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久住真之が好きになれない理由

2016-09-27 04:32:36 | BOOK/COMICS
グルメ漫画。
どこまでをそのジャンルと言っていいのかわからんが食をテーマに書かれた漫画。
先日、今の本屋さんに同じようなジャンルの本がいっぱい出てると書いたが、実は漫画の世界でもこのグルメ漫画というのが大流行り。

昔からグルメ漫画というのはある。
王道は4パターン。別に決まっていないが俺が勝手に今決めた。

一つは主人公が家などで料理する系漫画。
先日連載終了したこちら葛飾区亀有公園前派出署に匹敵するロングセラー漫画クッキングパパ(うえやまとち/1984年連載開始/現在138巻)をはじめ、
南紀の台所(元町夏央)
くーねるマルタ(高尾じんぐ)
高杉さんちのお弁当(柳原望)
パパと親父のウチご飯(豊田悠)
ひよっこ料理人(魚戸おさむ)
これら系の漫画には料理レシピが丁寧に掲載されてる。自分でも作ってみろってか?材料の切り方や調味料の配合まで詳しく書いてある。
最近はこの手の漫画が増えている。自炊が流行ってるのか?

一つは料理人が修行したりバトルしたりする漫画。古くは包丁人味平(牛次郎/ビック錠)から受け継がれるジャンルね。
鉄鍋のジャン(西条真二)
中華一番(小川悦司)
きららの仕事(早川光/橋本孤蔵)
ミスター味っ子/将太の寿司(寺沢大介)
ラーメン発見伝/らーめん才遊記(久部緑郎/河合単)
食戟のソーマ(佐伯俊/森崎友紀)

これもレシピが紹介されてたり主人公や登場人物(または審査員)がコツや技を語ったりするんだが、これ系の作中で描かれる料理を家でも作ってみようなんて物好きはまぁいないだろう。ちょっと本格的すぎる。ウンチクはいっぱい知識として入るけどね。

一つは料理店を舞台にした人情系漫画。深夜食堂(安倍夜郎)とかどちらかというとこのジャンルは料理の味がどうこうとかより、ドラマストーリーや心情に趣をおいてある。
Heaven?(佐々木倫子)
おせん(きくち正太)
江戸前の旬(九十九森/さとう輝)
味いちもんめ(倉田よしみ)
大使閣下の料理人(西村ミツル/かわすみひろし)
信長のシェフ(梶川卓郎)
蒼太の包丁(本庄敬)
最後のレストラン(藤栄道彦)
ザ・シェフ(剣名舞/加藤唯史)

結構ドラマ化されるのもこのジャンルが多い。視聴者に伝えやすいからかな。

そしてもう一つは食べ歩き系漫画。実在する店の場合もあるし架空の店だったりする。ウンチクが多かったり郷土料理紹介みたいになってるのもある。
ワカコ酒(新久千映)
酒のほそ道(ラズウェル細木)
駅弁ひとり旅(はやせ淳)
ラーメン大好き小泉さん(鳴見なる)

このジャンルの漫画は、登場人物が外食を美味そうに食べたり楽しむ姿が多く、読んでると腹が減ってくるのが難点。

孤独のグルメ(久住昌之/谷口ジロー)という食べ歩き漫画ある。
実はこの漫画発表時はたいして話題になっていない。1994年から1996年にかけて連載されてたが、連載誌の月刊PANJA誌自体知ってる人は少ないだろう。
この漫画を一躍有名にしたのは深夜テレビ枠で松重豊さん主演の実写ドラマが放映されてからだ。
飯テロとかいう新語までできるほど、深夜にこのドラマを見ると腹が減って仕方がない。松重豊さんの食いっぷりがいいのだ。現在シーズン5まで続いてる。

この漫画のすごいところは、食べて美味いとか不味いとか言う前に、「今日は何を食べよう」から始まるところだ。主人公が「俺は今何を食べたいんだ?」とか悩む。「今日はこれに決めてるのさ」と揺るぎない決意の時もあるが、基本毎回自問自答。
ラーメン?洋食?定食屋?カレーもいいなぁ。この店はどうだ?もう少し先にまだあるんじゃないか?この店は当たりの気がする。
店に入ったらまたメニューで悩む。定番もいいがオススメがやっぱりいいのでは、いやまてよなんだこのメニューは?チャレンジするか。
誰もが本来やってしまう飲食店選び、何を食べるかの迷いを美穂とに描いてるが、俺は漫画よりドラマ派。なかなか実写版が原作よりいいってないんだけどね。

この孤独のグルメの主人公は漫画では下戸。酒が飲めない設定だから食べることに熱中。しかしドラマ版の松重さんは飲んでる。しかも実に美味そうに飲む。サラリーマンの飲み食い、昼食は兎も角夕食中途半端な時間食にビールとかチューハイがないのはちょっとねぇ。焼肉、中華料理、おでん、焼き鳥、鍋。ご飯もいいけどやっぱ酒類は重要でしょう。
だから漫画としてはこの孤独のグルメより、主人公を酒飲みにした「食の軍師」(泉昌之名義)の方がおもしろい。

こちらも毎回店選びで悩んだり、メニューで悩む。まずはビールで小鉢で進んで、次に日本酒でこの料理、そして何々を追加してフィニッシュはって、主人公が自分を軍師諸葛孔明のように戦略(?)をアレヤコレヤ考える(でも毎回策士策に溺れるパターンだけどね)。これも共感できる。一人飯、一人酒は基本毎回このパターンだ。

他にも野武士のグルメ(土山しげる画)とかもあってこれも同じようなパターン。

主人公を女にして外食ではなく手抜き家料理にしたのが「花のズボラ飯」(水沢悦子画)なんかもあるのだが、どうもこの孤独のグルメの作者久住昌之がイマイチ好きになれない。内容は共感できるところも多く、庶民的だし、専門的薀蓄ゴタゴタ書いてないし、笑いのツボも外してない。
なのになんで好きになれないのかよく分からなかったんだが、最近この人のエッセイというか旅日記を読んでようやくわかった。
野武士西へ

散歩しようと思いたった作者が、どうせなら東海道を西へ歩こうと。この本はその内容のエッセイっていうか旅日記みたいなんだが、全然面白くないの。
散歩しようという最初の主旨はどこへいったのか?ってくらい本末転倒。ただのジョギングのようなトレッキングのような西への徒歩での旅。
毎回帰りはJRで、次の回は前回電車に乗った駅まで電車で行き、また西へ歩く。
その土地土地で飲食店を見つけては入るんだが、ほとんどハズレ。当たりは値段の高い店の時の方が多い。散歩なのかグルメ旅なのかわからんが、嫌なのは随所に挟まれるシモの話。食い物の話の後になぜってくらい多い。久住よ、胃腸が弱いのか?それわざわざ紙面に書かなくてはいけないのか?読む人のこと考えてるか?

そしてこの人は東京生まれの東京育ちかどうかわからんが、地方の食を舐めすぎ。あまりにもモノを知らなすぎ。ピークは名古屋あたりから。
イタリアンってナンジャラホイって?関西人から言わせてもらえばナポリタンって何?だ。関西と関東では食の呼び名や形や形状が違うのさえも知らない原作者。そして知ろうとも理解しようともしない。
東京中心の思考が随所に出てる。どっか下に見下してるっていうかバカにしてる。(気がする)だからか、漫画で紹介する店も東京近郊ばかりだったのは。濃口醤油と中濃ソースに慣れた舌ね。薄口醤油とポン酢とウスターソースの関西人とは相慣れないはずやわね。
そうだ。ようやくわかった。なぜ久住が好きになれないか。こんなところがイマイチ好きになれないんだ。

はっきり言っておこう、孤独のグルメが売れたのは松重豊さんの演技とテレビ制作スタッフの努力だ。
もし原作者のくせにドラマ版を見てないなら、一度じっくり見ておいたほうがいい。きっと足を向けて寝られないはずだから。
まぁいいか、俺が嫌いでも世の中には好きな人いっぱいいるんやろうから。食の軍師はまぁまぁ面白いし。

ちなみに話は変わるが、これら食漫画、グルメ漫画の王道4パターンを全て取り入れた漫画が美味しんぼ(雁屋哲/花咲アキラ/1983年連載開始/現在111巻)だ。
美味しんぼは、地方色を大事にし、郷土食を尊重してる内容だよ。


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