年に一度の町内の祭りの日。近所の八幡神社では、子供心には広い境内だったが、いま改めて見ると狭い境内なのだが、それなりに芝居小屋のようなものが設置され、ワクワクしたものだ。
その小屋は見せ物小屋で、当時「ニワトリを丸呑みする少女」というのがあった。
私は、どうしても見たくなり父にせがんだ。
渋々父は私を連れて入場券を買い、中に入るのだが、そこにはニワトリを片手にもって、ただじっとしている少女がいる。
そして、待てど暮らせど、いっこうにショーは始まらない。
狭い通路に並ぶ客たちは、後ろから後から入る客に押されて、何も見ずに出ていることになる。それを不服に騒ぎになる。
そう思っていると、一瞬のうちに少女の手からニワトリは消え、いつの間にか少女の口の周りが血だらけになる。
そして、この「インチキなショー」は終わりとなった。