先日信州マルス蒸溜所を訪ねたときに、『ウイスキーフェスティバルin京都』というウイスキーのイベントで竹平所長がセミナー講師をするという案内をいただいたので参加してきました。
場所は京都平安ホテル、京都御所の西向かいにあります。
竹平所長のセミナーテーマは『クラフトディスティラリーとしての再スタート マルスウイスキー』です。エスポアをアピールするために、真ん中の最前列を陣取りました。
標高798メートルという日本一高地にある蒸溜所は水源や気候などウイスキー製造に適している環境がそろっているそうです。ただし気圧が低いため、エンジェル・シェア=天使の分け前(樽熟成中の蒸発分)が多いことが、良いことだけれども、悩みでもあると話していました。
昨年ポットスティルを更新したことにについては、現役でまだ使えてはいたが、超音波で調べてもらったところ、最も薄くなっている箇所で1ミリくらいだったそうです。このままではそう遠くない将来に穴が開いてしまうので、このタイミングで更新したとのことでした。
右が初溜釜で、左が再溜釜です。
ポットスティルは銅100%でできています。蒸溜の際、蒸気の状態で銅イオンと接触することで、過剰な成分が除去されます。そうして蒸溜を重ねることでポットスティルは薄くなり続けます。身を削りながら美酒を造っているのです。
さて、ここで問題です。その最も薄くなっていた箇所はどこだと思いますか?
上の写真が外に移設された今までのポットスティルです。
更新されたポットスティルはほぼ同型・サイズなのですが、いくつか変更点があります。初溜釜に、サイトグラスと呼ばれる小窓をつけたのはその一つですが、もっと重要なところを変えてあります。その理由が問題の答えです。
ポットスティルはウオッシュと呼ばれるもろみをためるタンクから垂直に伸びる「ヘッド」、ヘッドからほぼ直角に曲がって細くなる「ラインアーム」で構成されています。そのラインアームの先に冷却装置が付きます。
垂直に立ち上がった蒸気は、すべてヘッドのてっぺんに一度当たってからラインアームに流れていきます。ですから、ヘッドのてっぺんが最もすり減って薄くなるのです。更新したポットスティルは、ヘッドのてっぺん部分だけを交換できるようにヘッドを分割してあります。
4種類のサンプルを試飲しました。向かって左から、
No.1 「ニューポット 0ppm 2115」
No.2 「ニューポット 0ppm D1」
No.3 「2012年 新蒸溜 アメリカンホワイトオーク樽シングルカスク」(樽だし)
No.4 「シングルモルト駒ヶ岳 シェリー&アメリカンホワイトオーク2011」
ニューポットとは、再溜釜から出てきたままの原酒のことです。ご存じのように、ウイスキーは樽熟成して少しずつ色が付いてくるので、蒸溜したては無色透明です。
ppm(ピー・ピー、エム)とは、ピート香という独特のスモーキー・フレーバーの強さを表す単位です。0はピート香無しということで、数値が大きいほどピート香が強くなります。
2115とD1は酵母菌の種類です。マルスさんはウイスキーで初めて、酵母を変えることで個性を出すことにトライしています。
No.1とNo.2には確かな違いを感じました。この違いが樽熟成によってどうなっていくのかが楽しみです。
No.3はこのセミナーのために樽から出してきたものです。新鮮で華やかな香りが良い熟成を物語っていました。
No.4はすでに商品化し完売したものです。予想よりしっかりとした熟成を感じました。
セミナーが終わって展示ブースに移ると、すでに大勢の方々が集まり、熱気が充満していました。ウイスキーへの注目度の高さがうかがえました。
帰りがけ、すぐ近くだったので、『スポーツの守護神 白峯神宮』に立ち寄りました。
毬庭では蹴鞠保存会の方々がトレーニングに励んでいるところを見学。京都ならではの風情です。(O.K)