実は、昔、幕張のとあるフードコートにあるお店で手伝ったりしているのだが、最初「30万で、店長をやってくれ、最初の4ヶ月は休み無しで」と言われた。
飲食業なんとなく経験があるし、30万っていうのを惹かれたが、もう1個・2個の仕事もあったし、新しいプロジェクトが始まるのと、出版社時代知り合いの板前さんが、フードコートで店を出していて、休み無しで売り上げも安く、ツラソウなのを取材したことがあって、更に最近新しい友達が沢山出来て、特に親しいそいつの家のパーティにも呼ばれているのに休み無しで、約束やぶりたくないなって思って、店長をやることは断った。
で、仕方なく、別の板さんが入って、自分は皿洗いとか、レジ打ちやこま使いとかで、週1~2手伝っていた。
義理があるから人が足りないというのに嘘付いてまで切るわけにはいかなかった。「困った時はお互い様」っつうか。
で、店主の人は、プロの板さんじゃなく、色んな事を企画する人なんだけれど、どうしてもご自身で包丁を持ちたいらしく、数百円の丼なのに、もの凄い拘ってしまって、出すスピードと、フードコート全体の価格帯とはマッチしなかったし、雇った板さんや俺にキビシクした。(1~1000まで口出しする感じ)
自分は、彼の性格解っていたから、
包丁握れるけれど、皿洗いやレジ打ち、配膳に終始して「自分、焼き鳥屋ですから、魚は~(本当なんだけれど)」と言って一切絡むことはをしなかった。
そこは徹底したんだ。
昔、打ちの店に来ていた、串屋さんが、1分間に何本串を刺せるかで殴り合いの喧嘩(上司が部下をねちねち苛めたんだ)になって、うちの店が壊された。(結局弱い立場の部下の方が辞めていったが)
そういうのをカウンターのこっち側から見ていて、料理で競ったり、「俺が一番」って嫌だなって。
自分だって昔は若気のいたりで、こだわり過ぎていたこともあった。
昔は本当に、素手で熱の温度を調べたり、焼き加減を秒単位までこだわっていた。それこそ、この混み具合だとお客様に何秒で運ばれて、あの料理の進み方だと何秒で口に運ぶだろうなと余熱で通る火加減を計算して1本1本出していた。
だから串から抜かれるとそこから熱が抜けるので余熱調理が出来なくて本当に辛かった。
同じ物を何万本と作っていても1本1本が全く違うものなんだ。
そのうちスモーキー・フレーバー(油脂が火に落ちた煙で燻製されることに)にこだったり、わざと香ばしそうな焦げ目を付けたりする遊びを覚えた。(←やり過ぎた。)
無論、7つの火に囲まれながら、他の料理を同時進行をしながらだった。
若い板前が陥るのが「俺の料理で客を集めてやる~」って素材や設備に金をかけて、大事なものを忘れがちだが、自分も料理にこだわって、沢山の何かを犠牲にしてきたと思う。
長である以上、部下には負けたくないと思っている長の下では、無駄ではないかもしれないけれど何処へ行っても同じだし、今、やりたいことはこれじゃないから、ぶつかるな~と考えて、じゃあ、全く別の次元に居ればよいなと思って、下っ端に徹していた。
その別の板さんとは時給とか200円ぐらいしか変わらんし、仕込から毎日出るような責任もないので。
(つーか、自分には他にやる事がある。)
店長が居ない時は、板さんが俺に包丁を持たせてくれて、現場の人達は知っている俺が物を切れる事って感じ。にしておいたが、つい最近、店主に「ちょっと仕込が間に合わないからネギ切ってみろ」って言われて、ハンパな事も出来ずバレた。
「ウマイじゃん」とか言われたが、そりゃ、牛モツ煮込み出すのに、10年間毎日ネギ切ってりゃ、ある程度は~、と思ったが「ありがとうございます」と言っておいた。
昔よく、六本木で働いていた板前さんと話したんだが、
「料理ってあるルールの範囲内なら、無限の組み合わせの可能性があると思うんだよね、あと料理と調理は違うみたいな」と話したら、その板さんも「うん、解る、解る、料理はレシピが無くても出来るもので、調理はレシピが無いと出来ないものだよね」なんて話して、多分、店やって、毎日作り続けていないと、腹の底から出てこなかった言葉だったし、理解し合えなかった言葉だったと思う。
料理と調理は違う2(←リンク)