アメリカのナンシー・ペロシ下院議長がきのう台湾を訪れたことが、日本のメディアをにぎやかしている。
私は民族自決とか、同じ民族は1つの国家を作れば良いとか思わない。どこの土地にも、宗教も言語も習慣も異なる人たちが、入り組んで住んでいる。民族国家というのは幻想である。
また、大国であれば良いというものではない。大国が強いという理由で、大国を願望するのは、支配者の立場である。小国のほうが、政府と人びととの距離が近くなる。
中国は気違いじみた人口を抱えており、人びとの声が政府に届きにくくなる。台湾の人びとが、中国に併合されたくないと思うのは、理にかなっている。
この中で、バイデン政権の反対にもかかわらず、ペロシ下院議長が台湾を訪れたことは、台湾を支援するアメリカ人がいるということを示す上で、意義がある。
その上で残された問題を指摘したいと思う。
1つはペロン下院議長が82歳であることである。彼女はじきに死すべき人である。彼女の意思を引き継ぐ人は誰なのかということである。続かない支援は、支援される人たちに、より困難な事態を招く。彼女の台湾訪問は中国政府を挑発した。彼女の台湾訪問で、中国政府が振り上げた拳は、アメリカの支援が弱くなれば、振り落とされる可能性がある。彼女は、自分の意思を引き継ぐ人たちを育てないといけない。アメリカの世論は経済的なメリット・デメリットで動くので、心配である。
1つはバイデン政権が中国の敵視政策を今後どうするかである。バイデン政権が中国と有効な関係にあれば、ペロシ下院議長の台湾訪問はなんでもない。中国と有効な関係を保ちながら、台湾の独立を保つことができる。しかし、バイデン政権が中国を敵視しながら、同じ民主党の大物が台湾を訪問すれば、中国政府のメンツがつぶれる。アメリカに対する被害者意識を育てる。中国の愛国心を刺激する。中国とアメリカとの敵対関係を友好関係にもっていきながら、台湾の独立を保つ道を探るべきである。
1つは、中国が台湾に侵攻したときの、日本の対応をいまから考えることである。軍備を強化したから解決ではない。台湾侵攻が起きたとき、日本がどう行動するかが必ず問われる。目下のウクラナイ侵攻では、ウクライナの周辺国はロシアを非難するがロシアと戦闘をしていない。かわりに、支援物資をウクライナに送り、ウクライナからの避難民を受け入れる。この選択肢を取るには、軍備強化よりも、日本国憲法第9条が現状のままのほうが、国際的な理解を得やすい。軍備を強化し、憲法を改変すれば、日本は中国と戦闘する道しかなくなる。