AKILA's えgo

気まぐれに、ドラムや音楽の気になった事上げとります。

過去と現在の結実

2024-12-03 12:49:32 | 音楽・ライヴ

先行MVをチェックした時から、待ちわびていた。

OPETHの『THE LAST WILL AND TESTAMENT』。
14thアルバムで、4th『STILL LIFE』以来のコンセプトアルバムとなっている。

一応断っておくと、今回のアルバムと『STILL LIFE』がコンセプト的に繋がっているという事は無い。

表題の意味は即ち、音楽的表出の事である。

『WATERSHED』以前のOPETHは、デスメタル要素を交えた、70年代プログレッシヴロックの色合いの強いバンドと受け止められていた(デスメタルという点に於いては、低音の使い方と、ミカエル・オーカーフェルトのグロウル/デスヴォイスがそう思わせる要因だろう)。
それが『HERITAGE』以降、より60~70年代的ヴィンテージロックの香りが強いプログレ/ジャズロック的路線に傾倒し始め、バンドとしての武器の一つであったミカエルのグロウルも封印。
OPETHとしての音楽的個性は尚も消える事はなかったが、メタル所縁の音的刺激性は減衰したと思わざるを得なかった。

オレもOPETHはちゃんと追ってきているので、『HERITAGE』以降の彼らの音楽的進み方を否定はしなかったが、賛と言える程に支持はできなかったのが正直なところ。
その路線内でまだよく聴いていた方なのは『SORCERESS』くらいで、あのアルバムの楽曲はハードロック的ストラクチャーが比較的出ていたこともあった為「今のOPETHとしては理想的かな」と、当時としては納得していたがそれでも複雑な心境だったね。

ミカエルが当時のメタルの音楽の在り方について嫌気が差していた理由も理解できるし、「過去の音楽が決して演奏できなくなったワケじゃないから、その辺は過去のカタログやライヴで聴いてもらえば良いだろ」というミュージシャン/アーティストとしての見解もまた頷けるところ。

でも、かつてあれだけの過激な要素を持ち合わせていた楽曲を、ライヴで今でも披露できるんだったら、現在進行形でそーいうのをまた創り出してくれと思ってしまうのが、いちファンとしての心理でもあったりする。
厳密に言えば、過去のメタル的要素を強く表していた時のOPETHが好きないちリスナーといったところか、オレの場合は。

そこでいきなり耳に届いたのが「§1」という曲。
MVを聴いた時「ん?新曲だよな?!」と一瞬何かの間違えではないかと疑ってしまったが(笑)、期待感は大いに膨らんだ。
サウンドにヘヴィネスが宿り、ミカエルのグロウルが聴こえてきたんだからね。

ミカエルが往時のスタイルで曲を生み出す事に飽きを感じていたという発言から、今後はやることはないんだろうと半ば諦めの感覚も抱いていたので、あの時の聴こえ方は新鮮だった。

実際、楽曲の在り方としては、『HERITAGE』以降に身に着けた、掴みどころが判別しにくい、即興性の強い流動的フレーズを軸とした、水墨画的な音楽方向性(ミカエルは今回のアルバムの曲調について「気まぐれで書かれたような感じ」と言っているが、正に言い得て妙)であるのは変化ないと思うが、そこに明らかに不穏さの滲み出るヘヴィネス、果てはその音に呼応するかの様に復活したクリーン/グロウルの切り替え歌唱。

過去と現在が交錯して、新たなOPETHの道筋が開かれたというのが、今回のアルバムとしては最も大きなコンセプトなのではないかと、個人的には思うんだよね。

因みに、今回のアルバムでは、2022年に加入したドラマー、ワルテリ・ヴァユリュネンの初お披露目のアルバムでもある。
ワルテリは元PARADISE LOST、故アレキシ・ライホ率いたBODOM AFTER MIDNIGHTでも叩いてきた人物。

アレキシの件は残念であったが、彼の実力が存分に発揮されるべく、OPETHのドラマーの座が空席になっていたのは何とも運命的にも思える。
まだ20代後半程度だったんじゃないかと思うが、こうしてOPETHにフィットしているのは、流石に上述2バンドで叩いてきたという実績のある人物だと感じる。

ま、結局のところミカエルの気まぐれによって今後のOPETHがどうなるかは判らないが、目下はこの懐かしくも新しいOPETHをよく聴いていきたい。