注目度が上がるのは必然だろう。
DREAM THEATERの『PARASOMNIA』。
16thアルバムにして、13年ぶりにオリジナルドラマーのマイク・ポートノイが復帰したアルバムでもある。
ポートノイが離脱した経緯はオレが今更綴らんでも知られている事だろう。
しかし、ジョン・ペトルーシ以上に、ジェイムズ・ラブリエとの確執が想像以上に強かったとは思わなかった。
他のメンバーも思う所はあったみたいだが、復帰の鍵はジェイムズとの邂逅だった、という事だ。
12年に亘ってポートノイの後任を務めていたマイク・マンジーニの事を悪く言うやつは殆ど居ないだろうと思う。
実際オレはマンジーニ加入以降のアルバムも悪くないと思っていたし、なんだったら前作『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』は、ドリムシのカタログの中でもお気に入りの一枚となるほどのアルバムであり、間違いなくマンジーニ在籍時の最高傑作だと思っている。
それでも、
オリジナルメンバーであり音楽創造の核に居た人物が戻ってきたという意味は大きいと言わざるを得ない。
以前に、ポートノイとマンジーニのドラミングの違いを書いた事があったが、ドリムシがプログレッシヴ・メタルと言われる所以が何処にあるのか?というのが、結局のところポートノイのそのドラミングから波及したこのメンバーの音楽であるという事。
ソレを立証させたのが、今作『PARASOMNIA』である。
アルバムタイトルは睡眠時異常行動という意味を持ち、全ての曲がそこにまつわる内容となっており、結果的にコンセプトアルバムへとなっていたようで、その意味合いを表現する為にヘヴィ且つダークな雰囲気がアルバム全体を覆う。
「言っとくがドリムシはメタルバンドなんだよ」とメンバーが主張するかのように作り出されたのが、かつて『TRAIN OF THOUGHT』であったように、今回もそこに近い路線で披露されている。
ただ、『TRAIN~』がアートワーク同様モノクロな色合いが占めるヘヴィ/ダークな要素をストレートに押し出したアルバムなのに対し、『PARASOMNIA』は彩り豊かな暗色によって生み出された作風に感じ取れる。
この違いは、鮮明度の高いプログレッシヴミュージックという、ポートノイ不在時の標榜が完全に土着化した証であり、ペトルーシとポートノイによるドリムシに対する音楽的思想が、立体的構築を更に鮮明化させた様な状態になったと言える。
最初、第1弾MV「NIGHT TERROR」を視聴した時は、「あーやっぱりオラオラドラミング披露するやつ持ってきたか」程度くらいの認識しか持てなかった為、アルバム全体を期待はしていたものの曲単体としてはそこまで気持ち的に盛り上がるものはなかったんだよな(以降もMV発表していたが、手あたり次第視聴すると期待感が薄れそうなので避けていた)。
だが、アルバム冒頭を飾るイントロダクション「IN THE ARMS OF MORPHEUS」が始まった途端、このアルバムへの期待感は一気に高まった。そしてそこから「NIGHT TERROR」へと繋がっていくワケだが、この2曲はこれでひとつの曲であり、オレとしては「NIGHTMARE TO REMEMBER」に相対する曲の様に感じた。
この流れで聴いた時、初めてこの曲の良さを実感できたし、これまでのドリムシを引き継ぎながらもポートノイの存在を示す攻撃的なドラミングが合わさった、現時点で最新ドリムシの代表曲となるものだと感じた。
あとは「MIDNIGHT MESSIAH」かな。
コーラスパートでの疾走感は実はこれまでドリムシでありそうでなかった様な感触で、このスピード感覚はメタルを聴いている人間からしたらクセになりそうなグルーヴを内包している。
勿論、他の曲も長尺ながら曲としての主張どころをしっかりと押し出している為、相変わらずバンドらしい個性で彩り固められた世界観が展開されている。
正しくポートノイ復帰、およびバンド結成40周年を祝うに相応しいアルバムを引っ提げてきたワケだが、個人的には今後のライヴに於ける、マンジーニ在籍時の曲を披露しにかかる割合がどれほどのものかが気になる。
ポートノイが不在の時でも、このバンドは邁進していった。
数々の功績を打ち立てた時期の曲たちを、前任者が戻ってきたから無しよ、という事にしてもらいたくはないな。
様々なバンドが同様の経緯によって、ライヴで演奏をまったくしなくなり、下手すりゃその時期を空白にしてしまおうという悲しい仕打ちをしているのを間々見ているが、ドリムシに限ってそのような事はないと信じたい。
バンド40周年は、ポートノイ不在時の12年も含めてなのだから。