魚のアトリエ”うおとりえ”

新鮮な魚を美味しく食べたい!!
 「魚っ食いの365日

逸品続々、かつお・めばち――2月の魚市場から<後編>

2011年03月06日 | 浜どんどの市場日記
 どんな魚が私の目にとまり、心を惹かれ、手に入れたかを書きとめておきたい。
横浜中央市場での買い物記録である。 

 2月18日(金) カツオ  3.7kg  銚子港/引き縄・日戻り漁

      

 魚の鮮度を見分けるとき、必ず言われることはエラを見よという。
自分も必ずそうするが、普通一般消費者が丸のカツオを一本買うことはないから、
エラを見ることはない。カツオの場合、縞目のはっきりしたものを選べという。
サク取りされたカツオは最早皮をひかれているから、鮮度見分けの基準にならない。

 魚の専門家や料理人はよくそのようなことを言われるが、最早魚屋さんの店頭に
丸のカツオが並んでいることはないのだから。現状を知らないでものを言っている
気がしてならない。むかしは、

  

このような光景を、町の魚屋さんの店頭で見かけた記憶はあるが、もう50年も前
のことだ。ただし、この写真は最近撮ったもの。
 
 それでは、今はどのようにして選んだらよいかと言えば、それを売っている
「魚屋さん」を選ぶしかない。信頼できる店を探すしかない。
自分が市場に直接買いに行くようになった理由はそこにある。市場に行けば丸の
カツオを選んで買えるのだから。

 むかしは、巻き網漁なんていうのはあまりなかったから、たいていは近海で釣り漁
をしていた。いまは、巻き網漁が中心で釣り漁は少ない。どちらが良いかといえば
魚の品質的には断然釣り漁のものである。わたしは釣り漁のものを選ぶ。引き縄は、
釣り漁の一種である。 選んだ魚はねっとりした赤身の美味しいカツオであった。
 いまの時期、秋の戻りガツオのようには脂はない。しかし、昨年は1月、2月に
脂の乗ってカツオがあったから、魚はなかなか分からない。自然界は不思議な世界。
 

 2月26日(土)  メジマグロ  4.1kg  銚子港

      

 2月後半、天候が悪いせいか目ぼしい魚が少ない中、メジの良いのがあって入手。
クロマグロの幼魚とはいえ、4.1kgはカツオなら十分成魚の大きさ。
超新鮮であったことと、ヒマがあったのでじっくり解体、五臓六腑を腑分けした。
エラは鮮紅色で、美しいアート。腹膜はバリバリと音をたてて剥がれた。内臓はそれ
ぞれが独立して弾力がある。胃袋を引き裂いて驚いた。胃の中に残留物は全くなく
これは”空腹マグロ”か。もちろん解体したのだからすべて甘辛く煮て食べた。

    
    
 

 メジマグロ解体・腑分け
  左上:澄んだ目玉でにらめっこ/兜の鉢割り   右上:鮮紅色のエラ/アート作品のよう
  左下:五臓六腑/全く臭みなし           右下:二つ割り/身がはち切れんばかり
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冬の市場は美味い魚がいっぱい――2月の魚市場から<前編>

2011年03月05日 | 浜どんどの市場日記


 2月4日(金)小型の本マス 1.6kg  青森県大間産/定置網
 大間といえばマグロ。超特級のブランドマグロとして名を馳せている。
だから他の魚も美味いに違いないと連想する。津軽半島の突端、津軽の海は
寒風吹き荒む景色をイメージさせる。冬、いちど行ってみたいところだ。

 その思いに違わずいい魚だった。照焼き、塩焼き良し、粕漬けにする間も
なく終わってしまった。 市場では本マスとして流通しているが、「サクラ
マス」が標準名。マスというと、一般に川、湖の魚のイメージが強く、他人
には、これは「海の産」ですと断りを入れなければならない。これからは本
マスのシーズン。しばらく美味にあづかれる。



 2月5日(土) 小ヤリイカ  *産地を確認しそこなう。
大ヤリは高いが小ヤリは安い。安いけれど軟らかくて美味い。美味いけれど
小さいから手がかかる。手がかかる分、味で報いてくれるから嬉しい。
刺身はもちろん、塩焼き、煮付け、いかめし、イカは万能選手。


 2月12日(土) ニシン
 独特の香気、やわらかな小骨の腹に数の子をイメージして塩焼きする。
残念!白子だった。美味さが半減する思いを味わう。この頃、シケが続いて
入荷が少なく、魚を十分吟味しなかったのが敗因。まだ挽回の余地あり。


 同日、先週に続いて小ヤリ。美味かったけれど感動は半減。

    

  

 2月14日(月) サワラ 2.8kg  神奈川県三浦・松輪産/釣り
超鮮度級の逸品。姿形はもちろん、包丁を包み込んで、包丁さばきをとどま
らせるような感触で、魚の「上等}を確信する。透き通るまん丸な目玉(め
んたま)、銀緑紅に輝く魚体は美しいを通り越して妖しい。透明感のある薄
紅色の身質ば弾力をともなって、もっちりと盛り上がる。しつこさを感じさ
せない脂肪分はうっすらと包丁に移る。このような魚にめぐり会えることは
一年を通じても数少ない。
 食味はもちろん非の打ちどころない。刺身、塩焼き、照焼き良し、特に粕
漬けは逸品。3週間近く過ぎた今でもますます香味を増して旨くなってきて
いる。いま残っている3枚をいつ食べようかと、惜しい気がする。
 鮮度がよいので解体・腑分けする。ふっくらと紅白色の肝臓、やっと育ち
始めた卵巣、そして胃袋が空っぽなのが嬉しい。内臓は煮付け、中落ちは大
根と煮付けた、ブリ大根ならぬサワラ大根。サワラは特に皮が美味い。
 こうして、頭の先から尻尾に至るまで、身から皮から骨まで食べつくせば
魚も瞑してくれるだろう。・・・と思っている。


 2月14日(月) 芝エビ  2kg  佐賀県産
 あったら欲しいと思っていたので、欲しい気持ちが先立って品質をよく吟味
せずに買ってしまう。自分の目指すグレードでなかったのが残念。
店との信頼関係の無さと、こちらが求めているものがまだ伝わっていないコ
ミュニケーション不足もある。
  

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寒ブリ・寒ダラ・寒サワラ!・・・1月の魚市場から

2011年02月02日 | 浜どんどの市場日記

1月の市場は魅力がいっぱい!
 毎週、金・土は、横浜中央市場に魚の顔を見に行く。気に入った魚を買う。
どんなに寒くても行く。自分自身が魚を食べる魚と、日本一小さな魚屋として
何がしかの魚を仕入れる。だから、気に入った魚に出会ったときは嬉しい。

 冬の魚には、<寒>を頭につけると旨そうなひびきを持つ。

1月7日(金)  アジ    淡路       0.9kg
  8日(土)  大アジ   相模湾      1.5kg

 11日(火)  サワラ   銚子       3.1kg

 14日(金)  ブリ 鳥取:境港    8.9kg *17.8kg×1/2半身)
 15日(土)   <目ぼしいものなく、何も買わず>
                             
 21日(金)  タラ    常磐       1尾(3.1kg)
 22日(土)  活毛ガニ  三陸       20ハイ

 28日(金)  タラ    常磐       1尾(5.4kg)
         サヨリ   東京湾      6尾(0.5kg)
 29日(土)  サヨリ   東京湾      6尾(0・5kg)



 サワラ  ここ1~2年は、1年を通じてよく入荷する。スーパーでも切り身で
よく見かける。だが、何と言ってもこの魚の美味いのは刺身だ。脂の乗った新鮮な
サワラでなければならない。釣りものか、定置網に限る。刺し網のものでは無理だ。
刺し網ものはすぐ分かる。胸の辺りに網にかかったときの網痕が残っているからだ。
網から逃れようとして暴れるから、身が軟らかく緩んでしまうからだ。



 ブリ  富山湾氷見のブリは、ブランドぶりとして名高い。先ごろその産地偽装
が発覚して話題となった。このブリを買ったのは丁度その頃だった。だから氷見産
を避けたわけではないが、買ったのは境港産。大漁で相場が暴落。高いときの1/5
くらいの価格だ。その翌日は2倍に変動していた。お陰でタップリと美味しい寒ブリ
を堪能した。1本17.8kgはブリの中でも巨体の部類に入る。もっともその半身を
買ったのだが、こんな巨体を買ったのは初めてのこと。感動!!



 真鱈  シーズンだから連日必ず入荷がある。5.4kgは大きさで言えば中く
らいだが、お腹はタップリと膨らんでいる。その白子が好まれ身は二の次だ。だか
らオスが高くメスは半値だ。今回は卵が食べたくてメスを買った。タラの子だから
タラコには違いないが、ふだん食べるタラコとは似ても似付かぬ異様な姿だ。
一言で言えばまさにグロテスク。真っ黒い袋に包まれた卵胞は約1kgあった。
全体重の20%に近い。煮付けにして食べたが、醤油漬けにして食べると美味いと
聞いて早速試してみた。イクラの醤油漬けを食べる高級感はないが、旨いこと美味
いこと温かいご飯にピッタリ。カナッペにも向くと思う。この次は試してみよう。



 サヨリ  これはよく知られた高級魚。東京湾横浜本牧漁港水揚げの超新鮮。
あの長い嘴、痩身に青く白銀に輝く装いは、魚類界最高のスタイリストと言える。
貴婦人の名に相応しい。白く透き通るような身は端麗な味わいそのものだ。
それにつけても真っ黒な腹膜はどうしても似つかわしくない。きっと透き通る身を
貫く光線から内臓を守る術であろう。



 毛ガニ  珍しいものではないが、20パイも一時に買ったことはない。買える
値段であったということだ。わたしの中では、エビ・カニはどうしても高級品とい
う意識が定着しているので、ふだんは避けて通っているが今日は迷わずてが伸びた。
期待にたがわず旨かった。

 
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市場通いの一年を振り返る

2011年01月11日 | 浜どんどの市場日記

さしみで食べた鱈

 市場通いの総決算 一年間、毎週週末の金・土、横浜中央市場によく通ったものだ。
好きなこととは言え、52週×2=104日、休日を差し引いて100日くらいになる。
どんな魚を買ったのだろうか。一年間の記録を月別に整理してみた。
 
          1月  2月  3月  4月  5月  6月 7月 8月  9月 10月 11月 12月
1あかいか                     *  
2あさり              **********  *
3あじ               *********** ***     *** **
4あなご                                  *   ***
5あまえび                                     *   *

6いわし                              *   ****
7いんどまぐろ                   *   *           *
8うるめいわし                                   ◎◎  *
9えぼだい                 *   *                   **      *
10おおめます                   *

11かき      ***
12かつお         ◎       *           *           **
13かます         ◎       *       **  *
14かわはぎ                                        *
15きす                                                   ◎

16きはだまぐろ  *
17さけ                                  ◎       **
18さごち                         ◎
19さば              **              ******      **
20さわら     **                          *           *

21さんま                                     *
22しこいわし       *       **  *
23ししゃも                                            *
23しばえび    ***     *   *                   *   **  *   *
24すみいか                                                ◎**
25たかのはだい                                      *

26たいらがい   *
27たら                                  *           ◎
28ときざけ                        ◎   **
29とびうお                    *   ◎
30どんこ         *

31なめたがれい  *
32にしん         ◎   **  *                               *
33ほんまぐろ   *
34まこがれい                       *
35ます                  ◎*

36まだい                                     *
37むつ                                      *
38めかじき                                            *   *
39めじまぐろ   *
40めだい                         *       *

41めといか    ◎*      *       *
42めばちまぐろ      **                   **             **
43やなぎがれい                              *** *           **
44やりいか                                *   *

 一年間で44種類の魚に出会い、食べたことになる。その日の入荷の中で新鮮さ、
魚体の良さが、選択基準。ひときわ目を引くものを探す。
予め欲しい魚、食べたい魚を決めて行かない。決めて行くと買うことが先に立って、
妥協して買ってしまうから、失敗することになる。一般的な旬にもこだわらない。
上の表を見ても、いわゆる旬を外しているものも多い。◎印で示したものが、思わず
美味い!!と歓声を上げたもの、絶品である。 *印が買った回数を表わしている。

 魚は、天然の産物だから、自然の流れに従って食べるのが、美味しい魚を食べる秘訣
だと思っている。季節の流れに従って目に付くものをピックアップしてゆくだけで、年間
44品種の魚が食べることが出来た。前年は約50種類だから、6品種少なかった。

 ざっと見たところでも、めばる・かさご・たちうお・すずき・ぶりなどが見当たらない。
タイミングよく出会わなかったか、値段が見合わなかったのかも知れない。サンマも1回
買って、後は荷が少なくて何となく買う気が起きなかった。

 それに引き換え、2月のかつお・かます、6月のときざけ、とびうお、10月のうるめ
いわし、11月のたら、12月のキス、すみいかは、
いいものに出会った記憶に残る逸品
であった。
いわゆる旬ではなくても、美味いものは美味いし、そのときの出会い・運ということになる。
市場通いが止められないのは、そこにある。もちろん仕舞った!と、ほぞを噛むこともある。
 
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絶品!追っ駆けのスミイカ 

2010年12月16日 | 浜どんどの市場日記

 左上:大きな目玉                    右上:追っ駆けのスミイカ
 左下:イカの腹にアジが、薄紅色の光を放って、   右下:ゲソ焼き

 
 絶品!のスミイカに出会えた幸運
 中央市場の楽しみのひとつは、運よく絶品・珍品に出会う時である。
7時半、追っ駆け入荷の場内アナウンス。三浦半島・下浦漁港から、朝網のアジ・カマス・
スミイカの入荷の知らせだ。カラン・カランというセリ場の鐘に誘われてセリ場を覗く。
たった1箱だけスミイカのトロ箱がある。誰が競り落とすか目を走らすが、仲買の指の動き
とセリ人の掛け声だけで、誰が落としたかわからない。

 ややあって、トロ箱を覗くと懇意な仲買のセリ札が入っているではないか。しめた!
荷を追うように仲買の店に急ぐ。まだ生きている。甲に触れると反応する。値段を確かめる。

 東京湾冬の味覚
 スミイカは冬の味覚だ。冬の東京湾のスミイカ釣りはファンが多い。釣り味よりもその味覚
に魅せられてのことだ。短足・肉厚・大きな目玉、ねっとりとして軟らかく、ほのかな甘みは
堪えられない。イカはどれも個性があって美味しいが、冬のスミイカはイカ族の味覚の王様と
言ってよい。

 イカの腹から新鮮なアジが
 墨に気をつけながら、内臓を引き出す。な、なんと15センチほどの鯵がまるまる消化もさ
れずに入っているではないか!! それも、薄紅色の輝きを放っているではないか。きっと丸
呑みしたその瞬間に網にかかってしまったに違いない。甲の長さに匹敵するような鯵をどうや
って丸呑みできるのだろうか? 墨を噴出すあの口のようなところからだろうか?もう1パイ
からは、5センチほどに折れた骨だけが出てきた。イカは恐ろしい生き物だ。

 あまりの見事さに、3枚に下ろしてみる。これなら十分に刺身で食べられると思ったが、何
となく気持ちが向かなくて、後で天ぷらにして食べた。もちろんうまかった。めったにないこ
とだからやっぱり生で食べておくべきだったと今でも思うが、体内の魚を食べるにはちょっと
勇気がいるということか。

 お釣りのくる美味さ
 イカは、一部の内臓を除いて殆んど食べられるところがいい。捨てるところがなく経済的だ。
皮を剥くのがやや手数がかかるが、このくらいの手間は、十分お釣りのくる美味さを思えば大
したことではない。

 刺身を堪能し、肝を絡めたゲソ焼きに舌鼓を打った。美味い、旨いを連発しながら。残りの
半身を味噌漬けにして楽しみを後に残した。そうしてまるまる2ハイを一人で平らげた。家内
がイカを食べないから、久々の満足であった。

 *「追っ駆け」:通常の入荷時間に遅れて、入荷してくる魚(荷)を言う。前の車を追っ駆
けて来ることに由来すると聞いた。地場の魚で鮮度が抜群によい。わたしはこれを最も好む。

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