なんとなくテレビを見ていると、
” 渥美 清・心の旅路 ”の再放送があっていました。
寅さんが俳句を作っていました。
知りませんでしたね。
歩く百科事典の亀ちゃんに、寅さんの俳句は知っているね?
と電話すると、これまた、知っていましたね。
しかも、” 風天忌 ”があることまで。
寅さんは、” 風天 ”と号して俳句を詠んでいたのです。
放浪の俳人・種田山頭火、尾崎放哉、の自由律俳句に似ています。
寅さんも放浪の俳人だったんですね。
テレビを見るまで、知りませんでした。
テレビ消し ひとりだった 大みそか
股ぐらに 巻き込む布団 眠れぬ夜
乱歩読む 窓のガラスに 蝸牛
花道に 降る春雨や 音もなく
お遍路が 一列に行く 虹の中
貸しぶとん 運ぶ踊り子 悲しい
秋の野 犬ぽつんと 日暮れて
どんぐりの ポトリと落ちて 帰るかな
蟹 悪さしたように生き
花びらの 出て又入るや 鯉の口
どぶろくや はらかく噛んで 眠くなる
閉ざされし 茶亭すだれの ほつれかな
いく春や 誰や名前 呼ぶように
晩春や 下宿のギター つたなくて
コスモスひょろり ふたおや もういない
赤とんぼ じっとしたまま 明日どうする
山吹キイロ ひまわりキイロ たくわんキイロ で生きるたのしさ
お祭りで 朝から太皷で 下駄新しく
ひるがお なに思いさく すべてむなしく
なりひらき ひとりめしくう みつくちの男
蚊がプーン 遠くに飛行機がブゥーン ひとり寝ている
むきあって 同じ茶すする ポリと不良
ステテコ 女物サンダルのひと パチンコよく入る
いまの雨が 落したもみじ 踏んで行く
そのはねで あの空飛んだか 置物の鷹
好きだから つよくぶつけた 雪合戦
らっきょう コリコリかんで むし齒が無い
ゆうべの台風 どこに居たちょうちょ
名月 知っているのか 移り変わりを
枝豆 齒のない口で 人のよいやつ
秋祭り はなおきつく 空高く
ぶどう すこしのこり 小虫飛ぶ
鍋もって おでん屋までの月明り
退陣より お披露目似合う人であり
そば あっけなく食って 扇風機
はえたたき 握った馬鹿のひとりごと
いま暗殺されて 鍋だけくつくつ
福引の 餅網ふたつ 風寒く
ヘアーに あわたててみる ひるの銭湯
日のおちて 蝉逃げるように鳴く残暑
渡り鳥 なにを話し どこへ行く
冬の朝 ひとり言いって 着がえてる
一っ杯めのために 飲んでるビールかな
初めての 煙草覚えし 隅田川
蛍消え 髪の匂いのなかに居る
団扇にて かるく袖打つ仲となり
はだにふれ とくしたような勝力士
いわせれば 文句ありそな せんべい布団
年賀だけでしのぶ ちいママのいる場末
枝豆を 噛む口許や 話好き
汗濡れし 乳房覗かせ 手渡すラムネ
新聞紙 通して秋刀魚のうねりかな
パイパイに つつまれし 夢ハンモック
だーれもいない 虫籠のなかの胡瓜