
ガールズ&パンツァーに登場するチームは、いずれも練習や試合で主砲を撃ったりしています。その中で、主砲射撃時の各場面がかなり細かく登場するのは、テレビシリーズ全12話およびアンツィオ戦OVAを通してみたところでは、アヒルさんチームの八九式中戦車甲型においてであろうと思います。砲塔内部のディテールも細かく描かれており、現存する実車への取材成果が生かされているのでしょう。
上のワンシーンでは、キャプテン磯辺典子が、砲手の佐々木あけびに気合いをいれつつ指示を出しています。

磯辺典子は、八九式中戦車甲型においては車長と装填手を兼任していますので、主砲射撃時においては装填手に専念しています。八九式中戦車甲型の主砲は九○式五糎七戦車砲といい、口径は57ミリです。磯辺が持っている砲弾は、実際の日本陸軍の戦車砲弾にて一式徹甲弾と呼ばれるものにあたるようです。長さは約25センチ、重量は約2.5キロといい、女子高校生のなかでも小柄な磯辺にも扱える大きさであったようです。

砲弾は、佐々木あけびの着く砲手席の側にもセットされているため、佐々木が取って装填する場合もありました。九○式五糎七戦車砲は、砲手自身が右片手で装填を行えるタイプです。
佐々木が取ろうとしている砲弾は先端が丸く、先に磯辺が持っていた先の尖った砲弾とは種類が異なるのかもしれません。榴弾でしょうか。

砲弾が装填され、佐々木あけびが照準器をのぞき、狙いを定めます。右手の指はトリガーにかけられています。九○式五糎七戦車砲は、肩当を用いた直接照準操作方式を採用しており、方向射界(左右)および高低射界(俯仰)の微調整を肩付操作で行えます。ハンドル操作方式よりも照準は早く、命中率は高かったといわれます。
佐々木あけびの射撃にて、アンツィオ戦にて相手車輛を次々に撃破出来たのは、佐々木の技量もさることながら、この戦車砲の扱い易さも大きかったと思われます。

佐々木あけびがトリガーを引いて主砲が唸り、砲弾が発射されて空薬莢が自動排莢されるシーンです。磯辺典子が次の砲弾をまだ手にしていませんが、いざとなったら佐々木が自分で装填することも出来ますから、連続射撃も可能です。砲手が自分で装填してすぐに撃てる、というのは大きいですね。
以上をふまえると、大洗女子学園チームの戦車のなかで、主砲の連続射撃が最も素早く行えたのは、おそらくアヒルさんチームの八九式中戦車甲型であったと思います。アンツィオ戦でのCV33との5対1の砲撃戦という緊迫の局面に対応出来るのも、当時の大洗チームの5戦車のなかでは、アヒルさんチームの八九式中戦車甲型しかなかったのではないか、と思います。