筆者は先般ブログで「ロシア連邦の政治体制、法制度等からみた非民主化の実態:新たな連邦体制崩壊の危機はあるのか!」を3回連載(その1,その2 ,その3完 )で取り上げた。この執筆時に最も気になったのは、果たしてロシアの暴走を止める手段は他にないのかという点である。
具体的にいうと、(1)EUの2014年3月以来のロシアに対する制裁措置を概観、(2) 政治的に露見された法人、個人や法人・機関への重き経済・金融・人事等制裁はどのようなものか、その有効性や検索方法、(3) 加盟国にロシア連邦の軍事侵攻のリスクをかかえるEU全体 の具体的対応策、(4) NATO(北大西洋条約機構)の取組み、(5)INETRPOL(国際刑事警察機構)の取組み、(6) Eurojust(European Union Agency for Criminal Justice Cooperation:欧州司法機構) の取組み、(7)Europol(欧州刑事警察機構) 等の取組み、最後に(8)ICC(国際刑事裁判所) の取組み等を概観する。
今回は3回に分けて掲載する。
1.EUの2014年3月以来のロシアに対する制裁措置を概観
【要旨】
2014年3月以来、EUはロシアに対し、以下のことに対応して、各種制裁措置を課してきた。
① 2014年のクリミアの違法な併合(注1)
②ドネツク州とルハンスク州の非政府支配地域を2022年に独立した団体として承認する決定
③ 2022年のウクライナに対する、いわれのない不当な軍事侵略
この措置は、次の目的で設計されている。
① 戦争資金を調達するクレムリンの能力を弱体化させる。
② 侵略に責任を持つロシアの政治エリートに明確な経済的、政治的コストを課す。
またEUは、ウクライナ侵略への関与に対応して、ベラルーシ共和国(ここ,ここ )に対する制裁措置を採択した。
2.政治的に露見された法人、個人への制裁
(1)わが国のロシア制裁
外務省・財務省・経済産業省連名で「ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について」を2022.2.26~2022.6.7 の間、計12回措置を発令している。
その制裁の内容は、(1)資産凍結等の措置:外務省告示(2022年7月5日公布)により資産凍結等の措置の対象者として指定されたロシア連邦の関係者(個人・団体)及びウクライナ東部の不安定化に直接関与していると判断される者(個人)に対し、(ⅰ)及び(ⅱ)の措置を実施する。
(ⅰ) 支払規制
外務省告示により指定された者に対する支払等を許可制とする。
(ⅱ) 資本取引規制
外務省告示により指定された者との間の資本取引(預金契約、信託契約及び金銭の貸付契約)等を許可制とする。
(2)欧米主要国(米国を除く)におけるロシア制裁の決定内容と決定告示、さらに検索システムの概要比較
2022.9.2 ピーターソン国際経済研究所(PIIE)「ウクライナに対するロシアの戦争: 制裁の国別タイムライン」が良くまとまっている。一部ページを見本としてあげる。
3-1.EUの制裁措置の全体構成
欧州連合理事会サイトから重複しないかたちで引用する。より時系列の詳細を参照されたい。
なお、第4項のドイツで見るとおりEU加盟国においてEUの制裁措置の国内法化等の対応が進められていることは言うまでもない。
【詳細情報】
(1)個々の制限措置
略す。
(2)資産凍結と渡航制限
インフォグラフィック - ウクライナに対するEUの対ロシア制裁(2014年以降)
1206の個人と108の団体が、ウクライナの領土保全、主権、独立を損なったため、資産凍結と渡航禁止の対象となっている。制裁対象の個人および団体のリストは、常に見直され、欧州連合理事会による定期的な更新の対象となる。
制裁対象者には以下が含まれる。
・ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン(Владимир Владимирович Путин)
・セルゲイ・ヴィクトロヴィチ・ラブロフ( Серге́й Ви́кторович Лавро́в)
・ウクライナのヴィクトル・ヤヌコーヴィチ元大統領(2010〜2014年)(Віктор Федорович Янукович)
・ロシア連邦議会下院のメンバー
・国家安全保障会議のメンバー
・軍関係者・高官
・ロマン・アブラモビッチ(Рома́н Арка́диевич Абрамо́вич)を含む実業家や新興財閥オリガルヒ(注2)
ブチャとマリウポリで行われた残虐行為の責任者
・モスクワ市長のような地元の政治家
・親クレムリンと反ウクライナのプロパガンダ行為者
・ウクライナで戦うためにシリアの傭兵の募集に関与した個人
この措置は2014年3月に初めて導入され、2023年3月15日まで延長された。
ウクライナの領土保全に関するEUの制限措置下にある個人および団体のリスト(EU官報)参照。
(3)ウクライナ国家資金の不正流用
2014年3月、欧州連合理事会はウクライナ国家資金の不正流用に関与した個人の資産を凍結することを決定した。これらの措置は、2020年3月に2023年3月6日まで延長された。
インフォグラフィック - ロシアのウクライナ侵攻に対するEU制裁
(4)メディアに関する制限事項
2022年、EUはロシアの国営放送局5社の放送活動を停止させた。
・ロシア通信社「スプートニク(Спутник)」(ロシア政府系メディアである「ロシアの今日」の傘下にある)
・ロシアの今日(Россия Сегодня)
・Rossiya RTR / RTR Planeta
・ロシア 24 ロシア 24 (注3)
・テレビセンター・インターナショナル(TV Centre International)
これらの報道機関は、ロシア政府によって、ロシア、EU、その加盟国を不安定にすることを目的としたプロパガンダを含む、ウクライナ侵略に関する情報を操作し、偽情報を促進する手段として利用されてきた。
(5) 外交措置
2014年、EU-ロシア首脳会議は中止され、EU加盟国はロシアとの定期的な二国間首脳会談を開催しないことを決定し、ビザ問題に関するロシアとの二国間協議は中断された。
ソチでのG8サミットの代わりに、2014年6月4日~5日にブリュッセルでロシア抜きのG7会合が開催された。それ以来、G7形式での会合が続いている。
また、EU諸国はロシアの経済協力開発機構(OECD)と国際エネルギー機関(IEA)への加盟に関する交渉の中断を支持した。
2022年2月、EUは、ロシアの外交官、他のロシア当局者、ビジネスマンは、EUへの特権的アクセスを許可するビザ円滑化条項の恩恵を受けられない可能性がある旨決定した。なお、この決定は、一般のロシア国民には影響しない。
(6) 経済関係の制限
A.クリミア共和国(ウクライナ語:Крим)とセヴァストポリ市(ウクライナ語:Севастополь)
欧州連合理事会は、ロシア連邦によるクリミア共和国とセヴァストポリ市の違法な併合に対応して制限措置を採択した。この措置は、EU国民およびEUに拠点を置く企業に適用された。その範囲はクリミア共和国とセヴァストポリ市 (注4)の領土に限られている。
これらの措置には以下が含まれる。
- 商品の輸入禁止
- 特定の経済部門およびインフラ・プロジェクトに関連する貿易および投資の制限
- 観光サービスの提供の禁止
- 特定の商品や技術の輸出禁止
2022年6月20日、欧州連合理事会はこれらの措置を2023年6月23日まで延長した。
B.ドネツク州(Донецька область)とルハンシク州(Луганська область)の非政府支配地域
欧州連合理事会は、ウクライナのドネツク州とルハンスク州の非政府支配地域を独立した組織として承認し、その後、ロシア軍をこれらの地域に派遣するという決定を進めるというロシア連邦の決定に応じて、制限措置を採択した。
この制限措置の範囲は、ドネツク州とルハンスク州の非政府支配地域に限定されている。これらの措置には以下が含まれる。
- 商品の輸入禁止
- 特定の経済部門に関連する貿易および投資の制限
- 観光サービスの提供の禁止
- 特定の商品や技術の輸出禁止
これらの措置は2023年2月24日まで実施される。
(9)経済協力に関する措置
経済協力に対する制限は、2014年7月にEU首脳によって導入された。
・欧州投資銀行(EIB)は、ロシア連邦における新たな融資業務の署名を停止するよう求められた。
・EU加盟国は、欧州復興開発銀行(EBRD)の取締役会内での立場を調整し、新規事業の資金調達も停止することに合意した。
・EUのロシアとの二国間および地域協力プログラムの実施が再評価され、特定のプログラムが中断された
3-2 EUの司法機関と内務機関がウクライナを支援する具体的な行動を発表
JHAAN : EUの司法・内務ネットワーク(JHAAN )(注5)は、自由、安全、司法の分野で活動する 9 つの EU 機関(CEPOL, EIGE, EMCDDA, EUAA, eu-LISA, Eurojust, Europol, FRA , Frontex))を結び付けてウクライナを支援している。
その一環として2022年8月23日、EUの司法・内務ネットワークは、EUのウクライナとの連帯への貢献に関する共同論文を発表した。
以下で、筆者の補足により仮訳を含め9つのEU機関の機能を改めて詳しく解説する。
CEPOL(European Union Agency for Law Enforcement Training):欧州連合法執行訓練機関
CEPOL は、法執行官向けのトレーニングの開発、実施、および調整を専門とする欧州連合の機関であり、2016 年 7 月 1 日 (新しい法定権能日) 以来、CEPOL の正式名称は「法執行訓練のための欧州連合機関」となった。CEPOL の本部はハンガリーのブダペストにある。
① CEPOLはなぜ存在するのか?
CEPOL は、セキュリティ分野における EU の優先事項に起因する問題について、EU 加盟国 および第三国の法執行官の間の協力と知識共有を促進することにより、特に、深刻かつ重大で組織化された犯罪に関する EUの政策サイクルEU Policy Cycle:EMPACT)(組織的かつ重大な国際犯罪がもたらす脅威を特定し、優先順位をつけ、対処するためのEU加盟国主導の手段)を受けたもので、これは関連する加盟国の特別な構造化された学際的な協力プラットフォームであり、すべてのEUの機関や機関(Europol、EBCGA/フロンテックス、Eurojust、CEPOL、OLAF、EU-LISA、EFCAなど)、関連する第三国、国際機関、その他の(公的・民間の)パートナーの支援を受けている。
② CEPOLは何を行うのか?
CEPOL は、EU 加盟国の法執行官のための訓練機関のネットワークをまとめ、セキュリティの優先事項、法執行機関の協力、および情報交換に関する最前線の訓練を提供することで彼らをサポートする。 また、CEPOL はEU 機関、国際機関、および第三国と協力して、最も深刻なセキュリティ上の脅威に共同して対応できるようにしている。
③ CEPOL はどのように機能するのか? またトレーニング・ ポートフォリオはどのように作成されるのか?
CEPOL は、その理事会(Management Board)に対して説明責任を負う専務理事(Executive Director: Montserrat Marín López)が率いる。
Montserrat Marín López氏
その理事会は、EU加盟国と EU 委員会の代表者で構成される。理事会の議長(Philippe Durand)は、欧州連合理事会の 18 か月プログラムを共同で準備した 3 つの加盟国の代表である。理事会は、少なくとも年に 2 回開催される。さらに、CEPOL は、CEPOL の活動への参加を希望する法執行官に情報と支援を提供するために、すべての加盟国に専用の国家ユニット (CNU) を設置している。 CNU も CEPOL の運営をサポートしている。
CEPOLの年間作業プログラムは、このネットワークやその他の利害関係者からの意見を基に構築されており、その結果、EU の内部安全保障戦略の優先分野における加盟国のニーズを満たすように設計された、話題に的を絞った活動が行われている。さらに、CEPOL は、EU のセキュリティの優先事項に対処するためのトレーニングの必要性を評価する。
CEPOL は、知識、研究、技術の関連する開発を統合し、強化された協力を通じて相乗効果を生み出すことにより、革新的で高度なトレーニング活動を提供するために常に努力しており、現在のポートフォリオには、住宅活動、オンライン学習 (ウェビナー、オンライン モジュール、オンライン コースなど)、交換プログラム、共通カリキュラム、研究および科学が含まれる。
欧州ジェンダー平等研究所(European Institute for Gender Equality:EIGE)は、欧州連合の専門機関の一つ。 2006年12月20日の「欧州理事会規則 No 1922/2006 」に基づき設立され、2007年4月に所長職が募集された。本部はリトアニア共和国のヴィリニュス(Vilnius (Lithuania))に所在している。
EIGEの資金は欧州委員会によって供給されており、2007年から2013年にかけての期間で5,250万ユーロの予算が投じられた。この新設された欧州研究所は男女間の平等を推進し、性差別を防止するために欧州連合の機関と加盟国を支援する。研究所は政策立案者に必要な信頼に足る研究データや情報を収集し、分析して、これを広める。この成果物は一般に公開されており、ヴュリニスの研究所には図書館とドキュメント・センターを保有している。
欧州連合理事会と欧州議会によって委任された任務と目的の追求は、フレームワークの戦略とイニシアチブを通じて達成される。 加盟国の 18 人の代表者と欧州委員会の代表者で構成されて管理は理事会に引き継がれた。理事会に加えて、EIGE を諮問機関としてサポートする Expert Advisory Council がある。 この機関の手段の 1 つは、候補国と加盟国の関与である。 さらに、社会的パートナー、市民社会組織、欧州委員会、および欧州議会が関与している。 提供された情報と高度な専門知識により、欧州連合は欧州委員会および加盟国とともに、情報に基づいた政策決定を実施および管理することができる。(Wikipedia から抜粋)
欧州薬物・薬物中毒監視センター(European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction :EMCDDA)は、欧州における薬物・薬物中毒情報の中核機関である。1995年にリスボンで発足し、EUの地方分権化された機関である。
EMCDDA の活動は、より健康なヨーロッパとより安全なヨーロッパに貢献するという 2 つの長期的な目標によって支えられている。 EMCDDAの使命を達成するために、ヨーロッパの薬物現象のあらゆる側面を収集、分析、報告するために必要な人的ネットワーク、プロセス、科学ツールを統合する体系的なアプローチを開発した。
EMCDDA の 2025 年までの行程の概要については、「EMCDDA 戦略 2025」 を参照されたい。この機関の年ごとの作業の詳細については、「活動の一般的なレポート」を参照されたい。(ここから一部抜粋)
(4) 欧州連合庇護庁(EUAA)
欧州連合庇護庁 (European Union Agency for Asylum :EUAA) の解説を仮訳する。
EUAAは、欧州共通庇護制度 (Common European Asylum System:CEAS) として知られる、亡命、国際保護、受け入れ条件を管理する EU 法のパッケージを適用する加盟国を支援することを義務付けられた欧州連合の機関である。
EUAA は、国際的保護の分野で加盟国のためのリソースとして機能し、多くの形式で実践的、法律的、技術的、助言的、および運用上の支援を提供する能力を備えている。この機関は、最終的に手続きとシステムに対して全責任を負う加盟国の庇護または受入当局に取って代わるものではない。
EUAA の作業の最終的な目的は、すべての EU+ 加盟国の亡命慣行が EU の義務に沿って調和される状況に到達することである。つまり、EU+ 加盟国のいずれかで個人が申請した場合、常に同じ結果が得られるということである。同様に、申請者は、どの加盟国で申請しても、常に同様の条件で同様の手順を踏むことになり、同じ権利、義務、および受領条件を享受しうる。
(5) 欧州連合の大規模ITシステムの運用管理機関(eu-LISA)
欧州連合大規模ITシステムの運用管理機関(European Union Agency for the Operational Management of Large-Scale IT Systems:EU-LISA)
eu-LISAは、EUの亡命、国境管理、移民政策の実施に不可欠な手段である大規模ITシステムの運用管理のための長期的なソリューションを提供するために設立されたEU機関である。自由、安全、司法の分野における大規模ITシステムの運用管理のための欧州連合機関である。
eu-LISAは現在、欧州連合(EU)と欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国の難民データバンクであるユーロダック(Eurodac) (注6)、第2世代のシェンゲン情報システム(SIS II) (注7)とビザ情報システム(VIS) (注8)を管理している。これらに加えて、eu-LISAは出入国システム(Entry/Exit System (EES)) (注9)、欧州旅行情報認証システム(ETIAS) (注10)、欧州犯罪記録情報システム - 第三国国民(ECRIS-TCN)を開発している。これらのシステムと既存のシステムは、 EU情報システムに保存されている情報へのアクセスとEUレベルでのID管理の改善のため相互運用性を確保するために構築/適応されている 。
この機関は、2011年に規則(EU)No 1077/2011の制定によって設立され、2012年12月1日に活動を開始した。2018年、eu-LISAは、規則(EU)2018/1726に詳述されているより大きな権能を与えられた。
eu-LISAの本部はエストニア(Estonia)のタリン(Tallinn)にあり、その運営センターはフランスのストラスブールにある。また、オーストリアのザンクト・ヨハン・イム・ポンガウに拠点を置く管理下システムの事業継続サイトと、ベルギーのブリュッセルにリエゾン・オフィスがある。(eu-LISAを仮訳)
(6) 欧州司法機構(European Union Agency for Criminal Justice Cooperation:Eurojust )
第7項で詳しく解説する。
Eurojust は欧州連合の刑事司法協力機関であり、ヨーロッパおよびその他の国における重大な国境を越えた犯罪の調査を調整している。 EU の司法協力のハブとして、Eurojust は、情報交換の促進、検察戦略の策定、司法協力ツールの使用の促進、および共同行動の実施により、各国当局に実践的な支援を提供する。 加盟国および国際パートナーの広範なネットワークとともに、Eurojust はヨーロッパをすべての市民にとってより安全な場所である。
Eurojust は、加盟国の国家当局と協力して、2 つ以上の国が関与する広範囲にわたる重大かつ複雑な国境を越えた犯罪と闘っている。 またEurojustは、ヨーロッパで増大する脅威に対する司法対応を主導し、加盟国が犯罪者の一歩先を行くことを可能にし、主に組織犯罪グループに焦点を当てている。
Eurojust に持ち込まれた事件には、多くの場合、複数の種類の犯罪が関係している。 優先度の高い犯罪の種類は次のとおりである。
・テロ
・サイバー犯罪
・人身売買
・麻薬密売
・ EUの財政的利益に対する犯罪(PIF犯罪)
・密入国
・ 環境犯罪
・資金洗浄
・ 各種詐欺
第8項で詳しく述べる。
Europolは、ガバナンスの統制、チェック、監督のシステムに基づいて民主的に管理されている。
EUの司法・内務大臣、欧州議会議員、その他のEU機関、すべてのEU加盟国から選出された理事会、およびその総局はすべて、Europolを管理し、説明責任を確実に果たすうえで重要な役割を果たしている。
Europol 事務局長(Executive Director) はキャサリン・デ・ボレCatherine De Bolle(ベルギー)である。
Catherine De Bolle 氏
Europolは2010年からEUの機関であり、最終的には、すべてのEU加盟国の関連閣僚で構成される司法・内務大臣の欧州連合理事会に対し説明責任がある。また欧州連合理事会は Europolの主要な管理と指導を担当し、同機関の事務局長と副理事を任命する責務を負う。
欧州議会(EP)とともに、欧州連合理事会はEuropolの予算(EUの一般予算の一部である)を承認し、Europolの活動に関連する規則を採択する。
EPはEuropolを監督する上で重要な役割を果たしている。EPは、機関の年間予算を採択することに加えて、その予算が執行された期間の終了を示すことによって、特定の予算を管理する責任から欧州委員会(EC)を解放する決定である責任開放状(discharge)を発行する。事務局長の解任は、理事会の勧告に基づいて議会によって許可される。EPはまた、Europolに関する新しい理事会規則の採択においても諮問される。
【Europol理事会(Management Board】
Europolの管理および管理構造の不可欠な部分である理事会は、機関の主要なガバナンス機関であり、主要な利害関係者環境である。 これは、欧州連合の法執行機関のニーズと期待にうまく応え、より安全なヨーロッパ(safer Europe)に貢献する信頼できるパートナーとして、Europolが継続的に発展することを保証する独自のフォーラムを提供する。
その主な責任は、国際原子力機関(IAEA)に戦略的ガイダンスを提供し、その任務の実施を監督し、年次および複数年の作業プログラムと年次予算を採用し、Europol規則で予見されたガバナンス責任を行使することである。
Europol規則に参加している各EU加盟国の代表1名と欧州委員会(理事会メンバー)の代表1名で構成される。デンマークはオブザーバーの地位を持っている。
理事会は年平均4回開催され、企業問題(WGCM)(注11)と情報管理(WGIM)(注11-2)に関する2つのワーキンググループは年間を通じて定期的に開催される。理事会事務局は、議長、取締役会、およびそのワーキンググループおよび委員会を支援する。
(8) 欧州連合基本権機関(European Union Agency for Fundamental Rights:FRA)
EUの基本的権利憲章に謳われている権利、価値、自由の保護を支援するために、FRAは以下のことを行う。
① 法律とデータの収集と分析。
② 権利に関する独立した証拠に基づくアドバイスの提供。
③ 比較可能なデータを収集して分析することにより、傾向を特定する。
④ より良い法律の制定と実施を支援する。
⑤ 権利に準拠したポリシー対応のサポート。
⑥ 基本的権利主体間の協力と絆の強化。
Frontexは、EU基本権憲章(EU fundamental rights charter)と統合国境管理の概念に沿って、欧州国境管理を推進、調整、開発している。
国境を越えた犯罪活動の傾向だけでなく、移住パターンを特定するために、FrontexはEUの対外国境内外の状況に関連するデータを分析する。国境の状況を監視し、国境当局が加盟国と情報を共有するのを助ける。また同機関は、移民圧力を含む対外国境での課題に直面する各加盟国の能力と準備を評価するために脆弱性評価を実施している。
Frontexは、人道的緊急事態や海上での救助など、外部国境で加盟国を支援するために、共同作戦と迅速な国境介入を調整し、組織化している。この機関は、少なくとも1,500人の国境警備隊と迅速な介入に配備される他の関連スタッフのプールを含む、欧州国境警備隊および沿岸警備隊チームを配備している。迅速な反応プールのメンバーは、機関の要請に応じて加盟国によって提供されなければならない。また、加盟国が提供する船舶、航空機、車両、その他の技術機器をその運用に配備している。さらに、Frontexは、非EU諸国の国境で移民圧力が発生した場合、少なくとも1つの加盟国に隣接する非EU諸国の領土で作戦を実行することができる。
欧州国境沿岸警備隊であるFrontexは、移民のスクリーニング、報告、識別、指紋採取で加盟国を支援している。同機関が派遣する職員は、欧州連合庇護庁(EUAA)および加盟国の国内当局と協力して、国際的な保護を必要とする、または申請したい人々に初期情報を提供し、初期情報を提供する。どの人物が国際的な保護を受ける権利があるかを決定するのは、Frontexではなく、あくまで国家当局である。
Frontexは、海上国境における法執行機関、EU機関、税関間の協力をサポートしている。また、運航に配備された船舶や航空機は、漁業管理、汚染の検出、海上規制の遵守に関連する情報を収集および共有する。欧州漁業管理機関(European Fisheries Control Agency:EFCA)および欧州海上安全庁(European Maritime Safety Agency :EMSA)と緊密に連携し、多目的業務を実施している。これらの作戦では、国境監視のために配備された船舶や航空機を漁業や環境監視にも使用することができる。
Frontexは、密輸、人身売買、テロリズム、その他多くの国境を越えた犯罪の防止に焦点を当てている。その運用中に収集された関連情報を、関連する国内当局およびEuropolと共有する。
*****************************************************************************
(注1) ロシアによるクリミアの併合は、国際的にウクライナの領土と見なされているクリミア半島を構成するクリミア自治共和国・セヴァストポリ特別市をロシア連邦の領土に加えるもので、2014年3月18日にロシア、クリミア、セヴァストポリの3者が調印した条約に基づき実行された。
1991年のソビエト連邦崩壊・ロシア連邦成立後初の、ロシアにとって本格的な領土拡大となった。クリミアとセヴァストポリにおける住民投票、独立宣言、併合要望決議、そしてロシアとの条約締結という段階を踏んで併合宣言が行われたが、国際連合やウクライナ、そして日本を含む西側諸国などは主権・領土の一体性やウクライナ憲法違反などを理由としてこれを認めず、併合は国際的な承認を得られていない。(Wikipediaから抜粋 )
(注2) ロシアのオリガルヒ(ロシア語: Российские олигархи、英語: Russian olygarchs)とは、ソビエト連邦の崩壊に続くロシア経済の民営化を通じて、1990年代に急速に富を蓄積したソビエト連邦構成共和国の大富裕層、オリガルヒである。崩壊過程のソビエト国家は国家資産の所有権をそのままにして、国家財産を取得する手段として、元ソ連当局者(主にロシアとウクライナで)との非公式な取引による競争が可能になって、政治力も兼ね備えた大富裕層が生れた。ある歴史家は、これは中世後期にモスクワ大公国で活躍したボヤールようだといっている。(Wikipedia から抜粋) そのほかNHK の解 説がある。
(注3) ロシア24:ロシア最初の24時間放送の情報テレビ局である。1990年に「全ロシア国営テレビ・ラジオ放送会社」(VGTRK)が設立された。そのテレビ部門である「Vesti24」は2016年より放送をはじめた。2010年にこれが「Russia24」(ロシア24)と改称され現在に至っている。2016年4月現在のロシアのメディアランキングMediologyによるとテレビ局部門で、引用の多さのランキング第二位である。(https://www.technican.co.jp/news/2107/)から抜粋)。
(注4) 2014年2月にウクライナのヤヌコーヴィチ政権が崩壊し、親欧米派の暫定政権が樹立されたことにロシアは反発。2014年3月11日、ロシア軍の占領下で実施された同月16日の住民投票においてクリミアのロシアへの編入が賛成多数を得た場合、ウクライナよりいったん独立する決議をクリミア自治共和国とともに採択した(クリミア・セヴァストポリ独立宣言)。16日の投票では賛成票が全体の9割を超え(2014年クリミア住民投票)、クリミア自治共和国とともに主権宣言した上で(クリミア共和国)、3月18日にロシア連邦に編入される条約をロシア連邦と締結した(ロシアによるクリミアの併合)。この編入により、セヴァストポリはロシア連邦の連邦市という位置付けになったが、ウクライナを始めとする大多数の国は認めていないため、国際的にはウクライナの特別市のままである。2014年4月1日には市政のトップが市長から知事へと改められた. (Wikipedia :
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%9D%E3%83%AA)から一部抜粋))
(注5) 司法・内務 (JHA) 機関ネットワーク(JHA Agencies’ Network)は、ヨーロッパで果たすべき重要な役割を担っている。 その活動は、EU が安全、正義、基本的権利、および男女平等に対処するための十分な装備を確保するのに機能を持つ。これらの機関は、移民と国境管理、麻薬密売と組織犯罪との闘い、人身売買、男女平等など、幅広い重要分野に取り組んでいる。これらの分野には共通点が多いため、シナジーを活かして情報を共有するネットワークを構築した。
このネットワークには、CEPOL、EIGE、EMCDDA、EUAA、eu-LISA、Eurojust、Europol、FRA、Frontex の 9 つの機関が含まれる。 2010 年以来、JHA 機関がネットワークをホスト役を担ってきた。 2020 年、Eurojust はネットワークをホストし、その活動を調整し、事務局機能を実行した。 2021 年に Frontex、2022 年に CEPOL が引き継いだ。
(注6) ヨーロッパ指紋データベース(EURODAC):EURODACは、シェンゲン圏の保安システムにおけるもう1つの重要な構成要素で、亡命希望者やシェンゲン圏やEUの国境を不法に超えた人を特定するための指紋データベースである。
このメカニズムは、指紋データセットを比較することで機能するもので、EUのどこで亡命申請しても、毎回申請者の指紋がすぐに認識できるようにした。EURODACは、どのEU加盟国がその申請を精査するのかを決めるために、指紋の比較によって難民申請を精査する(etias.co.jpサイトから抜粋)
(注7) https://knowledge4policy.ec.europa.eu/dataset/ds00009_en
SIS II - Second generation Schengen Information System
(注8) ビザ情報システム(VIS):シェンゲン・ビザ情報システム(VIS)は、短期滞在ビザ申請の情報を参加国やEU非加盟国の領事館と共有できるようにするシェンゲン圏の保安システムで、共有するEUビザ政策を支えている。
SISでは、生体認証データを使って、シェンゲン・ビザ保有者の本人確認を行うことで、より効率的な国境管理を可能にし、ETIAS渡航認証が導入された後は、それを支える重要なシステムの1つとなる。
VISの主な機能は、以下のとおりである。
・悪用対策:VISは「ビザ・ショッピング」のような不法行為を取り締まる。ビザ・ショッピングとは、シェンゲン圏内のある国への入国を拒否された申請者が、別の国から圏内に入ることである。
・旅行者の保護:VISがあることで、シェンゲン圏内に入ることを目的としたなりすまし行為を公務員が簡単に特定することができる。
・亡命申請のサポート:VISが亡命申請を精査することで、どのEU加盟国がそれぞれの申請を処理するのかを決めやすくする。
・安全の向上:VISは、テロ攻撃やその他の重大な犯罪行為に対して、その予防・発見・操作を支援している。
SISでは、ビザ申請者の指紋のスキャンやデジタル写真を含め、旅行者のデータを中央のデータベースへと集約している。シェンゲン圏に頻繁に渡航する人の場合には、新しいシェンゲン・ビザを申請する時に毎回指紋をスキャンする必要はない。(etias.co.jpサイトから抜粋)
(注9) EESとは、その仕組みとは:EESは、Entry/ExitSystemの略で、2016年に発表されたシェンゲン圏内のスマートボーダーパッケージの一部となる大規模なITプロジェクトである。
このプロジェクトは、シェンゲン領土間の国境セキュリティ審査の強化および簡素化することを目的とし、EESシステムの導入により、領土の安全対策を改善することが期待されている。
最近のパスポートとドキュメント・チェック・テクノロジーのおかげで、EESは、EU加盟国以外と、EEA(欧州経済領域)参加国、またスイス国民がシェンゲン領土間の国境を越える際の動きを自動にデジタル管理できるようになっている。 EESは、EU市民とETIAS(電子渡航認証)保持者のシェンゲン領域内の移動の自由に影響を与えることを意図したものではない。
システムが完全に稼働し始めると、電子パスポート読み取りゲートを利用して、空港や港などのシェンゲン協定地点での従来のパスポートスタンプや人員の必要性を減らすことができる。(https://www.etias.co.jp/ees-entry-exit-system-etias/から抜粋)
EESは、セキュリティ、公正、自由に関する大規模な情報システムを扱うEU機関であるEU-Lisaによって運営される。
(注10)ETIAS(European Travel Information and Authorisation System)とは新たにEU諸国へ入国する際に必要となる「事前渡航認証システム」をいう。
欧州渡航情報認証制度(ETIAS)とは日本を含むビザが免除されている国籍者が、シェンゲン協定国(ドイツ、イタリア、フランスなど)ヨーロッパ内26ヶ国にビザを取得せず訪問する場合、事前にこのETIAS電子認証システムに申請することが必須となるもので、この制度は2022年末から導入が予定されている。
ETIAS申請はEU諸国(ETIAS加盟国)への入国を希望する海外からの渡航者に対して審査を行うもので、渡航希望者が安全かつ入国に相応しい人物であるかを幾つかの質問により判断するものである。EU諸国へ入国する前に、姓名や国籍などの基本的な情報に加え、犯罪歴や戦争地域などへの渡航歴などの情報も審査規定に含まれる。EU諸国への入国に必要なビザを保有していない海外渡航者は、事前にETIASによる電子認証申請が必須となる。ETIAS申請の際に必要となるパスポート情報は、欧州警察機構(ユーロポール)などによって厳格に照合され慎重な審査が行われる。 (https://etias-web.com/ およびhttp://etias-euvisa.com/から引用。
(注11) 世界気候研究計画(WCRP)に設けられた結合モデル開発作業部会(WGCM)
(注11-2)情報管理(WGIM)
********************************************************************************
Copyright © 2006-2021 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます