魚のアトリエ”うおとりえ”

新鮮な魚を美味しく食べたい!!
 「魚っ食いの365日

わが家の防災備蓄採点は 30点?

2011年03月27日 | 主夫の台所考

森の木は緑のダム――家庭は食糧備蓄のダム
 東北関東大震災の影響でスーパーがごった返している様を目の当たりにした。
この光景をみて考えさせられるものがある。だれしもわが身を守るのは当然だが、
山盛りの買い物籠を一つ、二つと抱えてレジに並ぶ長蛇の列に唖然とした。

既に米は売り切れ、カップめんなどのインスタントの棚は空っぽだったのを始めパン
や惣菜ものがよく売れていた。
それに引き換え、野菜・果物があまり買われていない様子で、沢山残っていたのは意外。
鮮魚類に手を出す人は殆んどなく、生鮮3品は動かず。

 この買いだめ騒ぎは何だったのか。備蓄が少なかったに他ならない。
森は緑のダムと言われるが、家庭が食糧を初め生活物資の備蓄ダムの役割を果たして
いないことを物語っている。大雨が降ればダムから溢れ、渇水となればたちまちダムが
干上がってしまう姿に似ている。森林が災害の備えであるように、家庭の備蓄が災害へ
の備えであることを忘れてはならないであろう。無駄を省いた効率的な都市型生活が招
いた騒動と言えないだろうか。

 同様に在庫を抱えないジャストインタイムの生産システムもその脆弱さを見せた。つまり、
無駄とゆとりは、きわどいところに同居していると言えまいか。効率化の影で。

 わが家ではどうであったか。幸い、米の備蓄が十分であったから、狼狽することは全く
なかった。秋、冬、初夏の年3回、玄米をまとめ買いをすることに決めているからだ。
生鮮食品と調味料等の常備食品は、週1回、週末に定期的に購入しているので、丁度こ
れから買いにゆくところで地震に遭遇した。幸い生鮮食品には買いだめに走る人がいな
かったので翌日買いに行っても何ら困ることはなかった。調味料も同様であった。

 水は、飲料水の備蓄ゼロであったから、断水したら全く対応力なし。
熱源はどうか。オール電化に切り替えてしまったから、炊事・暖房の備えなし。わずか
に卓上ガスコンロと使いかけのボンベがあるのみ。

 照明は、懐中電灯2機(電池寿命あり)はあったが予備電池ゼロ。思いついて買いに
走ったときは単1、単2はなく単3を20個買う。単3仕様の卓上電灯があるのを思い
出して探し出す。単3電池は常時8個前後常備。従ってこれは何とかなった。仏壇用
小型ローソクも応急照明として、使わなかったがほっとした。

 ラジオ用の単2はなく、ラジオは使えなかった。

 この他、防災常備品は数々あるが、全て万全を期すまでに心が到らない。
こたびの地震では、米はあっても水・燃料の備蓄なく、電力、水の供給が途絶えれば生米
をかじるところであった。クワバラ、クワバラ。

 ガソリンは、残量20lのみ。これで供給再開待ち。昨日はじめて給油した。
買い走りしなかったことで、心の片隅に罪悪感を感じなくて済んだ。

 以上、まとめて防災備蓄対応は30点くらいか。電池のほかは買い走りしなかったの
は、米と常備菜(自家製)の用意があったからか。
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魚談義――漁業と魚食の近未来

2011年03月22日 | 魚談義

    
左:セリ場のマグロ                   右:三崎市場のセリ場

 東北関東大震災
 この魚談義シリーズを、「魚の安定生産と安定消費」の項まで書いたところで
東北関東大震災に見舞われた。中でも世界の三大漁場に近い三陸沿岸が壊滅的な被害を
受けた。大災害ではあったけれども、私たちは絆の尊さを見た。身にまとう雪を振り落
として立ち上がる寒竹でありたいと思う。被災地の皆様とともにありたいと思う。

 世界の海から
 シリーズ最終章に、「漁業と魚食の近未来」を書きかけていた。
わが国の漁業は、地域的に見れば沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へと世界の海に
拡大した。しかし、古くは北洋漁場から、アラスカ漁場から、南氷洋から締め出されて
きた。近年は資源保護の観点からマグロへの規制がかけられている。抗し難い趨勢だ。

 近海に戻る
 再び、遠洋から沖合いへ、沖合い漁業から沿岸漁業へと転換する時が来たように思う。
わが国の旺盛な食需要と嗜好に対応して、世界の海に拡大してきた。これをを転換する
とき、こんどは漁業生産に合わせて消費需要と嗜好を変化させなければならない。

 嗜好の変化
 マグロばかりではない。アジもサバも、イカもタコも、サケ・マス・タラも世界の海
から調達してきたが、その多くは加工食品として、また回転寿司に代表される外食産業
需要を賄ってきた。一方鮮魚が家庭の食卓に上ることは年々少なくなってきている。町
の魚屋さんの減少が如実に物語っている。大型流通の台頭に負けたのではなく、消費者
の需要と嗜好の変化について行けなかった結果と考える。

 世界調達からの転換
 世界の海から調達してくれば、冷凍保管技術の発達により、季節に関係なく調達・流
通させて需要を賄えた。しかしそれも、世界的な魚需要の増加から、いわゆる買い負け
現象からままならないという。一方で、食の国内自給率の引き上げが議論されているが、
消費需要を変化させなければ実現できないし、議論がかみ合わない。
 

 鮮魚を食卓へ
 端的にいえば、頭も骨もある魚を鮮魚として食卓で食べるようにしないと生産に見合う
消費が生まれてこないと考えている。生産に見合った消費とは、季節々々に獲れた魚を
食べる食習慣・食生活にに転換することである。そのためには鮮魚が鮮魚として、新鮮
に提供できる流通に変らなければならない。同時に漁業生産も、消費動向を見据えた形
に変らなければならない。単純に獲れる時獲れるだけ獲るというあり方を変えなければ
、獲った魚を消費することはできない。資源もますます枯渇するばかりだ。

 獲れたものを食べる
 幸いわが国は、長い海岸線とともに恵まれた漁場に囲まれている。この環境の中で魚
の需要を賄えないはずはない。賄わなければならない時代が来ていることを肝に銘じな
ければ、いずれは胃袋を満たすことができなくなる日が来る。
 生産と需要は産業の両輪だ。消費に見合って生産するか、生産に見合って消費するか
だ。魚は天然資源であることを考えれば、獲れたものをいただくことの方が理に叶って
いる。食べたい魚を獲ってくるというのは不遜と言うしかない。このことが言いたくて
このシリーズを長々と書いてきた。


 重複するところもあり、意を尽くせないところもあるが、既述のシリーズのテーマを
列挙してこの稿の終わりとしたい。雑駁な論だがご一覧いただければ幸いです。

 1.鮮魚難民
 2.my魚屋開業:アンテナショップ
 3.家庭における「魚食力」について
 4.後継者問題
 5.魚調理技術者を惜しむ
 6.漁業:それは生産計画のない生産業
 7.魚の安定供給と安定消費
 8.漁業と魚食の近未来

 
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魚談義――魚の安定供給と安定消費

2011年03月10日 | 魚談義
 前回までに、魚食をめぐる諸問題を、生産から流通・消費に至るまで
自分なり観察してきた。 

 ・家庭における「魚食力」、つまり、調理して食べる力が落ちてきていること。
 ・町に魚屋さんが少なくなって、買えない・調理してもらえない状況が出現していること。
 ・漁業生産者の老齢化・後継者難と同時に、消費側も魚食年齢の高齢化・後継者難の状況にあること。
 ・生産計画のない漁業生産の特殊性に問題があること。

ここから、導き出せることは、
 計画的漁業生産に対しては、一方で安定的な消費が確保されなければならないこと。
 計画的生産の必要性については、関係者の間で議論・検討がされるはじめていると
 聞き及ぶ。
 
 安定消費の方は、消費者個人の問題だから「魚食の啓蒙・促進」に尽きるのでは
 ないかと考えられるが、それを支える前提には、「魚は美味しい」と思われなけれ
 ばならない。美味しい魚を実現するには、生産の「量から質への転換」が欠かせな
 いと考える。

 量から質への転換は、計画的漁業生産と関わると同時に、
 生産者→消費者を結ぶ流通の変革がなければならない。

 この関係を整理すると、
 計画的生産には・・・・・・・・・安定的な需要・消費が必要であり
 量から質への転換をして・・・・・魚は美味しいと思われなければならない。
 両者を結ぶ新しい魚屋の出現により・・消費者の需要にこたえる魚を提供しなければ
                   ならない。
 
  生産者も消費者も、高齢化しているから、後継者作りを急がなければならない。

 




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魚たちの顔立ち・・・目は口ほどにものを言う

2011年03月10日 | 魚の姿
 魚たちの表情を追ってみたいと思う。
 目は口ほどにものを言うっていうけれど、本当にそうなんだ。喜怒哀楽、
水族館で泳いでいるのと違って、市場の魚はみんな運命を背負っているんだ。
非情にもその運命で品定めをしようって言うんだから、わが身が怖ろしい。

 この冬市場でお目にかかった魚たちを紹介しよう。


1.たら(鱈)
   

  鱈腹食べるたらは、大口のわりには細かな歯がまばらに生えていて、オジサン顔? あどけないところが好ましい。

2.すみいか(墨烏賊)

     

  東京湾でこの朝獲れたばかりのすみいか婦人は、漆黒の瞳をしていました。

3.めじな
   

  相模湾佐島で出会ったこのメジナ君、まっくろで何とも地味な衣装。ストロボ一閃、宝石のようなブルーアイが輝いた。
  魚は見かけによらないって、このことなんですね。


4.さわら(鰆)
    

  三浦三崎は松輪産の朝揚げさわら少年は、釣り上げられたのが如何にも無念な面持ち、しっかりと口を結んでいました。
  キミ、美味かったよ!!


5.赤地かれい(鰈)
    

  常磐の海から来たカレイ君、まだ眠気まなこでした。

6.さより(細魚)
      

  鎌倉に遊びに来て、悪い男に騙されて捕まってしまったの。腰越沖辺りを泳いでいるときに。その上
  市場に売られてしまったの。安いお金で。・・・でも、いい人に助けてもらってよかった! 美人だからかしら。/font>

7.ほんます(桜鱒)
    
  
  青森県は津軽半島の突端、大間の定置網にうっかり捕まってしまったんだ。残念無念!
  目が小さいからだって、、、うるせえ! 



8.やりいか(槍烏賊)

   

  こども扱いされて悔しいんだけれど、軟らかくって、美味いんですって!!

9.めじまぐろ(鮪)
   
  
  銚子沖まで泳いできたとき、疲れちゃって、流れてきた縄を掴んだら釣り上げられちゃったんだ。
  大間の大叔父は今年の正月、三千万円で買われちゃったんだ。築地っていうところは怖いところだ。


10.けがに(毛蟹)
   

  止めてくれよ、釜茹でするつもりなんだろ? ゴメン許してくれ・・・


 この続き、「春篇」を予定しています。
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逸品続々、かつお・めばち――2月の魚市場から<後編>

2011年03月06日 | 浜どんどの市場日記
 どんな魚が私の目にとまり、心を惹かれ、手に入れたかを書きとめておきたい。
横浜中央市場での買い物記録である。 

 2月18日(金) カツオ  3.7kg  銚子港/引き縄・日戻り漁

      

 魚の鮮度を見分けるとき、必ず言われることはエラを見よという。
自分も必ずそうするが、普通一般消費者が丸のカツオを一本買うことはないから、
エラを見ることはない。カツオの場合、縞目のはっきりしたものを選べという。
サク取りされたカツオは最早皮をひかれているから、鮮度見分けの基準にならない。

 魚の専門家や料理人はよくそのようなことを言われるが、最早魚屋さんの店頭に
丸のカツオが並んでいることはないのだから。現状を知らないでものを言っている
気がしてならない。むかしは、

  

このような光景を、町の魚屋さんの店頭で見かけた記憶はあるが、もう50年も前
のことだ。ただし、この写真は最近撮ったもの。
 
 それでは、今はどのようにして選んだらよいかと言えば、それを売っている
「魚屋さん」を選ぶしかない。信頼できる店を探すしかない。
自分が市場に直接買いに行くようになった理由はそこにある。市場に行けば丸の
カツオを選んで買えるのだから。

 むかしは、巻き網漁なんていうのはあまりなかったから、たいていは近海で釣り漁
をしていた。いまは、巻き網漁が中心で釣り漁は少ない。どちらが良いかといえば
魚の品質的には断然釣り漁のものである。わたしは釣り漁のものを選ぶ。引き縄は、
釣り漁の一種である。 選んだ魚はねっとりした赤身の美味しいカツオであった。
 いまの時期、秋の戻りガツオのようには脂はない。しかし、昨年は1月、2月に
脂の乗ってカツオがあったから、魚はなかなか分からない。自然界は不思議な世界。
 

 2月26日(土)  メジマグロ  4.1kg  銚子港

      

 2月後半、天候が悪いせいか目ぼしい魚が少ない中、メジの良いのがあって入手。
クロマグロの幼魚とはいえ、4.1kgはカツオなら十分成魚の大きさ。
超新鮮であったことと、ヒマがあったのでじっくり解体、五臓六腑を腑分けした。
エラは鮮紅色で、美しいアート。腹膜はバリバリと音をたてて剥がれた。内臓はそれ
ぞれが独立して弾力がある。胃袋を引き裂いて驚いた。胃の中に残留物は全くなく
これは”空腹マグロ”か。もちろん解体したのだからすべて甘辛く煮て食べた。

    
    
 

 メジマグロ解体・腑分け
  左上:澄んだ目玉でにらめっこ/兜の鉢割り   右上:鮮紅色のエラ/アート作品のよう
  左下:五臓六腑/全く臭みなし           右下:二つ割り/身がはち切れんばかり
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