応についてのニュースには胸が痛みました。帰国してからの香港の若者たちの必死の意思表示に対する中国政府の動きのニュースにも心が凍る思いがします。児童虐待、若者の自殺やあおり運転、京アニの放火事件、水害などなど、気持ちが暗くなるニュースが目白押しのこの頃。私たちにできることは何なのかと自問する毎日です。
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このような日常の中ではありますが、写真展への準備も少しずつ進めています。おそらく日本で初めてのリーメンシュナイダーを紹介する写真展となるのではないかと自負していますが、旅行前に作っていったチラシが届いていますので、「啓」の元読者の皆さまには数枚ずつ送らせていただきたいと思います。もしお近くにおいでになる機会がありましたらお立ち寄りくださると嬉しいです。余部はリーメンシュナイダーに興味がある方がいらしたらお手渡しいただければ幸いです。また、お近くの図書館などに購入希望を出していただくときにご利用いただければとも思います。
このチラシにあるように、ギャラリートークには元NHK職員の永田浩三さん(現武蔵大学教授)と、棚田康司さんという若手の彫刻家をゲストにお招きしています。永田さんはリーメンシュナイダーについて名前は聞いたことがあったそうですが、今回写真集をご覧いただき、大変興味をお持ちになりました。ギャラリー古藤さんの毎月1回程度の打ち合わせにも参加していろいろアドヴァイスをくださっています。棚田さんはドイツに7か月滞在したことがあり、小野寛子氏(練馬区立美術館学芸員)に「バルラハの影響を受けているか」と聞かれ、「影響を受けたとするとバルラハよりリーメンシュナイダーだ」と答えたことが紹介されていた雑誌*を目にしたので、是非お話を伺いたいと思い、メールをお送りしたのでした。するとお目にかかったこともない私とのギャラリートークを快く引き受けてくださったのです。そして3回目の締めくくりのギャラリートークは夫、福田三津夫と旅のあれこれや、リーメンシュナイダーだけではなく、日本でほとんど紹介されていない中世ドイツの彫刻についてお話ししたいと思っています。
*「私の美術漫歩」若林覚(著)、生活の友社 2018年8月20日
ここまで書いたところで、本日2019年9月5日、朝日新聞朝刊に第22回自費出版文化賞特別賞として『祈りの彫刻 リーメンシュナイダー3部作』が入賞という記事が載りました。丸善プラネットの白石好男さんがお祝いメールを送ってくださって知ったのですが、三津夫は朝刊を読んでいてあと少しでその頁にたどり着くところだったのに先を越されたと悔しがっていました。私は、せめて入選すれば良いと思っていましたし、三津夫は今回も入選どまりだろうと思っていたとのことで2人でびっくり、喜び合いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さまの今後のご健康と、平和な生活を祈っています。 福田 緑
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会期中、緑は全日程、私もなるべく会場に足を運びたいと思います。いらしていただいて、お話ができれば嬉しいです。 福田 三津夫
次は写真展のチラシ案内です。不鮮明な箇所はご容赦ください。
【ご挨拶】
2019年9月5日記
「啓」を長年読んできてくださった皆さま、ご無沙汰しています。
「啓」100号終刊号を発送してから既に5か月が経過しました。この暑い夏、皆さま如何お過ごしでしたか。「超」が付くほどの大型台風が来たり、激しい雨が降ったり、猛暑が続いたり。こんな夏の被害を受けた方には、心よりお見舞い申しあげます。
私たちは第16回目のドイツの旅(7月16日出発、8月14日帰国)を終え、幸い大型台風10号が東日本に来る前に成田に着くことができました。
今回の旅の目的は、シルヴィアとクラウスとの結婚式に出席することでした。彼女とは23年目のお付き合いになります。三津夫と2人でシルヴィアの新たなスタートに立ち会えたのは幸せなことでした。この日は大変暑かったので着付けをするだけで大汗をかきましたが、何とか着物姿でドイツでの結婚式に参加できたのは私の大切な思い出となりました。
そしてもちろん、ドイツ中世の彫刻もたくさん見て回りました。
今年はフランクフルトのリービークハウス中世彫刻担当、シュテファン・ロラーさんに初めてお目にかかることができ、ニコラウス・ゲルハルト・フォン・ライデンの分厚いカタログをいただきました。思いがけないプレゼントに三津夫は毎日のようにカタログを見て、旅の後半に訪れるネルトリンゲンやストラスブールの資料を読み込んでいました。
ミュンヘンのバイエルン国立博物館、マティアス・ヴェニガーさんとは旅行中に3回もお目にかかりました。一度はヴェニガーさんの住んでいるフライジングを案内していただき、ご家族との交流も深められましたし、一度は国立博物館内の図書室に入ってお話をしました。その際、大きな本棚の中に私の本を2冊見ることができました。そこで、「抜けている続編を日本に帰ったら送りますね」と伝えると、ヴェニガーさんは三津夫が買いたいと言って探していたエラスムス・グラッサーのカタログ(407頁もあるのでした)を私の本と交換に贈呈してくださったのです。しかも、持って帰るのは重たいだろうからと、日本に送ってくださるという嬉しいご配慮をいただきました。
このグラッサーという彫刻家の作品を今年初めてミュンヘン市立美術館で見ましたが、大変動きが豊かでおもしろく、今後は彼の作品も旅のリストに加わること必至です。下に一例を挙げておきます。Moriskenという言葉の意味が辞書に出ていないのでよくわかりませんが、大道芸人が踊るようなイメージではあります。もし意味をご存じの方がいらしたら教えてください。Schneiderは仕立屋のことだそうです。
そして今回、旅の途中で、とうとう4冊目の写真集を作ることを決意しました。グラッサーのようなおもしろい作品の写真も含め、リーメンシュナイダーと同時代の作家たちの写真がずいぶん溜まってしまったのです。「もう1冊写真集をまとめたら、もうそれで終わりにしよう」という三津夫の最後の一押しに負けました。この4冊目の写真集が出来上がった暁には、もう一度ぐらいお便りさせていただきます。ご迷惑かもしれませんが、どうぞお許しください。
ただ、旅行では楽しい思い出がたくさんできた一方、ドイツで垣間見た「あいちトリエンナーレ『表現の不自由展・その後』」の展示中止、さらに韓国に対する日本政府の非常識な対応についてのニュースには胸が痛みました。帰国してからの香港の若者たちの必死の意思表示に対する中国政府の動きのニュースにも心が凍る思いがします。児童虐待、若者の自殺やあおり運転、京アニの放火事件、水害などなど、気持ちが暗くなるニュースが目白押しのこの頃。私たちにできることは何なのかと自問する毎日です。
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このような日常の中ではありますが、写真展への準備も少しずつ進めています。おそらく日本で初めてのリーメンシュナイダーを紹介する写真展となるのではないかと自負していますが、旅行前に作っていったチラシが届いていますので、「啓」の元読者の皆さまには数枚ずつ送らせていただきたいと思います。もしお近くにおいでになる機会がありましたらお立ち寄りくださると嬉しいです。余部はリーメンシュナイダーに興味がある方がいらしたらお手渡しいただければ幸いです。また、お近くの図書館などに購入希望を出していただくときにご利用いただければとも思います。
このチラシにあるように、ギャラリートークには元NHK職員の永田浩三さん(現武蔵大学教授)と、棚田康司さんという若手の彫刻家をゲストにお招きしています。永田さんはリーメンシュナイダーについて名前は聞いたことがあったそうですが、今回写真集をご覧いただき、大変興味をお持ちになりました。ギャラリー古藤さんの毎月1回程度の打ち合わせにも参加していろいろアドヴァイスをくださっています。棚田さんはドイツに7か月滞在したことがあり、小野寛子氏(練馬区立美術館学芸員)に「バルラハの影響を受けているか」と聞かれ、「影響を受けたとするとバルラハよりリーメンシュナイダーだ」と答えたことが紹介されていた雑誌*を目にしたので、是非お話を伺いたいと思い、メールをお送りしたのでした。するとお目にかかったこともない私とのギャラリートークを快く引き受けてくださったのです。そして3回目の締めくくりのギャラリートークは夫、福田三津夫と旅のあれこれや、リーメンシュナイダーだけではなく、日本でほとんど紹介されていない中世ドイツの彫刻についてお話ししたいと思っています。
*「私の美術漫歩」若林覚(著)、生活の友社 2018年8月20日
ここまで書いたところで、本日2019年9月5日、朝日新聞朝刊に第22回自費出版文化賞特別賞として『祈りの彫刻 リーメンシュナイダー3部作』が入賞という記事が載りました。丸善プラネットの白石好男さんがお祝いメールを送ってくださって知ったのですが、三津夫は朝刊を読んでいてあと少しでその頁にたどり着くところだったのに先を越されたと悔しがっていました。私は、せめて入選すれば良いと思っていましたし、三津夫は今回も入選どまりだろうと思っていたとのことで2人でびっくり、喜び合いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さまの今後のご健康と、平和な生活を祈っています。 福田 緑
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会期中、緑は全日程、私もなるべく会場に足を運びたいと思います。いらしていただいて、お話ができれば嬉しいです。 福田 三津夫
次は写真展のチラシ案内です。不鮮明な箇所はご容赦ください。