きのう、NPOで、厚労省からのマスクの配布を受けた。新型コロナ感染症に緊急対応策第2弾で、介護施設や障害者施設、保育所など、今般の学校休業に伴う放課後児童クラブなどの現場に、再利用可能な布製マスクを1人1枚が行きわたるよう、国が配布したものである。長方形の伸び縮みのない布製で、ぴったりとは顔にフィットせず、鼻の穴を隠すと、あごが出てしまう。きやすめであろう。
新型コロナウイルスの正式名称は“severe acute respiratory syndrome coronavirus 2”、短縮して SARS-CoV-2である。
新型コロナは、SARSのファミリーで、その弱毒版であると、京都大学准教授の宮沢孝幸がBS TBS『報道1930』で言っていた。
SARSは2002年に東アジアで猛威を振るい、致死率は約10%と言われた感染症である。65歳以上では約50%と言われている。
ウイキペディアを見ると、SARS-CoV-2の大きさは、50ナノmから200ナノmである。可視光の波長下限400ナノmより小さい。だから光学顕微鏡で見ることはできない。電子顕微鏡でみるしかない。
100ナノmとすると、1ミリの1万分の1である。飛沫感染のばあいは、周りに水がついて、もっと大きくなる。それでも、この布製マスクを通過できる。
コロナウイルスの構造は、いちばん内側はRNA(リボ核酸)が折りたたまれている。
RNAは4種類の塩基が並ぶ鎖である。SARS-CoV-2のRNAは3万弱の塩基が並んでいる。
N蛋白がRNAにつくことで、折りたたまれた状態を固定している。
それをM蛋白がおおっている。さらに、脂質とE蛋白からなる外膜がおおっている。
その外膜にS蛋白からなる突起がでている。突起を英語でspikeという。凍った路面ですべらないよう突起がでているタイヤをスパイク・タイヤというのと同じ用法だ。
それにしても、SARS-CoV-2の大きさの値がばらついている。コロナウイルスの構造はとても簡単であるから、もう少し、大きさのばらつきが小さいような気がするが、RNAの折りたたまれたかたが かなり でたらめだから、大きさがばらつくのだろう。
テレビで色がついた新型コロナが映し出されるが、可視光の波長よりずっと小さいから、色なんてついているはずがない。また、webサイトの挿絵では、この突起(スパイク)をあたかもみてきたように、いろいろな形に描いているが、そんなものはウソっぱちだ。突起の数さえ、ちゃんと数えた文献があるか疑わしい。どうせ、ウソの絵を描くなら、かわいい絵を描いてほしい。私の妻はテレビの映像をみて怖がっている。
コロナウイルスの突起が、最初に粘膜細胞の膜にあるたんぱく質に付着して、細胞に侵入する。外部からの化合物に反応して、膜の状態を変える蛋白を受容体という。SARS-CoV-2の突起に、ヒトの細胞のACE2受容体が反応し、RNAを細胞内に取り込む。ACE2受容体を利用するところが、以前に猛威を振るったSARS-CoVと同じである。
どうして、SARS-CoVの致死率が高く、SARS-CoV-2の致死率が低いのかの説明を読んだことがない。ホントにSARS-CoV-2の致死率が1%なのか。致死率という概念はいい加減なものではないか。
とにかく、SARS-CoV-2は、感染しても無症状や軽症の患者が多いから、SARS-CoVより感染力が強い、すなわち、実効再生産数が大きいと言われる。しかし、これも、ヒトの行動形態や医療体制によって異なるものだから、遺伝子情報からだけでは何とも言えない。
私の学生時代は、ウイルスは生命体かどうかの議論があった。ウイルスは自己増殖ができないので、他の生物とまったく異なる。かならず、他の生物の細胞の中に侵入して、ホストなる細胞の酵素(巨大蛋白)の力を借りて増殖する。
ウイルスにはDNAが本体のものとRNAが本体のものがある。DNAは変異を起こしにくい。それに対しRNAは変異を起こしやすい。DNAもRNAも4種類の塩基が1次元に配列したものである。その塩基が置き換わるか、脱落、追加することを変異という。
しかし、その変異のスピードは遅いように見える。現在のところ、いろいろな変異が起きているが、互いに99.9%以上一致している。L型とS型との分類を中国の研究者が発表したが、それが、どのような機能の差、たとえば致死率、感染力に影響するのか、結論が出ていないようだ。
試験管の中でDNAとかRNAを増殖させる機器をPCRといい、その塩基配列を決める機器をシーケンサーという。
1月の厚労省の通達では、シーケンサーで塩基配列を決め、SARS-CoV-2の標準塩基配列と95%以上の一致で判定することをPCRによる確定検査と呼んでいる。SARS-CoV-2の作る蛋白は現在わかっているので、いま、PCR検査で増殖したRNAが作る蛋白の抗原抗体反応で判定している。
日本がPCR検査をすすめなくて、どうして、ホントの感染状態がわかるのだろうか。日本の新型コロナ感染症対策専門家会議は、古典的な疫学だけで、対策を助言しているが、ちょっと、オカシイ。医療従事者や分子生物学者からの提案をも反映しないといけない。
昔と違って、分子レベルの知識でSARS-CoV-2について研究できる。したがって、治療薬の開発も昔より早くできると思う。
長野保健医療大学教授の北村義浩は、これまでのウイルスの大流行、スペイン風邪、MARS、SARSと新型コロナの比較を日テレでおこない、すべての流行は収束している、と言っていた。特に、SARSは理由がわからず2年で完全に終息した。スペイン風邪のばあいは、感染した人たちが壁となって、すなわち集団免疫ができて収束し、今も小さな流行を毎年くりかえすだけになった。MARSは封じ込められ、風土病になったと言う。
北村は、気温が28度を超えるころには、新型コロナの流行が収まり、インフルエンザのように、毎年、小規模の流行を繰り返すようになる、と理由もなく言う。彼の顔を見ていると、なんとなく、そんな気がしてきた。もしかしたら、正常バイアスかもしれないが。
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