25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

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2015年12月21日 | 文学 思想

 久しぶりにショットバー「コレクター」に行った。すると、アイラ島のウィスキーが幾つかあり、十分に楽しみ、マスターとも話をした。音楽は僕が要望して、ゴッドファーザーのサントラ盤をかけてもらった。この前も見たばっかりだったので、音楽と映像がつながって、頭に浮かんでくる。

   三島由紀夫の「豊穣の海」の話になった。僕は戦後の小説の中で、この「豊穣の海」と中上健次の「千年の愉楽」、村上春樹の「1Q84」とその他短編集、もっと挙げれば、津島佑子の「夜の光に追われて」と宮本輝の「泥の河」が思い浮かぶ。「豊穣の海」は結婚したときに、2011年の大津波で亡くなってしまった義母からのプレゼントでもらった。僕はとくにこの四部作のうち「暁の寺」が好きで、三島由紀夫の微細な描写力、タイの寺院を言語で描ききるというその才能にびっくりもし、転生の物語がこの三作目で三島と思われる本多という理性ある法律家から見た小説になっていく。主人公の、ジン・ジャン(月光姫)という恋で死ぬ清顕、忠で死ぬ勲の生まれ変わりであるが、この行動の男達から、暁の寺は理性を信じられなくなっている本多がタイとインドのペナレスを旅する 描写に心血を注いでいて、ジン・ジャンの意志はどうでもよく、偶像のように描かれている。

 酔っぱらっているせいか、なぜ「暁の寺」を自分が好むのか、説明できないまま、今度は夏目漱石についての話題になっていった。これも何度も読んだ作家で、僕が好むのは、「それから」と「門」である。口にだして説明すると長くなる。バーで論じるには頭も働かない。

 帰り道、うまく歩けない。家に帰って居間で転げる始末であった。コレクターのマスターは「コレクター劇場」はもう止めたらしかった。そして、一枚のDVDを是非とも見ては、と僕に渡してくれた。「エル・スール」  というビクトリア エリセ監督のスペイン映画である。映像美が絶賛されている。これを見て、またコレクターへ行こうと思う。