強烈な寒気が日本列島を包み込み、地域によっては大雪がもたらされ、冬本番を否応なしに感じざるを得ない天候が続き、これも温暖化が原因だというのなら、環境ってなんなんだろうと考え込んでしまうものの、和牛解散の衝撃も未だ冷めやらぬ昨今、皆さんお元気ですか的なM-1グランプリの感想文をお届けします。今回、結成10年以上が5組、未満が5組。結成5年目が3組。結果を含めて新しい息吹を感じる大会となりました。
個別の感想は以下の通り。まずはファーストステージから。
令和ロマン・・・アセクサ、もといケムリの見た目イジりは、ツカミとしてちゃんと笑いを取れていますし、同時に、令和ロマンを知らない人にも2人のキャラクターをわかりやすく伝える「名刺」としても機能しています。遅刻しそうな学生の男女が曲がり角でぶつかるという、少女マンガのお約束ハプニングに着目したネタ。言われてみれば確かに、同じ学校に通っているならぶつかるのは不自然で、そのするどい着眼点で、冒頭から観客の心をつかむのに成功しています。関心を寄せるからネタの世界にするりと入り込み、より笑いやすくなるのですね。すしざんまいと女将の「先代に向かって」のくだりは、やや長かったか。あまり笑いが起きる所ではないので、短めに切り上げたほうがよかったと思います。
5年目とは思えない落ち着きっぷり。優勝が決定していないこの時点で、すでに大物感が出ていました。
シシガシラ・・・コンプラコンプラやかましい現在において、もはや絶滅危惧種の見た目(ハゲ)イジり漫才。僕もおおむね審査員の意見と同じで、爆発起こりそうで起こらずじまい、という印象。「言っていい」と「言っちゃダメ」の反復がえんえん続くばかりで、そこからの飛躍が起きずに終わっちゃいました。あと、この手のイジりはやりすぎると、イジられてる側がかわいそうになってしまいます。少しそうなってたように思えました。シシガシラは、浜中が誘導尋問のような形で、脇田自身にハゲイジりをさせるというネタがあって、そっちのほうが強いと思うのですが、敗者復活戦で出してしまったのでしょうか。
ハゲイジりもテレビでNGになってしまったら、シシガシラはどうなるのでしょう。そうなる前に売れて、漫才やらなくても食べていけるようになるしかないのかもしれません。脇田さんは愛されキャラになりそうですけどね。
さや香・・・石井のしゃべりだしが早くて、冒頭のセリフやや聞き取りづらし。ホームステイの受け入れをめぐって言い争う、さや香ならではのケンカ漫才。ツッコミだったはずの新山が、興奮が高ぶるにつれて、いつの間にかボケに替わっている構成もお見事。去年のネタとほぼ同じ作りですが、「このさや香が見たかった」というM-1ファン、漫才ファンの心には直球で響いたはずです。ライト兄弟の例えを自然に出して、次に「飛ぶ」をかけ、最後に「ナニワのライト兄弟」でまとめる流れは素晴らしい。
カベポスター・・・小学校時代の、願いが叶うおまじないの話。「とある場所で写真を撮って、とある場所に供える」という決まりが、「校長を脅す」というオチを成立させるためのもので、おまじないとしてはやや不自然。「神社にもおまじないがある」とのことだったのに、それが最終的に学校(校長)と絡んでくるのも不自然。2つとも怖い話っぽかったので、おまじないではなく怪談として話すことはできなかったでしょうか。途中から学校の7不思議になりますしね。あ、でもひょっとしたら、おまじないというのは永見のウソで、最初から全部わかっていて校長とみーちゃんを脅迫しようとしていた、という確信犯的ネタだったのでしょうか。わかっているのにとぼけて話しているという。だとすると、タクシーを待たせていたのもスジが通ります。
浜田が最後噛まなかったら、あまりインパクト残せず終わってたでしょうから、これは結果オーライというか、オイシイととらえるべきでしょう。
マユリカ・・・倦怠期の夫婦のネタ。死んだはずの先生から同窓会の知らせが来たり、変わった名前の変わったことしてる友達が出てきたり、倦怠期とは関係ない展開。ネタにまとまり持たせるには、最初から浮気の話にしといたほうがよかったと思います。まあ漫才なんてのは面白くてナンボなので、テーマからの逸脱にあまり目くじら立てるべきではないのかもしれませんが、にしても逸脱が早すぎる。せめて中盤以降にすべきだったのでは。中谷は声の裏返りで感情の起伏がわかっていいですね。
ネタよりもキャッチコピーの「キモダチ」のほうがウケてしまったきらいがありますが、2人のキャラクターをわかりやすく認知させることができたので、今後のこと(売り出し)を考えるとオイシイ結果になったと言えるでしょう。
ヤーレンズ・・・引っ越し先の大家さんに挨拶するネタ。大家さんが奇妙なキャラで、それを理解したら、あとは「公営ギャンブルじゃない」とか、「しゃがんで立つ」みたいな、なんでもないひとことだけで面白くなってしまう。たぶんこの大家さんは、楢原の芸人としてのキャラクターの変形で、だからあまり無理がないというか、自然に演じきれているのだと思います。楢原が早口で、セリフやや聞き取りづらいのが難点か。
真空ジェシカ・・・映画館を「A画館」というランクの表記と解釈し、その底辺の「Z画館」を紹介するというネタ。形式はこれまで通りの、大喜利型漫才。「こんな映画館はイヤだ、どんなの?」というお題の答えを次々披露していく形です。ムービー勝山がムーディ勝山のモジりだということに、今の若い人は気づくのでしょうか。映画館と関係ないくだりもけっこうありました。三谷後期高齢者みたいなダジャレをもっと多く詰め込んだほうがよかったような気がします。
僕しか思ってないことかもしれませんが、真空ジェシカは漫才じゃなくてコントやったほうがいいんじゃないでしょうか。あと、川北のとがったキャラからしたら、優勝しないほうがプラスなのかもしれません。優勝したら、「王道」みたいになっちゃいますからね。
ダンビラムーチョ・・・独自のカラオケボックスを披露するネタ。僕もやはり、1発目の口(ボイパ?)で再現する「天体観測」が長いと思いました。ハッキリ言わせてもらえば、長いうえに面白くない。2人だけのノリでふざけてるのを見せられてるよう。そのうえ「アイドル」まで聴かされてはね。ガイドボーカルモードもエナーイモードもピンときませんでした。原曲知らないと伝わりづらい箇所が多かったです。ほかにもっといいネタあったんじゃないでしょうか。
原田フニャオはオードリーの若林にうっすら似てますね。
くらげ・・・杉がサーティーワンのアイスやら、サンリオのキャラクターやらの名前を忘れ、渡辺がそれを当てようとするネタ。男が詳しくないはずの固有名詞がスラスラ出てくる。言い方に緩急つける工夫はよかったですが、「見せ方」を間違えたような気がします。くらげには恋愛相談のネタがあり、見た目男くさい渡辺がメチャクチャ女心わかっているというギャップが笑いどころなのですが、それと同じように、「男なのになぜか詳しい」というギャップにスポット当てた作りにしたほうがよかったのではないかと。固有名詞が次々出てくる気持ちよさはあるのですが、面白さが気持ちよさを超えなかった、という印象です。
まつもときんに君が、「ミルクボーイを思わせて、(なのに)ミルクボーイを超えてない」と評してましたが、ミルクボーイに似てるのは「忘れた」という所だけで、ネタの構成全然違うから、その指摘はおかしいと思います。
モグライダー・・・にしきのあきら(現・錦野旦)の「空に太陽がある限り」の歌詞の合間に、付き合ってる女性へのセリフを挟んでいくネタ。モグライダーならではの、ゲーム性のある漫才。セリフ量が多いので、ともしげの滑舌では負担が大きかったのではないでしょうか。また、セリフ量の多さゆえ、観客は「ちゃんとあってるかどうか」の判定に忙しくなり、そのぶん笑う余裕がなくなっていたかもしれません。それと、芝がまず普通に歌って、セリフを挟む正解バージョンを見せるので、フリが長く、本編短めになってしまいました。今田耕司と海原ともこが「短く感じた」というのは、そのせいでしょう。
まつもときんに君が練習不足を指摘してましたけど、そもそもモグライダーの漫才は、練習すればするほどダメになっちゃうんですよね。
続きましてファイナルステージ。
令和ロマン・・・ツカミの見た目イジり、もんじゃに喩えることで、2段構えで笑いを取れています。そこが何気にすごい。くるまが観たというドラマを再現するネタ。面白いんですけど、なんかちょっとずつほかの漫才師のネタに似てるというか、令和ロマンである必要のないネタだと思いました。僕は1本目のほうがよかったです。「トヨタにこんな人いません」と「吉本にはこういう人がいます」の対比はよかったですね。
ヤーレンズ・・・奇妙なラーメン屋のネタ。1本目と構成は同じ。つまりヤーレンズは、楢原の延長線上にあるキャラクターで、どれだけハチャメチャな世界を描けるか、をやっているのですね。『ベンジャミン・バトン』のパロディーの活かし方、伏線回収の仕方はお見事。映画(原作)知らない人にも伝わったでしょうか。
ヤーレンズがここまで来れて、感無量です。
さや香・・・「見せ算」で勝負をかけた、その意気やよし。でも失敗。観客は見せ算という、未知の計算式の説明についていくのに必死になるので、そのぶん笑う余裕がなくなります。頭の中の大半を「理解」が占めてしまう。初めて聞く人にとってはルールが複雑、かつ例外も含めて覚えなきゃいけないことが多く、最初の説明を忘れないようにしつつ今現在の説明についていかねばならないので、とにかく大変。笑う余裕を与えない漫才でした。
あと、見せ算のインパクトのせいで見落とされてるかもしれませんが、今回新山がボケ。さや香はもともと新山がボケで、去年か一昨年あたりから石井がボケにチェンジしていたのですが、ここで新山ボケに戻してきたのにはどういう計算があったのでしょうか。あともうひとつ見落とされがちなのが、このネタのキモは見せ算だけでなく、もう半分は、新山の立ち回りがスティーブ・ジョブズ風であること。もっとオーバーに、もっとわざとらしく動き回っていれば・・・。
いや、そうじゃありませんね。やっぱり観客は2人のかけ合い(ケンカ)を見たかったのですから。このネタは、かけ合いがほとんどありません。1本目観て、みんな「同じのもういっちょ!」って期待してたと思うんですよね。だから2本とも同じ形式のネタにしてれば優勝できたのではないかと。「チンポジ」で沈没した笑い飯を思い出しました。
今回優勝予想の1~3候補が1~3位になり、復活予想に選んだナイチンゲールダンスも敗者復活戦3位で、かつてないほど好成績を収めました。ヤーレンズなんか、公式HPの三連単順位予想で8番人気でしたからね。
ですがてっきり、ガチガチの大本命であるさや香が手堅く優勝するものとばかり思っていて、そこは大ハズレ。毎月ツーマンライブをやっていたという令和ロマンとヤーレンズが、優勝と準優勝になるというのがまたドラマ。
「トップバッターは優勝しない」というジンクスは間違っていたことが証明されました。初代チャンピオンの中川家と、今回の令和ロマンで2組。19分の2ですから、約10分の1。毎回10組ファイナリストになってるわけですから、平均的な確率です。
なんか、さや香やら、オズワルドやら、インディアンスやら、優勝候補の本命と目されながら優勝してないコンビ増えてきましたね。今回爪痕残したヤーレンズもその中に加わりましたし、ゆにばーすも入れていいかもしれません。
本命が増えるということは、競争がより厳しくなっていくということで、年々増えるばかりのエントリー数とも相まって、M-1は熾烈になっていく一方なのでしょう。
ヘイ、アセクサ!次の優勝は誰?
個別の感想は以下の通り。まずはファーストステージから。
令和ロマン・・・アセクサ、もといケムリの見た目イジりは、ツカミとしてちゃんと笑いを取れていますし、同時に、令和ロマンを知らない人にも2人のキャラクターをわかりやすく伝える「名刺」としても機能しています。遅刻しそうな学生の男女が曲がり角でぶつかるという、少女マンガのお約束ハプニングに着目したネタ。言われてみれば確かに、同じ学校に通っているならぶつかるのは不自然で、そのするどい着眼点で、冒頭から観客の心をつかむのに成功しています。関心を寄せるからネタの世界にするりと入り込み、より笑いやすくなるのですね。すしざんまいと女将の「先代に向かって」のくだりは、やや長かったか。あまり笑いが起きる所ではないので、短めに切り上げたほうがよかったと思います。
5年目とは思えない落ち着きっぷり。優勝が決定していないこの時点で、すでに大物感が出ていました。
シシガシラ・・・コンプラコンプラやかましい現在において、もはや絶滅危惧種の見た目(ハゲ)イジり漫才。僕もおおむね審査員の意見と同じで、爆発起こりそうで起こらずじまい、という印象。「言っていい」と「言っちゃダメ」の反復がえんえん続くばかりで、そこからの飛躍が起きずに終わっちゃいました。あと、この手のイジりはやりすぎると、イジられてる側がかわいそうになってしまいます。少しそうなってたように思えました。シシガシラは、浜中が誘導尋問のような形で、脇田自身にハゲイジりをさせるというネタがあって、そっちのほうが強いと思うのですが、敗者復活戦で出してしまったのでしょうか。
ハゲイジりもテレビでNGになってしまったら、シシガシラはどうなるのでしょう。そうなる前に売れて、漫才やらなくても食べていけるようになるしかないのかもしれません。脇田さんは愛されキャラになりそうですけどね。
さや香・・・石井のしゃべりだしが早くて、冒頭のセリフやや聞き取りづらし。ホームステイの受け入れをめぐって言い争う、さや香ならではのケンカ漫才。ツッコミだったはずの新山が、興奮が高ぶるにつれて、いつの間にかボケに替わっている構成もお見事。去年のネタとほぼ同じ作りですが、「このさや香が見たかった」というM-1ファン、漫才ファンの心には直球で響いたはずです。ライト兄弟の例えを自然に出して、次に「飛ぶ」をかけ、最後に「ナニワのライト兄弟」でまとめる流れは素晴らしい。
カベポスター・・・小学校時代の、願いが叶うおまじないの話。「とある場所で写真を撮って、とある場所に供える」という決まりが、「校長を脅す」というオチを成立させるためのもので、おまじないとしてはやや不自然。「神社にもおまじないがある」とのことだったのに、それが最終的に学校(校長)と絡んでくるのも不自然。2つとも怖い話っぽかったので、おまじないではなく怪談として話すことはできなかったでしょうか。途中から学校の7不思議になりますしね。あ、でもひょっとしたら、おまじないというのは永見のウソで、最初から全部わかっていて校長とみーちゃんを脅迫しようとしていた、という確信犯的ネタだったのでしょうか。わかっているのにとぼけて話しているという。だとすると、タクシーを待たせていたのもスジが通ります。
浜田が最後噛まなかったら、あまりインパクト残せず終わってたでしょうから、これは結果オーライというか、オイシイととらえるべきでしょう。
マユリカ・・・倦怠期の夫婦のネタ。死んだはずの先生から同窓会の知らせが来たり、変わった名前の変わったことしてる友達が出てきたり、倦怠期とは関係ない展開。ネタにまとまり持たせるには、最初から浮気の話にしといたほうがよかったと思います。まあ漫才なんてのは面白くてナンボなので、テーマからの逸脱にあまり目くじら立てるべきではないのかもしれませんが、にしても逸脱が早すぎる。せめて中盤以降にすべきだったのでは。中谷は声の裏返りで感情の起伏がわかっていいですね。
ネタよりもキャッチコピーの「キモダチ」のほうがウケてしまったきらいがありますが、2人のキャラクターをわかりやすく認知させることができたので、今後のこと(売り出し)を考えるとオイシイ結果になったと言えるでしょう。
ヤーレンズ・・・引っ越し先の大家さんに挨拶するネタ。大家さんが奇妙なキャラで、それを理解したら、あとは「公営ギャンブルじゃない」とか、「しゃがんで立つ」みたいな、なんでもないひとことだけで面白くなってしまう。たぶんこの大家さんは、楢原の芸人としてのキャラクターの変形で、だからあまり無理がないというか、自然に演じきれているのだと思います。楢原が早口で、セリフやや聞き取りづらいのが難点か。
真空ジェシカ・・・映画館を「A画館」というランクの表記と解釈し、その底辺の「Z画館」を紹介するというネタ。形式はこれまで通りの、大喜利型漫才。「こんな映画館はイヤだ、どんなの?」というお題の答えを次々披露していく形です。ムービー勝山がムーディ勝山のモジりだということに、今の若い人は気づくのでしょうか。映画館と関係ないくだりもけっこうありました。三谷後期高齢者みたいなダジャレをもっと多く詰め込んだほうがよかったような気がします。
僕しか思ってないことかもしれませんが、真空ジェシカは漫才じゃなくてコントやったほうがいいんじゃないでしょうか。あと、川北のとがったキャラからしたら、優勝しないほうがプラスなのかもしれません。優勝したら、「王道」みたいになっちゃいますからね。
ダンビラムーチョ・・・独自のカラオケボックスを披露するネタ。僕もやはり、1発目の口(ボイパ?)で再現する「天体観測」が長いと思いました。ハッキリ言わせてもらえば、長いうえに面白くない。2人だけのノリでふざけてるのを見せられてるよう。そのうえ「アイドル」まで聴かされてはね。ガイドボーカルモードもエナーイモードもピンときませんでした。原曲知らないと伝わりづらい箇所が多かったです。ほかにもっといいネタあったんじゃないでしょうか。
原田フニャオはオードリーの若林にうっすら似てますね。
くらげ・・・杉がサーティーワンのアイスやら、サンリオのキャラクターやらの名前を忘れ、渡辺がそれを当てようとするネタ。男が詳しくないはずの固有名詞がスラスラ出てくる。言い方に緩急つける工夫はよかったですが、「見せ方」を間違えたような気がします。くらげには恋愛相談のネタがあり、見た目男くさい渡辺がメチャクチャ女心わかっているというギャップが笑いどころなのですが、それと同じように、「男なのになぜか詳しい」というギャップにスポット当てた作りにしたほうがよかったのではないかと。固有名詞が次々出てくる気持ちよさはあるのですが、面白さが気持ちよさを超えなかった、という印象です。
まつもときんに君が、「ミルクボーイを思わせて、(なのに)ミルクボーイを超えてない」と評してましたが、ミルクボーイに似てるのは「忘れた」という所だけで、ネタの構成全然違うから、その指摘はおかしいと思います。
モグライダー・・・にしきのあきら(現・錦野旦)の「空に太陽がある限り」の歌詞の合間に、付き合ってる女性へのセリフを挟んでいくネタ。モグライダーならではの、ゲーム性のある漫才。セリフ量が多いので、ともしげの滑舌では負担が大きかったのではないでしょうか。また、セリフ量の多さゆえ、観客は「ちゃんとあってるかどうか」の判定に忙しくなり、そのぶん笑う余裕がなくなっていたかもしれません。それと、芝がまず普通に歌って、セリフを挟む正解バージョンを見せるので、フリが長く、本編短めになってしまいました。今田耕司と海原ともこが「短く感じた」というのは、そのせいでしょう。
まつもときんに君が練習不足を指摘してましたけど、そもそもモグライダーの漫才は、練習すればするほどダメになっちゃうんですよね。
続きましてファイナルステージ。
令和ロマン・・・ツカミの見た目イジり、もんじゃに喩えることで、2段構えで笑いを取れています。そこが何気にすごい。くるまが観たというドラマを再現するネタ。面白いんですけど、なんかちょっとずつほかの漫才師のネタに似てるというか、令和ロマンである必要のないネタだと思いました。僕は1本目のほうがよかったです。「トヨタにこんな人いません」と「吉本にはこういう人がいます」の対比はよかったですね。
ヤーレンズ・・・奇妙なラーメン屋のネタ。1本目と構成は同じ。つまりヤーレンズは、楢原の延長線上にあるキャラクターで、どれだけハチャメチャな世界を描けるか、をやっているのですね。『ベンジャミン・バトン』のパロディーの活かし方、伏線回収の仕方はお見事。映画(原作)知らない人にも伝わったでしょうか。
ヤーレンズがここまで来れて、感無量です。
さや香・・・「見せ算」で勝負をかけた、その意気やよし。でも失敗。観客は見せ算という、未知の計算式の説明についていくのに必死になるので、そのぶん笑う余裕がなくなります。頭の中の大半を「理解」が占めてしまう。初めて聞く人にとってはルールが複雑、かつ例外も含めて覚えなきゃいけないことが多く、最初の説明を忘れないようにしつつ今現在の説明についていかねばならないので、とにかく大変。笑う余裕を与えない漫才でした。
あと、見せ算のインパクトのせいで見落とされてるかもしれませんが、今回新山がボケ。さや香はもともと新山がボケで、去年か一昨年あたりから石井がボケにチェンジしていたのですが、ここで新山ボケに戻してきたのにはどういう計算があったのでしょうか。あともうひとつ見落とされがちなのが、このネタのキモは見せ算だけでなく、もう半分は、新山の立ち回りがスティーブ・ジョブズ風であること。もっとオーバーに、もっとわざとらしく動き回っていれば・・・。
いや、そうじゃありませんね。やっぱり観客は2人のかけ合い(ケンカ)を見たかったのですから。このネタは、かけ合いがほとんどありません。1本目観て、みんな「同じのもういっちょ!」って期待してたと思うんですよね。だから2本とも同じ形式のネタにしてれば優勝できたのではないかと。「チンポジ」で沈没した笑い飯を思い出しました。
今回優勝予想の1~3候補が1~3位になり、復活予想に選んだナイチンゲールダンスも敗者復活戦3位で、かつてないほど好成績を収めました。ヤーレンズなんか、公式HPの三連単順位予想で8番人気でしたからね。
ですがてっきり、ガチガチの大本命であるさや香が手堅く優勝するものとばかり思っていて、そこは大ハズレ。毎月ツーマンライブをやっていたという令和ロマンとヤーレンズが、優勝と準優勝になるというのがまたドラマ。
「トップバッターは優勝しない」というジンクスは間違っていたことが証明されました。初代チャンピオンの中川家と、今回の令和ロマンで2組。19分の2ですから、約10分の1。毎回10組ファイナリストになってるわけですから、平均的な確率です。
なんか、さや香やら、オズワルドやら、インディアンスやら、優勝候補の本命と目されながら優勝してないコンビ増えてきましたね。今回爪痕残したヤーレンズもその中に加わりましたし、ゆにばーすも入れていいかもしれません。
本命が増えるということは、競争がより厳しくなっていくということで、年々増えるばかりのエントリー数とも相まって、M-1は熾烈になっていく一方なのでしょう。
ヘイ、アセクサ!次の優勝は誰?
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます