外来種は「敵」なのか

 今日の神奈川新聞に「ナガミヒナゲシ急速分布 ―生態系を乱す恐れも―」と云う記事が掲載されていた。

 ナガミヒナゲシ(長実ひなげし)は地中海沿岸原産と言われる帰化植物で、1961年に世田谷区で初めて確認された以降、旺盛な繁殖力により2007年には青森県と沖縄県を除く全国45都府県でその分布が確認され、首都圏では道端云わず畑の端と云わずそこここで見られる一般的な「雑草」と化している(写真はこちらの5月8日の項を参照)。

 神奈川新聞は、このナガミヒナゲシについて独立行政法人農業環境技術研究所の上席研究員の「一株から100個を超える実ができることもある。一つの実には1500個以上の種が入っており、つまり、一個体が15万個以上の種を作る事が出来る、極めて強い繁殖力を持っているから、駆除が必要である」との談話を紹介しているが、極めて強い繁殖力を持っているとなぜ駆除が必要であるのかが書かれていない。その理由が示されないまま、単に繁殖力が極めて強いから「駆除が必要」だと云うのは理解に苦しむ。

 桜と共に(桜以前から)日本の花を代表するかの如き梅も、今から1500年前に中国から渡来したと云われている。秋桜などと云う風流な名前を与えられ、今や日本の秋の花の代表格とさえ云われるコスモスだって実はメキシコ原産で日本に渡来したのは1890年代であるし、郷秋<Gauche>が普及に努める本物の月見草だって赤花夕化粧だって、こんなに日本の初夏の風情に合うのに、外来種である。シロツメクサ(白詰め草、クローバーのことだ)やアカツメクサ(赤詰め草)だってその名の通り江戸時代にヨーロッパから長崎に入ってきた荷物の詰め物となっていた植物の種が零れて日本全国に広まったものである。

 確かに、例えば鳥などの動物が運んだ種により生育域が広がるためには何千年も何万年もかかるものが、人間の各種行動に伴って広がるとなるとその何千分の一、何万分の一の期間で広がるのかも知れないが、土壌や気候がその植物に合っているのならば生育分布域が広がるのは自明のこと。それがいけないと云うのだろうか。だったら、梅もコスモスもクローバーもすべてこの日本から根こそぎにすればいい。梅やコスモスやクローバーが良くてナガミヒナゲシがダメな理由が、郷秋<Gauche>にはわからんぞ。このあたりの事情を判り易く説明してくれる方はいないものだろうか。


 いつもとは違って記事本文との関係大有りの今日の一枚は、赤花夕化粧(あかばなゆうげしょう。アカバナ科マツヨイグサ属だから月見草とは同科同属)南アメリカ原産で日本には明治期に鑑賞用として持ち込まれたが、今ではすっかり自生・野生化している。今どき観賞用として栽培しているのは日本広しと云えども郷秋<Gauche>くらいのものか。ご覧の通り4弁で花径15mm、草丈は30cm程度の多年草。実は郷秋<Gauche>のここ数年来の努力が実り、郷秋<Gauche>の家の庭の隅で群生し始めている赤花夕化粧なのである。「雑草だ!」と云う人もいるが、なんとも風雅なその姿ではないか。
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