ジャケ買いっていうのがある。
レコード(CD)でジャケットが気に入って買ってしまうことだ。
いいジャケットのアルバムは名盤が多い。無名のアーティストであろうと、ジャケ買いをしてそれが“当たり”だった時は、何気に拾った石が実は宝石の原石だったってくらい嬉しい。
本でもジャケ買いはある。
その一つが沢木耕太郎の『深夜特急』。
本の場合、「タイトル(題名)買い」っていうのもあるが、ジャケ買いもある。
単行本ではそれほど興味がなかった本でも、文庫本化された時に表紙が気に入り読んでみようかなって手に取ってしまうことは多々ある。
沢木耕太郎は『バーボンストリート』というタイトルが気に入ってタイトル買いをした。
これがまたすごく面白いエッセイ集で大当たりだったのだ。
音楽と同じく、一つ気にいったらその作家やアーティストの他の作品も気になる。
沢木耕太郎の作品は他にないかな?って本屋に出かけて見つけたのがこの『深夜特急/ミッドナイト・エクスプレス』。
全6巻かぁ。
乗り鉄とか鉄男じゃないから(当時はそんな言葉なかったが)鉄道での旅行日記とかだったら嫌だなぁって思いながらも、『深夜特急』ってタイトルとジャケット(文庫本カバー)が気にいったのでとりあえず第1巻(香港・マカオ)を買ってみる。
めっちゃ面白い。
一気に読んだ。
これは当たりだ。大正解だ。
すぐに2−6巻まで一気に買ったよ。(当時は「大人買い」という言葉もない)
この本の装丁をされたのが平野甲賀さん。
今月22日に亡くなられたとニュースで知った。
訃報で名前を聞いた時、「あれ?どこかで聞いたことある名前だぞ」と、持っていた文庫本を引っ張り出して確かめた。やはりそうだ。深夜特急の装丁(正確には装幀)の人だ。
独特の題字が近未来的で印象的なのだ。
ジャケ買いとかタイトル買いっていうのはamazonとかではなかなか巡り合わない。
やはり本屋やレコード店に行かないとね。
なんかいいのないかなぁ、掘り出し物ないかなぁって探すのも楽しみなのよ。で、ジャケットやタイトルが気になって手に取って吟味して(または衝動的に)レジに行く。
ネットショッピングの「カートに入れる」とかポチッとワンクリックじゃ味わえないのよ。
データマイニング機能を使った「この本を買った(他の)人はこんな本も買ってます」って紹介は、それこそ大きなお世話なのだ。
ジャケ買いとかタイトル買いは、本能と直感との勝負だ(大げさだな)。
勿論たまには負けもある。
しかし、偶然の出会いでいい作品に出会った時、新しい世界が広がるのだ(大げさだなぁ)。
でも、ネットで買うのに慣れちゃうとね。やっぱり便利だもんね。人混みもないし。手軽で便利だし。探し廻らんでいいし。店員に面倒くさそうに対応されてイラつかんでもいいし。
ワンクリックで翌日届くしね。
これから本屋がどんどん潰れていくだろうなぁ。実際トーハンなど大型取り次ぎがあ破綻してるもんね。
ちなみに深夜特急/ミッドナイト・エクスプレスとは、トルコの刑務所に入れられた外国人受刑者たちの間の隠語。脱獄することをミッドナイト・エクスプレスに乗ると言ったのだ。って本に書いてあってた。
納得。
大沢たかお主演でドラマ化もされたこの名作を表すタイトル。題字と装幀。見事だ。
機会があれば是非読んでみてほしい。損はしない。
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