細い通路があったので入ってみると、「生政治」の章の作品が。
■Stranger Visions:ヘザー・デューイ=ハグボーグ
街角に落ちている髪の毛やタバコの吸い殻からDNAを採取し、落とした本人の顔を復元するヘザー・デューイ=ハグボーグの
《ストレンジャー・ヴィジョンズ》は、自分でも気づかぬうちに周囲に撒き散らしているDNAから、性別、祖先、目や髪の色
といった外見の情報、将来の病気のリスクなど、ときに本人さえも知らない個人情報を引き出せることを2012年に示唆した。
この技術は、「DNAスナップショット」と呼ばれる犯罪捜査ツールとしてアメリカの国防総省の開発支援の元、既に実用化
されており、その意味では、DNAによる監視と遺伝子決定論に支配された未来の「生政治」は現実のものとなりつつある。
(
HPより)
なんとコチラは、街で採取したモノのDNAから持ち主の顔を再現した作品!
タバコの吸い殻やガム、髪の毛からこんなことまでできちゃうなんて、
これからはDNAの個人情報管理も必要になってくるんでしょうかね。
■BLP-2000B:DNAブラックリスト・プリンター:BCL
《ストレンジャー・ヴィジョンズ》が自らが生み出した技術に管理されることを問う作品であるのに対し、2018年にBCLが
発表した《BLP-2000B:DNAブラックリスト・プリンター》は、人間はそもそも科学技術を制御できるのかという根本的な
疑問を投げかける。パンデミックを起こす危険性を持ったウイルスの塩基配列などバイオ企業が合成を禁止している
DNA配列のみを作成して印刷する本作は、ゲノム編集などの登場によって生命を簡易かつ安価に編集できる現状が誰でも
生命科学の発展に貢献できる可能性を開くものにも、新たなバイオテロの引き金にもなり得るというジレンマを提示し、
どのような未来を選び取るべきかという議論を促す。
(
HPより)
近寄ってみると、プリントされた紙には、何やらアルファベットの羅列が。
このアルファベットは、パンデミックを起こす可能性があるDNA配列だそうで、
プリンターがリストを印刷しています。
設計図があれば、3Dプリンターで簡単に銃を作ることができる現在。
将来、配列があれば誰でも危険なウイルスを簡単に作れるようになっちゃったりするのかな。
「人新世」の章。
■Everybody needs a rock:本多沙映
ダイオンはまた《4つの偽の化石》などをつくり、大量消費時代の文明が地質にその痕跡を刻むことを予言したが、
それはプラスチックの化石として2012年に現実のものとなった。本多沙映は、ハワイの海岸で発見された「プラスティグ
ロメレート」(熱で溶けたプラスチックと火山岩、海砂、貝殻などが混じり合うことでできた新種の鉱物)から着想を得て、
道端で拾ったプラスチックを、溶かし合わせ磨くことで唯一無二の人工石に変える。プラスチックは、1950年以来、
60兆トンという地球全体を包めるほどの量が生産されてきたと言われるが、本多のプラスティグロメレートは、
「第2の自然」として地表を覆う人為が生み出した現代独自の鉱物であり、人新世を閉じ込めた化石と解釈できる。
(
HPより)
落ちていたプラスチックごみで作った人工石の作品。
コンビニのレジ袋が有料になる、なーんて話も最近出てきてますが、
自然界にプラスチックの化石が存在することが普通になっちゃう!?
■タール漬けの鳥:マーク・ダイオン
マーク・ダイオンのタール漬けになった鳥の彫刻や奇形化した鳥の写真は、社会の富を増加させるべく科学技術によって
自然を支配することが、今日の環境汚染を誘発していることを暗示する。タール漬けになったバラバラの白い人形の破片は、
石炭や石油といった近代の動力に人類が過度に依存していることを象徴すると同時に、再生医療や原子力発電、
仮想通貨のように便利になればなるほど破滅のリスクが膨れ上がる現代の技術の両面に板挟みになっている私たちの
状況を隠喩する。
(
HPより)
一時期、タンカーの事故などでオイルまみれになった鳥の映像がニュースでよく流れてたっけ。
自分も含め、環境に良くないと分かっていても富や便利さの方を優先してしまって、
ギリギリまで追い詰められないと本気で対処しないのが人間なんだろうねぇ。(^^;
そういう便利さと破滅の板挟みになった人類の姿を現したのが、コチラの作品。
■やどかりに「やど」をわたしてみる:AKI INOMATA
福島県相馬市で採取したアサリの貝殻の成長線を、3.11以前/以後の環境の変化を読み解く《LINES―貝の成長線を聴く》や
ファッションブランドの衣服で巣をつくるミノムシを作品化した《girl, girl, girl,,,》など、人工環境で生きる生物を
人間の本質を映す鏡に変えてきたAKI INOMATAもまた人新世の芸術を代表する作家のひとりになりえるだろう。
代表作《やどかりに「やど」をわたしてみる》は、ヤドカリを3Dプリンタで作られたさまざまな都市の模型に住まわせる
作品で、ニューヨークから東京へ、東京からパリへと引っ越し続けるヤドカリに、移民の問題やグローバル化した世界に
おけるアイデンティティの問題を読み取ることもできる。一方で、人工物を受け入れ背負うヤドカリはリテラルに人新世
―人間が他の生命を圧倒し、それゆえに自らも絶滅のリスクに晒す時代―を表す優れた隠喩となっている。
(
HPより)
ヤドカリちゃん、いま住んでいるのは「ニューヨーク」?(笑)
ちょうどお昼時間だったせいか、人が少なくてゆっくり見ることができました。
バイオテクノロジーとアートの融合なんて想像ができなかったけれど、
実際に見てみると面白い作品がたくさんあって、これが無料だなんてスバラシイ。
また、何か楽しそうな企画展があればチェックしておこう。